ストロベリー・オン・ザ・軽機関銃
軽機関銃と短機関銃は別モノだそうです。
書いてから調べる私に誰かツッコんで(汗)。
機関銃の上にイチゴが乗っている広告ポスターが、校内の至る所に貼り出された。
この奇抜なデザインは、校内じゅうで噂となっている。
しかも何と、県のコンテストで最優秀みどり賞をとる。俺は「みどり」の意味の方が気になったが……。
「おめでとう。四道七生さん」
月に一度の全校集会。全校生徒が集まった体育館の壇上で、校長先生から「最優秀みどり賞」と達筆書きされた賞状を受け取った(本当に聞きたい……「みどり」って?)。
賞状を片手にしまいおさめ、校長先生にペコリと一礼する。そして壇上から下りた。表彰者が名前を呼ばれ賞状を受け取って壇上から下りるまで、全校生徒の視線は本人に集中だ。
物凄いプレッシャー……。俺には想像できない。したくない。
「慣れた慣れた。そんなもん」
と、本人は軽く手を振った。もう片方には、イチゴの突き刺さったフォークを持っていた。普通の生クリームのショートケーキを食べている所であった。
彼女は四道七生。長い黒髪を適当に垂らし伸ばしている、ちょっと変わった女の子だ。
俺の名は、窓香優。○リー・ポッターか○びのび太風のメガネ男。
2人とも、15歳。中学3年生。
そしてここはもう、あの広いけれど堅苦しい空気な体育館の中ではない。俺の家のリビングだ。学校が終わって、幼なじみの七生が遊びに来ている。そしてドリキャス(ドリーム○ャスト)でTVゲームをプレイしている俺の横で体育座りをしながら、じっとプレイ画面を見ていた。
時々、「マニア」といった風にボソリと七生が呟く。「好きに呼べば?」と俺は無視する。
しばらくして……。
「聞いていいか、七生」
と俺が話しかけた。
「何」
「何で お前、ここにいるわけ。家帰って勉強したら? レベル高いとこ、受験するんだろ」
俺は七生の方を見やしないで、ずっとプレイ画面の方を見続けていた。画面では、筋肉たくましい美男が獣人族と格闘している。しょーりゅーはっ……! ドカッ、バキッ……。
「そうだっけ……。そうだった」
七生はサラッと答えた。本人、魂が抜けてやしないか? と思われた。
「あのさぁ。優」「何だよ」
すると、トロトロと七生が動きだした。自分の手提げのバックから、何かを取り出そうとしていた。
「コレなんだけど」
と、一通の白い封筒を見せた。
俺はゲームを止めて、その封筒を訝しげに見る。「何? 中身は?」
「意味が わからない」
俺は その封筒を手に取って、中身を出した。広げる前に、「見て……いいか?」と七生の顔色を窺う。コクン、と頷く七生を見て、俺は便箋を広げた。内容は……。
「 好きです。付き合ってください。 神月 ひかり 」
……。
短文だった。でも十分だろう。
「神月ひかり。2組の奴だろ。同じクラスになった事はないけど、ピアノの天才だ。有名だろ? よく、文化祭とかで お披露目していたじゃないか」
俺の記憶によれば、スタイルはいい。線の細そうな体つきだった。女子からの人気は高そうな気がするな。親の片方が、音楽を やっているって聞いた事があるけど……。
「私、女には興味が、無い」
「誰が女だと言った。男だよ。細身だけど、お・と・こ!」
「ピアノなんて弾けない」
「お前が弾けようが弾けまいが関係ねえって」
「意味が わからない」
「意味が、って……。どこが。告白されたんじゃないか。おめでとう」
「私の何処がいいんだ。何で私を選ぶ。わからない……」
俺の横で おとなしく膝を抱えていた七生が、ますます小さくなって、しまいには苦しんだ。
いや、本当に苦しんでいる。
「あ、おい、七生? おい……熱があるじゃんか! 何で黙ってたんだよ!」
俺が唾を飛ばしながら叫ぶと、その勢いあってか、コテンと七生が後ろに倒れこんだ。
「七生!! しっかりしろっ!!」
道理でボケッとしていると……いや、普段からボケッとしているから気がつかないんだ。何てこったい、七生!
