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……貴女、死ぬわよ?

掲載日:2026/04/13

 



 私には犬がいる――――。

 人間の。




 幼いころは引っ込み思案で、人見知りで、気弱で、怖がりで、泣き虫で、可愛らしくて、麗しくて、いやもぉほんっっっっとうに可愛い王太子殿下だったが、どこでどう踏み外したのか、隠れヤンデレになっていた。


 表向きは見目麗しく何でも出来るスパダリと評価されているが、空き時間のほとんどを、私のストーキングと周囲の邪魔者消しに全身全霊を注いでいる。

 

「マイ・エンジェル、ここにいたんだね。いつ見ても首元で揃えられたエンジェルの赤い髪は美しい。そうそう、さっき君に色目を使ってきていた男爵家の三男を捕まえたんだ。目の前で首を刎ねる栄誉を与えてくれるかな?」


 お昼の休憩が終わり、勤務場所に戻ろうと城内を移動していたら、ブラッドリー王太子殿下に気持ち悪い感じで呼び止められた。

 金色の長い髪をサラサラと風になびかせ、ピクニックに誘うような朗らかな笑顔で、恐ろしいことを言う。


「どこに捕まえたんですか」

「いつも通り、私専用のサロンだよ?」

「では、お茶をしながら城での働き心地はどうかなどの話を適当にして、解放してください」

「ん? なぜだい? アレは君に色目を使い、君のその美しい赤い髪に触れようとしていたのだよ?」


 使われていない。

 触れられてもいない。

 すれ違いざま挨拶をしたときに、頭に花びらがついていると教えてくれた、とても優しい人だった。しかも私にも髪にも一切触れずに、「そこ、そこ、あっ、もちょっと右です」と教えてくれるほどに。

 たぶん、王城庭園でお昼を摂っていたんで、そこで付いたのだろう。


「……納得いかないなぁ」


 こういう面倒なときは、いつもの一言に限る。


「まぁ、いいですけどね。殿下を嫌いになるだけですので」

「っごめんなさい! それだけは嫌だ! 嫌わないで! 私は、マイ・スイートエンジェルに嫌われたら生きていけないんだよ! 君に従うからっ! 君の指示したヤツだけ殺すからっっっっ!」

「煩いですよ。人目がないからって叫ばないでください。情けない姿を晒さないでください」


 私、そんな指示したことないんですけど? 殿下の中では、いったいどんな私の虚像が出来上がっているのだろうか。

 恐ろしくて聞きたくはないけれど、気にはなる。

 そもそも、私の名前はマイ・エンジェルでもマイ・スイートエンジェルもなく、フェリシアだ。

 

「私、先に執務室に向かいますので、殿下はサロンで彼をもてなしてから戻ってきてくださいよ?」

「はいっ!」


 ――――返事だけはいいのよねぇ。


 なぜこんなことになっているのか。

 きっかけは、私たちが六歳のころに開催された、王太子殿下と同世代の子どもたちを集めたガーデンパーティーでの出来事だった。




 ◆◆◆◆




「……………………ヒッ」

「ごきげんよう、ブラッドリー王太子殿下」


 一人一人から挨拶を受けるたびにビクビクとしていたらしい王太子。

 彼にはとてつもない苦行だったのだとか。ただ座って挨拶をされるのに返事をするだけなのに。

 もう終わりかと思ったころに、お父様に引きずられて来たのが想像を超える格好をした私だったとのこと。


 お兄様と木登りだ探検だと、田舎の領地でヤンチャ盛りに育っていた私は、王城庭園に到着して一目散に探索に抜け出していた。

 変な形に整えられた木に登ったり、低木で作られた迷路を迷路として遊ばず、木と木の間に顔を突っ込んでは、宝箱が隠されていないかなんて探してみたり。

 いやぁ、あのときは本当に楽しかった。またやりたいものだ。


 お父様に確保され、首根っこを掴まれて王太子殿下にご挨拶――となったのだが、髪はボサボサで葉っぱや折れた小枝が絡まり、顔には擦り傷と土汚れ、ドレスも所々破れている状態。


 まぁ、そんな状態の子どもから、笑顔でカーテシーをされて、脳内が大混乱だった王太子殿下は、「ヒッ」と声を漏らしてしまったとのこと。

 しかも隣では国王陛下とお父様が談笑しているので、余計に混乱をきたしていたのだと思う。


 正確には覚えていないけれど「昔のお前にそっくりだな」とか「ブラッドリーにもそれくらいの度胸が欲しい」とかなんとか言っていた気がする。


 お父様に一緒に遊んできなさいと言われ、素直というかちょっと阿呆だった私は、挨拶したからもう友だちなのか! と勘違いし、王太子殿下の手をガシッと掴んで「行こうぜ、ブラッドリー!」と、阿呆極まりない声掛けをし、もう一度迷路探索をするために爆走。


