12掘 : ジオラマの中の世界
明石大橋の工法調べました。
今の力押し工法で書くのは、恥ずかしいのでやめました。
アネットの覚醒事件の後、暫く、地球で時間を過ごしていた。
今も自室で、ネットを通じて資料集めをしている。
交通安全ルールとか管理組織とか、安全装置とかのだ。
俺の背後では、女神様が、がっちゃんをモフモフしている。
羽の生え替り時期なので、がっちゃんも心地良いみたいだ。
とてもおとなしい。うらやましい。
「女神様よう。
ドワーフが暴走したのは予想外だったんだですけどね?、
高速道路が必要なら、それなりの移動手段は
どうせ必要だったはずですよね?
エルフとドワーフの種族繁栄の為に、
お互いの経済活動を相乗的に活性化させるにしろ、
お互いの距離を物理的に縮めるための手段としても
高速道路でエルフとドワーフをつなげるのが有効とは、
俺も思わないでもないですよ」
「さっさと、頑張って造ってくださいね」
「お気楽ですねえ。
世界観を気にして手加減していることもあるんですが、
このままだと、そろそろ手詰まりなんですよ」
「どうしてです?
一部ですが、ちゃんと造れたじゃないですか?」
「陸地はいいんですよ。
力技でなんとでもなります。
しょせん、掘って、削って、埋めて、固めるだけです。
でもね?海は、そうはいかないんですよ。
埋めて仕舞えれば、力技でとも言えるでしょうけど、
そんな力があるなら、人族に対して直接行使したほうが
てっとり早いですよ」
「だから、周りくどいやり方で、お願いしたんですけどね」
「それは理解できてるんだけどね?
やっぱ、海が問題なんですよ。
海底トンネルを掘るにしても、巨大な橋を架けるにしても
地球でも最新の技術と人員と資材が必要とされるんですよ」
「あの世界で再現させるとしたら、かなりの無理をするしか
ないということですか?」
「そうですね。
人員はともかく、技術と資材ですね。
地球の膨大な知識からなる新素材や合金の知識と製法、
工事を可能とする大型設備に大型建機が必要です。
異世界に地球の軍隊を送り込むのと大差がないです」
「そうかもしれませんが、道路建設に必要なことなら構いません。
何もせずに、滅んでいくのより、ましでしょう」
「どうせエルフもドワーフもいずれ、滅んでしまうんでしょ?」
「ばれてましたか、やはり」
女神様は少しだけ、さみしそうに見える。
「地球の人間でも、何千年後でも生きているかは保障できません。
生きるために、足掻き、努力し続けるような者たちでもです。
あの世界のエルフやドワーフには、生き抜く為の多様性や
生きていく為に変化していこうというものが見受けられません。
そもそもそ、あのテーブル世界そのものが、
限られ過ぎた世界なんです。
エルフやドワーフに限らず、人族も魔族も関係ない。
いずれは、滅び消えるのでしょう?
まさに、実験のための世界。フラスコの中の世界。
良くできたジオラマの中の世界みたいですね」
「あなたは、あの世界の外にいますからね。
でも、この世界だって、あなたには感じられなくとも、
この世界の創造神からしたら、同じようなものなんですよ」
女神様は、がっちゃんの頭を撫でながら、優しく俺に語りかける。
「あなたにとって、この子は、ただの愛玩動物ですか?
違いますよね?家族でしょう?
例え種族は違っていても。
この子が、あなたより先に天に召されるとわかっていても。
あなたは、この子と暮らし続けることを選んだ」
「なんか地球の物語に出てくる女神様みたいなこといいますね。
俺のよく知ってるあなたには、あまり似合わないセリフですよ。
あと、がっちゃんにウンコされてます」
女神様は、がっちゃんを俺に放り投げて、
泣きそうな顔で、自分の服を確かめる。
服にウンコされたぐらいで慌てるなど、
鳥を愛する者の風上にも置けないわ。
女神様にウェットティッシュを渡しながら、俺の決意を伝える。
「それでは遠慮なくやらせてもらいます。
女神便も遠慮なく使わせてもらいますよ。
あと、しゃべれるんだから、
いまいち乗り気でないエルフたちのお尻を叩いてくれるとか、
ちりじりになった獣人族を呼び寄せ、
ともに力を合わせるようにとか、
直接、偉い人に言ってもらえるとありがたいです」
「話すだけなら、世界に影響は与えないのでやりましょう」
「あとですね?
散々、使っといて、なんなんですが、
うちのがっちゃん、巨大化させといても
悪い影響はないんですよね?」
実は、一番の心配事だった。
女神様はしれっと のたまった。
「巨大化なんかさせてませんよ?
あの世界はジオラマ世界といいましたね。
あの世界は、地球と比べて100分の1の世界なんです。
だから、今のままの大きさですよ」
俺は、片手に握ったオカメインコを見て、
「これで、あの大きさ?
じゃあ、俺はなんで小さいんです?」
「あなたは、あの異世界への干渉の仕方がちがいます。
そのまま行ったら、200メートルの巨人ですよ?