次の日、七生は学校を欠席だ。今朝、熱が38度あったという。
2時限目が終わった所に、一人の男が現れた。3年7組の教室の入り口で、キョロキョロと中の様子を窺っている男。我が7組に、何か用ですか? 神月ひかり君。
俺は よっこらしょ、と腰をあげて入り口へ向かった。こっちから話しかけようと思っていたら、相手の方から話しかけてきた。「四道さん、いない?」
低いトーンの声だ。想像と違って、意外だった。俺は「今日は休み。昨日から熱を出しちゃってさ」と言った。「えっ……」相手は、目を見開いて俺を見る。
「ああ、大丈夫大丈夫。たまにあるから、こういうの。心配なさんな」
俺はハハハと笑い、手を振ってみせた。すると神月ひかりは。
ガシッッ!!
と、その俺の手をつかんだ。……イ?
「お前、何者だ。四道さんと、どういう関係だ? 口調からして友達以上恋人未満といった所か。……いいだろう、受けてたつ」
俺の背筋に、わずかながら冷や汗が。……えーーっと……。
「ちょ、ちょっと待て。何が『受けてたつ』だ! 勝手に決めんな! ただの幼なじみだ、幼な・じ・み! 家が近所! それだけだっつうの!!」
慌てて否定する。
「家が近所……」
と、神月は呟いた。やがて、俺の手を握りつかむ手がプルプルと震えだし、俺が ゲッ、まずい! と その向こうの彼の顔を見た時にゃあ……俺は緊張で体がシビれた。
神月の瞳がメラメラと燃えている。
何故、怒るーーーーーーーーーーっっ!!
「つまりは、そういう事なんだな。四道さんと……あんな事や そんな事や どんな事や ああ! そんな事まで!! ……我慢できない。お前を消す! ノンワラミンジョンソワカ!!」
はぁ!!?
俺が言葉を口にする前に、足元の地面が うねり、周囲の風景が歪んだ。空気が、ガソリンの色のように気味の悪い何層ものグラデーション色に見えて、ぐにゃぐにゃと うねり曲がる。
「わあああああああああッ!!」
俺は訳が わからなくなって、場に座り込んだ。足の力が抜けた。
しかし、片方の手は神月に握られたままだった。
「目を開けろ。立てるはずだ。ここは俺とお前のために用意した決闘場。俺はお前に、四道さんをカケて決闘を申し込む!」
俺が指と指の隙間から目を開けて見ると、やはり気持ちの悪い色彩の空間で、まるで動物の胃の中にいるみたいだった。あちらこちらで、脈のような、熱を持った「空気」が動いている気がした。
あんた、何者ですか。
俺は まず、そう思った。いまどきの妄想少年は、こんなスキルが あるのでしょうか?
「ここでのバトルは、生身では行わない。俺とお前、それぞれが想像したものが代わりに戦う。例えば、そら、見ろ」
いつの間にか俺の手を離した神月は、もう片方の手で真っ直ぐ自分の横を指した。指した方向に、2メートル位の炎が突如現れた。
やがて炎の中から、ケルベロス的な獣人がムクリと起き上がったように登場する。
「グガアアアァァァアッ!!」
すさまじい咆哮。周囲に熱を持った風をぶつける。その姿は全身、毛で覆われ、牛頭から生えた角は太く固そうで怖い。目が血走ってギラギラしている。武器は持ってはいないが、手足の指に生えた爪は、鋭く十分武器となるだろうよ。
「俺の想像力が生み出した獣人、タンバリンだ! さぁ、お前も出せ! 想像しろ!」
俺を見下す視線で神月も吠える。いや、想像て。タンバリンて……。
その辺り、音楽なのね。
「急に言われても……畜生! 仕方ねえなぁ……ええと、想像……イメージ……この世で一番、強いヤツ!」
ボンッッ!! 風船が割れたような音とともに、何かが飛び出した。何か……。
モウモウと、煙やチリ・ホコリから出てきて姿を晒したのは、割とマトモそうな筋肉質の若者であった。上下とも紺色の武道着を軽く着こなしている。トゲトゲのイガグリ頭には、白く細めのハチマキをしていて気合いが入っていた。
どこかで見たような男……ああそうか、昨日やっていたゲームに、こんな奴がいた。俺の咄嗟の想像力で登場してくれたのだ。ええと、名前は どうしようか……。
「適当で いいか。行けっ、イガ・グリ男!!」
俺のネーミングセンスには、誰も何も言わないでくれ。臨機応変、発想タイプではないんだ。どちらかというと、ジックリ熟考型。
「ハアァァァアアッ!!」
金色のオーラがグリ男を包む。シュワシュワシュワ……オーラの音が、辺りに響き渡る。
「タンバリン、ゴーー!!」
「グガァッ!!」
神月のゴー!コールで、タンバリンは こちらへと向かって来た!
