20掘 : VS 聖国の勇者 その壱
技術系の人間なんで、飾った表現ができなくて困ってます。
読むときも、細かな表現部分は頭に思い浮かべることなく
流し読みしていることに、今更気付きました。
どおりで、読むのが早いはずだ。
勇者君、勇者君!何しにきたのー?
ぼくはようがないからかえってくれない?
とはいかなかった。油断を見せず、話を聞くことにする。
「ありがとうございます。
あのですねー、姉がご迷惑をおかけして申しわけありません」
「アネット、こいつソネットの弟だったのか?」
「わたしに妹弟はいませんよ?」としれっと答える彼女。
「ちがいます。僕の姉は、副騎士団長をしています」
「ああー、あれですか。それはそれは御愁傷さまです」
「いえいえ、ご丁寧にありがとうございますってまだ死んでません」
ふむ、この受け答え真人間のようだ。実に殺しにくい。
直接斬るとか、串刺しにするとかやり辛い。
対戦車ライフルで殺ることにしよう。
こんな危険人物にいつまでも近くにいられても怖いだけなので、
早々にお帰り願った。工事の見学など絶対許可したくもない。
「それでは、計画通りに行動してくれ。
親方は、大型バスで近隣の村々を回って村人を回収してくれ。
ソネットは貧民街を中心に工事への参加を募ってくれ。
病人はエルフの秘薬で無理やり直せ。
アネットは、女神様に洗脳された一般市民を
工事に参加するように誘導してくれ。
俺は、集まった人たちが関西に移住したくなるように誑し込む。
準備ができた人たちが規定数集まったら、順次、大型バスに乗せて
関西に送り出す」
街の貧困層に、周辺の裕福ではない農家、女神様について
いきたい一般市民まで、工事参加の名目で引っ張りだして
言葉巧みに関西の魅力をアピールする。広い農地に立派な住居、
ドワーフの工芸品に、エルフのお薬、地球産の美味しい農産物に、
自動車などの魅力的な品々。これに支度金までつけてあげれば
行かない理由はない。工事など、ただの目くらまし。
2万体のゴーレムが働いてるんだ。手先が器用で力のあるドワーフ
ならいざ知らず、人族の素人なぞ役に立つわけがない。
聖都から離れた現場でーーす とか王宮側には言い訳して、
ばれない程度の人数をちょろりちょろりと関西へと送り出す。
工事はどんどん進んでいるから、まさかどんどん参加している割り
には人が増えていないとは気づくまい。
正門前の工事は、囮なので立派に造っている。立派といっても、
見た目がが豪華だとか、頑丈だとか、機能が凄いとかじゃないんだ
けど。とにかく不要だけど大きいものをどんどん造っている。
土地は広いのに、やたらぐるぐる回ってるロータリーな出入り口、
やたら高い高架の道路部分、その脇には、集積場だ、オフィスだと
いってデカい箱物をいくつも建設中だ。西方の景色は遮蔽した上で、
全部ぶっ壊して逃げれば、障害物になるだろう。そもそも、聖国と
交流するつもりはないから。この世界の人口は少ないんで西日本地域
の土地だけで十分やっていけるんで関東は、別にいりませんから。
ここ数日は、勇者君は工事現場にやってきていない。周辺の村が
魔族によって消滅させられているとの報告を受けて、副団長の
お姉ちゃんの一団と調査に回ってるのだ。
到着してみると、村はなく、建物の残骸が散らばる焼野原のみしか
ないらしい。死体すらも一切なく、魔物に食べられてしまったのでは
ないかという話だ。勇者君は激しく正義の炎を燃やしているらしい。
実際には、関西に村ごとお迎えした後、破壊して燃やして回ってる
だけなんだけど。死体なんぞあるわけがない。
魔族のしわざの噂も当然、俺達が流してるだけだし。
今は、収穫後の農閑期だから食糧はあるが、来年の農作物を育てる
人がいないと聖国は立ち行かない。となると貧民層から開拓村に送り
込まれることになるのだが、また、魔物に襲われたことにしていなく
なる。もともと工事と偽って、関西に移住しちゃってるから貧民層は
全部消えてしまったことになった。貧民層ってこんなに少なかった
っけと疑問に思っても、人工調査なぞしてるわけもなく周辺の村に
送って、魔物に食べられましたで納得するしかないのである。
勇者君は、現場は、決して追いつけない。常に俺が居場所を把握
しているので彼の側では、事件は起こらない。となると、彼も魔族と
の内通者がいるのではと考えるわけで...
「クドウさん、僕と戦ってください!」
いきなり現れた勇者君に、女神様の洗脳活動現場まで連れて来られた
と思いきや、何言いだすかなこいつ。
勇者君いわく、俺が魔族との内通者ではないかという噂があると。
その上、女神様が、聖都内でどうどうと、
「関西いいとこですよーー!おいでませ関西ーー!」とかやってる。
聖国は、いまや魔族を近隣に出現する魔族を恐れ、女神様のお言葉に
従って、多くの民が流出してしまっている、もう国としてもたない
ところまできているそうだ。この女神様を誑かして、関西へと誘導
させているとの話まであるそうだ。
「魔族との内通者とか言いがかりにも酷すぎる。どうやって、
君たちの行動を僕が知ることができるんだい?
僕は、ずっとこの聖国の為に工事をしていたんだよ?
女神様のことにしてもそうだ。どうやって、この世界の創造神たる
絶対者を操ることができると言ううんだい?
女神様に直接聞いてみてごらんよ!」
「それは、そうなのですが...」
「彼は魔族との内通者などではありませんよーー!
関西はホントにいいところなんですよーー?
私のたーーめーーにーー、あらそーーわないーーでーーー!
きゃーーー!私、モテてる?私、モテモテーー?」
「女神様、戦って欲しいみたいですけど?
ちょっとだけでいいですから、手合せやってみませんか?
大丈夫、痛くしませんから、剣も先っちょしか刺しませんから。
僕に任せてください!」
「勇者君、君すっごく気持ち悪い。
さくっと、この縄で首吊って死んでくれない?
ちょっとだけでいいから。胴から上の先っちょに
引っ掛けるだけでいいから。大丈夫、痛くないから」
「ちょっとって気軽に言わないでくださいよ!
痛いに決まってるじゃないですかぁ!」
「おめえが、先に言い出したんだろうが!
突き刺しといて、大丈夫もくそもあるか!」
なおも逃げる俺の脚にしがみ付く勇者君。
「先っちょだけなら、なんともないですって。
僕なんて直ぐに傷口が光って治りますよ?」
「それは、お前が勇者だからだ。普通の人は、痛いんだ!
だいたい俺は魔法が使えんどころか、剣も学んでないんだから、
戦いになんてなんねーーよ!」
「じゃあ僕が剣を教えてあげますから!魔法も教えますから!」
このしつこさ、ウザさ。まさに、最強の勇者だ。
こんどの勇者は精神攻撃を得意にしているとは、やるな厨二神!
勇者君がいい人っぽい?
いや、殺しますから絶対!