世界を破壊させるするつもりですか?」
身長200メートルの山を削り、湖をつくり、道を造る巨人。
まるで、昔話に出てくる巨人『だいだらぼっち』だ。
何その、今頃くれたチート設定。
やったことを思い出すと、俺には、ふさわしい呼び名だな。
「本来、あの世界であなたは、その大きさの存在なので、
あなたの魔力は成長するごとにやたらと大きく
なっていってるんですよ。
あなたの身体と能力が、世界になじんで本来の力が
魔力として解放されているだけですが」
今回の異世界召喚チート設定の理由付けですか。
ネタバレ回のついでに、少し気になっていた人たちのことを
ついでに聞いておこう。
「女神様、召喚された勇者って強いんですか?
俺、出会うと殺されちゃう?」
女神様が、黒き神速のGを見るような目で語る。
かなり嫌な奴らなのか?
「召喚される勇者たちとは、人族の神を騙る厨二病の人形です。
嫌いなものというより、世界の汚物ですかね?」
「そんなに残虐とか、性格悪いとかなんですか?」
「いえ、私の言葉、そのままの意味です。
本来、あの異世界は、地球からの召喚など受け付けません。
受け入れることができないのです。
あの世界は、小さなジオラマの世界。
地球の者は、その存在が大き過ぎて拒否されます。
だから、私が許し、中に入るのための細工が必要なのです。
あなたの持ち込んだ物ですら、そうしてるんですよ?」
「じゃあ、勇者ってのは実は、召喚されてないってこと?
それとも、秘密があるんですか?」
「あの厨二病が人族を通して召喚している勇者とは、
地球でいう悪霊ですね。
この世界の人をそのまま召喚することはできません。
あの世界にとっては、存在が大きすぎるからです。
それは死者の魂でも同じことです。
だから、ヤツらは、抜け道を見つけました。
この世界で死んだ人の魂の残滓。
欲望。
人としての残りカスなら、召喚できたのです。
しかし、正邪問わず、強い意志をもつ者の欲望は、
残りカスとはいえ、まだ存在が大きかったみたいで、
普通の人以下の小者の残りカスしか召喚できないみたいです。
勇者とは、その小者の残りカスをヤツが造った器に
押し込んだだけの人形に過ぎません。
人の形をしていますが、残りカスでは、もとの記憶や人格も
薄れてしまっているようなのですが、
核となっている醜い欲望には忠実なのですよ」
「とても弱い悪霊ねえ。それでも怖いんだけど」
「大人の女性は怖いので、小学生低学年の女の子のスカートを
めくってパンツを見ようとして怒らせて、
怖くて逃げた挙句に車道に飛び出して轢かれて死んだ
男子高校生の残りカスの欲望から造られた勇者とかでもですか?
この世界の存在としては勇者とされる分、強力な存在ですが、
霊的な存在ではないので、きれいに消滅殺菌できますよ?」
「さすがに、それは怖がれないですけどね。
というか、それが勇者でいいんですかねえ?」
「ゲームの駒として機能すればいいみたいですよ?
偽神の威光があるのと、実際に強いですから。
人族からは、尊敬もされてますが、非道な行いを表だってする
勇者に対しては、人族の中には、嫌う者もいますし」
「強い上に、クソ虫かあ。
そんな奴に殺されたくないなー」
「では、お守りとして、これを授けましょう!」
女神様が、鏡面のように光る指輪を授けてくれた。
なんか栓抜きみたいにゴツくて、デカい。
「ミスリル製?でも、あっちの世界の物は、
何も持ち出せないんじゃなかったんですか?
まさに女神様のお力ってとこですか?」
「いえ、ステンレス製でミラーコーティングしてあるだけです。
そのパソコンで密林使って買いました。
その指輪、中指に通して、握って使うみたいですよ?」
「ひと指用のナックルガードじゃねえか!
どおりでゴツいと思ったわ!
先端突起まであるし、こんなんで殴ったら骨が砕けるわ!」
「だから、護身用のお守りです!」
俺の金で買った特別な力は何もない、女神様のお守りを
当の女神様自身から、嬉しそうに手渡された。
そこは、ジオラマ世界のどこかの特別な空間。
白づくめの少年と黒づくめの少女の二人がいる。
少年は、どこか爬虫類を思わせる。
少女は、どこか、昆虫っぽい。
「女神がなんか楽しいこと始めたね」
「なんか、今更なのにね」
「異世界から誰か呼んだみたいだね」
「おもしろい物造ってるみたいだね」
「おもしろそうだから、もらおうか?」
「どうせなら、それを造るものたちごともらおうよ」
「じゃあ、ドワーフの国を攻める勇者たちを追加で召喚するね」
「楽しませてくれるのが当たるといいね」
「何が当たるかわからないのも楽しみのひとつだよ」
暫くして、新たに召喚された3人の勇者の噂が俺の耳に入った。
明石大橋のせいで、トンでも展開に傾いてしまいました。
まさか勇者を出すはめになるとは......