「うらぁっ!!」
ガシンッ!!
タンバリンとグリ男、お互いの両手を正面から組むような格好で、押し合う。両者、そのまま にらみ威嚇する。「ググググググッ……!!」「ガあぁぁぁあ……!!」
互角だ。両者とも一歩も引き下がらない。
お? 俺の想像力も(自信無かったけど)捨てたもんでない。やるじゃないか……と思ったら。
「ダアッ!!」
爆発的に、タンバリンがグリ男を押し返した!グリ男は、2歩3歩と後ろに下がって倒れそうになる。それを足でグッと堪えて、反動で体を起こした。しかし、その一瞬の揺らぎがタンバリンに次の攻撃を打たせる間となったようだ。
バキィッ!!
風を切るタンバリンのパンチが、グリ男の顔面に入った。体を起こそうとする反動のせいで、その衝撃は倍増だった。
「グリ男ッ!ああっ!!」
俺の悲鳴とともに、グリ男は倒れてしまった。
「次行くぞ、害虫めっ!」
神月は俺を真っ直ぐに指さし、もう片方の手で自分の顔の半分を覆い隠すようなポーズをとった。何ソレ、『薔薇の決めポーズ』? 勝手に命名したけど。
いや、それより俺を害虫呼ばわりかよ。自分はバタフライとでも言うつもりか。
「そらぁっ!! 出でよ、カスタムッ!!」
神月は指さしていた腕を高らかに上げた。同時に、パーーー……ッ!! と天からスポットライトのように光が降ってきた。そして現れるは上空から、白い機体のロボット……カスタムって、ガ○○ム? カスタネットじゃ弱そうだからか?
ガチイィィィィンッ!!
第2ラウンドが始まろうとしていた。……俺、別に負けでいいんですけど? と思う。
「仕方ねーなぁ……まったく、何で こんな目に……」
とりあえず立て、グリ男。「うーーんと、ロボットにゃあ、何だあぁ?」俺が四苦八苦して何とか出したのは……。
電気ねずみ。
ギ・ガ・ジュウ〜〜ッッ!!」鳴き声がメカっぽい。黄色だと何なので、赤色の体にしてみました。バリバリと、電気が全身に走っています。触ると、必ず感電します。
「あーもう。行って来い、2人とも!」
と、俺はグリ男と……えーっと……。「ギガジュウでいい。行けっ、ギガジュウ、グリ男!」
ゴーサインを出した。
「トドメだ! カスタム、タンバリンッ!!」
あちらも号令で向かって飛び出して来る。
「グガァッ!」「ギガー!!」「ダアァッ!!」 ガキィィィンッ!! ……肉声と金属音が響く。
タタタタタタタタッ!! シュバッ!! 「ハアッ!!」 ドカンッ!! キンッ!! バリバリ…… 「ギガ、ジューーー!!」 ドンピシャーーンッ!! 「うがあぁぁっ!!」 トトトトト…… ドガンッ!! 「ゲフッ……!」
殴りあい、蹴りあい、頭突きあい、かご○い……電気あい。時々、色のついた液体が飛んで来る……すさまじい攻防。グリ男の顔は変形し、タンバリンの体中 傷だらけ汗まみれ(汗かきなのか?)、カスタムの部品は欠け落ちメッキなどは剥がれ(メッキ?)、ギガジュウも丸びを帯びた体がボコボコだ。
これは、地獄絵図。
こんなの、見たくない。
「もう やめるぞ! やめろッ! 神月!!」
俺は大声で叫んだ。しかし、神月は聞いちゃいない。「ハーッハッハァッ!! 見ろっ、見ろぉっ!!」と、まるで人がゴミのようだと言わんばかりの高笑いとセリフで、俺を「アニメやマンガの見すぎだ」と思わせる。ああ残念だ、神月が俺のすぐ近くにいたらブン殴れるのに! さすがに これだけ離れちゃ、かわされちまう。俺はケンカは得意じゃない!
