22掘 : VS 聖国の勇者 その散
今日は頑張りました。
もう寝ます。
勇者君の様子は、確かにおかしかった。
異常に高い体温。呼吸の乱れ。大量の汗。関節・筋肉の痛み。
混濁する意識と記憶。もう体はボロボロだった。
勇者君は、神の名を騙る厨二病、ニセ神の神殿で意味のない
治療を受けていた。女神様たちと一緒に彼のもとを訪ねて、
症状を確認させてもらった俺は断言した。
「インフルエンザですね!どうしよう女神様、インフルエンザの
薬なんて地球でも市販されてないよ!手に入らない!」
「皆さんちょっといいですか?こっちにきてくださいねー」
アネット達は、女神インコについて外に集まっていく。
俺は、女神インコに頭を咥えられてぶら下げられた状態でだが。
「まだ、魔力酔いが治ってないんですかー?インフルエンザなわけ
ないでしょう?あれはやはり、コアの魔力暴走状態ですー」
「魔力暴走したらどうなるんですか?」ハアハア、久々のインコ
ニュウムの補充は、枯れた体に染み渡るぜ。スリスリ。
「ちょっと変なとこ触らないでください!
ちょっと後頭部は、後頭部は......
クワァァァーーー!気持ちいい!ああん、もっとーー!」
「へっへっへ、お前のかゆいところは全てお見通しなんだよ!
ここがかゆいんだろ?気持ちいいんだろ?」
「クワァァァーーー!ダメーー!ダメですーーー!」
すっぱーーーん!
「女神様、先ほどの話の続きですが、魔力暴走だったら
どうなるんでしょうかお教えください」
「ありがとうアネット。
まず、彼の記憶も人格も吹き飛ぶのは、確実ですー。
その後、よくて依然、遭遇した勇者たちのようになるか
無反応な人形になるかですー。
最悪なのは、魔力暴走にコア自体が耐えられなかった場合、
大規模、爆発を起こしますー。
多分、彼の最大魔法以上の威力でしょうねー。
この聖都は軽く吹き飛びますねー」
「女神様。それは彼を倒す、いや、殺せば止められるんですか?」
「彼の生き死にとコアの魔力暴走は関係ありませんよー。
今の彼は、時限式の大型魔力爆弾のようなものですー」
「なら、ここで爆発する訳にはいきません」勇者君が聴いていた。
「女神様、僕を遠くへ運んでもらえませんか?」
「駄目だ、勇者君!やばいフラグを立てるな!我慢していれば
笑いの神が降りてきて解決してくれるから!」
『失礼だな君は!僕は、神聖で偉大なる神、渦巻く白き大神だよ?
神の光臨を喜び、崇め奉りたまえ』
神殿内に響き渡る声が、なぜか聞こえる荘厳な痛いBGMと共に
上から降りてくる。
「なにが神ですか!このクソ虫!」女神インコの羽毛が逆立つ。
「あなたが、この世界の創造神であろうと実際には好きなように
力を揮えない。けど、僕は違う!あなたに造られた存在で
あろうと、僕は、この世界で好きなように力を揮える。
この世界においては、むしろ、僕こそ神にふさわしいでしょう?
ねえ、女神様?」
神を騙る厨二病(白)は、勇者君のそばに降り立った。
「勇者の再調整には苦労したんだけど、
機能を欲張り過ぎたみたいだね。
魔力出力の大幅強化と遠隔操作の両立には失敗したみたいだね。
まあいいや。魔力出力の強化さえできていれば成功だよ。
そのために、僕がここに光臨したんだから。
彼はね、勇者として再調整したわけじゃないんだよ。
僕の力を受け入れる憑代として使えるように再調整したんだよ。
遠隔操作の機能には失敗して、操作できなかったけど、
僕が直接憑依して動かせば問題ない。
制御系、人格はこの力を受け入れられなかったけど、
この身体がここまで成長してくれれば、もう不要だね。
マキシマム=フォーカスライト君だったけ?
もう消滅していいよ?」
ここに、聖国の勇者は散った。




