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1.静けさの中で
「ユリチカ様、今宵は良いお月ですよ。」
「あぁ…、綺麗すぎて不気味だな。」
「天下の戦士ユリチカ様にも
恐れるものが、お有りですか?」
「当たり前だろう、僕も人だ。」
暗い闇の中、2人の白い影が浮かぶ。
1人は、鋭き剥き身の剣を腰に携え、袴に身を包んだ者で、
もう、1人は剣も何ももたず。
その異常なまでに整った中性的な顔が目立つ、
同じく袴に身を包んだものであった。
2人は、夜空に光る月を眺めながら
悠然と、”ナニカ”が多く敷き詰められた
赤い大地を踏み付け、その場を後にした。
ー ”ナニカ”それは、紛れもなく
人であり、赤い大地は、その人々の血で染まったものであった。
2人は、それを気にするでもなく
赤い大地から、遠ざかってゆく、
それは何故か?
ー 2人が、人を殺すためだけに生かされて来た
”イクサ”の最前線を走る人斬り集団
『桜禍舞槍』であるからだ。
人の生死を気にするわけがない。
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