「聞けッ!! 神月ッ!! やめろ! やめるんだ! やめれーーっ!!」
……ダメだ、神月の耳に俺の声は届かないし、目の前にいる4人とも、やめる気配は無い。
こんな事なら、もっと腹筋を鍛えて発声練習でも日頃からしておけば良かった。
……なんて、ダラダラ考えている場合で、ない! 何とかできないのか! ……何か、何か出て来い!!
何かッ!! こいつらと神月を止める、何かッ!!
俺は膝をついた。耳を塞いで目を閉じた。どうしようもできない鈍い音を、これ以上聞きたくない、神経を、集中してーー……!!
「呼んだ?」
……ぱっと、場違いな声が俺の頭上で。
そして突然、周囲が暗くなったと思った。しかしそれは違った。
何かが。巨大な何かが、俺の前に現れ 俺は その影になったのだった。
巨大な……「七生……!」いや、七生が巨大なんでなくて。
巨大な戦車に乗った七生。俺をミクロに感じさせる巨大な鉄の塊に乗っかって、てっぺんで、俺を見下ろしている。後光の、太陽が眩しい(何故か太陽が?)。
「はあい。任せて」
七生はウインクを投げた。あれは物凄く機嫌のよい時の顔だという事を知っている。
「任せて……って。おい。どうするんだ?」
「ストロベリー・オン・ザ・ショートなんたらと言いますが」
俺の言葉を聞いているのか いないのか 届いてないのか。七生の目は、いまだに争いをやめない連中に向けられていた。巨大な戦車が出現したというのに、連中も神月も気にしていないのか? どうなんだ! いや、気づけよっ。
「ストロベリィィ……!」
七生が何か、言っている。えっ、何?
がちゃっ。
何十メートルもの上にいる七生が何をしているのか、逆光もあって、よく見えないぞ。
「ショッッットッッ!!」
そんな掛け声がよく響いた。と、ほぼ同時に、
パパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパッッッ!!
パパパパパパパパパパパパ…………
パパパ……
パが並んだ。
TVや映画でしか聞いた事がないが、発砲音だった。
なかなか鳴り止まない音と、それに合わせるかのように立つ砂煙・砂嵐、そして……。
「ウガァッ!!」「ピギャァッ!!」……その他、悲鳴。
音が止まった後 数秒間から数十秒間。いや数十分経ってたんじゃないだろうか……不気味な程、辺りが静かになった……。何も動く気配すらない。
俺は ゆっくり、上を見上げた。はるか彼方にいる七生を凝視した。目が慣れてきて、砂埃が やや落ち着いた頃。七生の姿が確認できた。
小さく二十センチ程にしか見えない七生の、両手に構えられているもの、それは もしや。
機関銃。
そして。
「カ・イ・カ・ン……!」
……やはり。……あやしい男。それは『怪漢』。……なんて言ってる場合ではなくて。
「七生! 降りて来ぉい!!」
俺は七生を呼んだ。しかし七生は、「面倒だから、もう帰るーー!」と言って……。
戦車ごと、消えた。突然、ぱっと。何事も無かったかのように なくなった。
「いきなり現れて、いきなり消えやがって……俺が呼んだのか?」
わからない。あれは俺が想像した七生?
「うぅ……!」
だいぶ煙が風で消された後から、うめき声が上がった。衣服がボロボロの神月だった。ゆっくりと起きた。そして、ゆっくりとフラフラと立ち上がって、押さえていた顔の半面のまま、キッ! と俺をにらんだ。
「四道さんを出すとは……! 卑怯なり!」
「おい、卑怯なり、って……。コ○助かよ?」俺はタメ息交じりに言った。
「うるさいッ! ……覚えてろよ……ええと……」
ピタッと神月の動きが止まった……仕方ねえなあ。
「窓香 優だ。窓香優。覚えとけ」
「覚えてろよッ!!」
忘れてえよ。神月ひかり。
歪んだ世界が、スウーーっと元の世界へ戻っていく。あんな色彩多様な空間に ずっといたせいで、本当の世界が白っぽく感じた。
ここは3年7組の教室、の入り口。
ああ、戻ったんだ。良かった……とホッと安堵した。
何処にも、神月ひかりの姿は無かった。
その日のうちに七生の家へ お見舞いに出向いた。七生の好きな生クリームのケーキを買って持って。
部屋に入ると、七生は半身起きてシャクシャクと八つ切りにされたリンゴを食べていた。
良かった、元気そうだ。買ってきたケーキが無駄にならずに済んだ。
「七生」「何さ?」「変な事聞くけど……今日ずっと、ここにいたか?」
七生はリンゴを休まず食べ続けていた。「ひたほ(いたよ)。はんへ(何で)?」
「いや……なら、いいんだ。今日ちょっと、白昼夢を……」
と俺が頭を掻きながら七生を見ると、「夢? ……ああ、爽快な夢は見たけどね。ポスターに描いた機関銃持って、撃ちまくる夢。何か、ミュータント的なものと戦っていたと思うけど……。風邪か、なぁ……。風邪のウイルス」
それって電気ねずみじゃない? もしくはケルベロス。
脳裏に浮かんだ七生への返答だったが、口に出すのは却下された。
夢だ! 夢、夢、夢! そうだ、そうしよう。うん。それがいい。
「神月ひかりの事だけど。あいつは やめた方がいい。『怪漢』と書いて あやしい男だ」
俺が言うと、「ふうん……?」と七生は片方の眉を ひそめた。
「なら、そうする。意味わかんないし。付き合うとか付き合わないとか……私には、まだ早い。当分、先」
そうか……? やっぱり変な奴。ま、神月ひかりには俺はもうコリゴリだから。
「そうだ、優。さっき、郵便受けにコレが入っていたんだけど……」
と、デスクの上からヒョイと俺に渡されたのは、また白い無地の封筒。
「またか?」
「意味わかんない。やっぱり」
「開けるぞ? いいな?」
俺は嫌な予感をどっかに置いて、開けられた封筒から中身を取り出す。また 好きです、とか書いてあるんじゃ……?
しかし違った。
文面は……。
『決闘を申し込む!××公園に来られたし。 ―伊賀栗男』
果たし状だ……伊賀 栗男……。
ん?
『イガ・クリ男』?
「意味が わからない」七生は言った。
俺にも わからない。
七生が機関銃で暴れた時の犠牲者の一人。
まさか。だってあれは すべて夢のはず。
「まあいいや。ケーキ食べようっと」七生は俺の持ってきた箱から、イチゴの乗った生クリームのショートケーキを取り出す。イチゴは ひとまず さっき食べたリンゴの皿の上に移し、ケーキに手づかみのまま かぶりついた。
俺はコロンと転がったイチゴを見ながら、思った。
何で機関銃にイチゴが乗っているんだろう、と…………。
《END》
【あとがき】
「みどり」賞の意味。会長がミドリさんなんだよきっと。
本作品は、読者様の ご指摘により加筆・修正をしています。(H19.11.6.)
ありがとうございました。