「ぅ、ヒッ! 怖いよ! 怖いって!」

「えー? たかが蜘蛛じゃん?」

「手のひらくらいあるっ」

「何もしなけりゃ、何もしないって。横を通るだけだよ」


 兄の言葉遣いに感化されていた当時の私は、めちゃくちゃ口が悪かった。気を抜けば今も出そうだけど。

 そして、気も強かった。まぁ、今も。


「ででで出来ないよ」

「出来るってば! ほらっ、なっ? 出来ただろ?」

「う、うん。出来た」

「カッコよかった!」

「ほんと!? 私、格好良いの?」

「ちょっとだけなー」


 怖がる王太子殿下を引き連れ、探検しまくり、実ってる果実を勝手に食べ、王太子殿下の口にもぶち込み。


「だっ、ダメだよ、勝手に食べたら」

「こんなに色付いて熟れてるんだよ? 絶対美味いって! ほらっ!」

「…………わっぷ。あ、美味しい」

「だろぉ!?」


 最後は庭園の奥にあるガゼボで二人で爆睡。


 お父様に、遊べとは言ったが、それは違うだろうが! 出発前に貴族の遊び方を教えたよな!? と、力いっぱい拳骨された。


 お父様は久しぶりに王都に出てきたので、二週間ほど滞在して仕事をするとのことだった。

 私はタウンハウスにいたお母様と領地に戻る予定だったけれど、駄々をこねてお父様と一緒に帰ることに。

 お父様がお母様にコレだけ置いてくのやめて! と泣きついていたけれど、お母様が笑顔で「たまには私の大変さを味わいなさい」とピシャリと言っていた。

 今なら言える。心からごめんなさいと。

 

 その日からの二週間、私は毎日のように王城に行き、王太子殿下を下僕にして王城内を探検しまくった。

 だって、国王陛下が「いつでも来ていい、ブラッドリーに遊び方を教えてやってくれ」と言ってくれたから。

 私は、素直なのだ。


 別れの日は、「じゃ、また遊びに来るな!」と雑に挨拶して、行かないでと泣き叫ぶ王太子殿下に笑顔で手を振って田舎の領地に戻った。

 それから十年以上、私は王都に行くことはなかった。

 だって、領地にいるほうがお兄様や悪友たちと一緒に森とか探索できるし、野生動物を手懐けたりと、楽しいことがいっぱいだったから――――。


 そうして出来上がったのが、私を大好きな犬属性のブラッドリー王太子殿下ヤンデレ風味。


 毎日毎日、私が戻ってくる日を心待ちにして、私に褒められるために『格好良い王太子殿下』になる努力をし…………なんか歪んでいた。

 

 十八歳の時、王城開催のデビュタントボールで再会した瞬間に、抱きかかえられて王太子専用サロンに監禁されかけた。

 顔面グーパンチして回避したけど。

 そこで、鼻血を垂らした王太子殿下に下僕宣言され、主人となって欲しいと懇願され――――国王陛下と話し合いの末、給金三倍で王太子殿下付きの専属侍女となった。

 

 ちなみに国王陛下は、私を助けようとサロンに駆け付けてくれたのに、王太子殿下に斬られそうになっていた。

 大慌てで私を侍女にしようと思って相談しに来たとか、逃げの一手を打ったけど。一生恨む。




◆◆◆




 あれから五年も経ったのかーと、感慨深くはないものの、溜め息は漏れる。


「マイ・エンジェル! 彼、とてもいい子だね!」

「フェリシアです。ちゃんと手厚くもてなして解放しましたね?」

「うん。ちゃんと出来たから褒めてくれる?」


 執務室に戻ってきた王太子殿下が、金色の長い髪を耳にかけながら笑顔で報告してきた。そして、目の前に跪いて頭を差し出してくる。

 これは撫でての意味。


「ハイハイ。イイコ、イイコ。ヨクデキマシタ」


 棒読みで頭を撫でてあげると、大喜びする。見えない尻尾がブンブンと振られているかのようだ。


 普段はイケメンスパダリ王太子殿下の毛皮を着用。

 私の前では、とにかく褒めて欲しい大型犬程度なので可愛い。

 だが、誰かが私に好意を寄せていると勘違いすると、斜め上の行動を取りだす。


 とりあえず監禁して存在を消そうとするので、監禁したらまず私に確認しに来るよう躾はした。

 監禁前に確認しに来るよう言っても、そこは守れないらしい。

 私が傷付いてからでは遅いから、心を鬼にしてやっているのだとか。


 いやお前、絶対に本能のままに動いてるだけだろ! と言いたい。

 まぁ、言ったけど。

 めちゃくちゃ恍惚とした表情で自分を理解してくれてありがとうとか、斜め上に感謝されて、ちょっと気持ち悪かった。


 そんなこんなで、スリリングな専属侍女生活をしている私だが、大きな悩みがある。

 それは、婚期を逃しつつあること。

 もう二十三歳。貴族としては行き遅れ、王城ではお局の領域に入りつつある。

 本気でヤバい。


 だがしかし、こんな状況で婚約者など見つかるわけもなく……。

 ちょくちょく王太子殿下の執務室に遊びに来る国王陛下が、それなら王太子殿下をもらってくれればいい、とかふざけたことを抜か――――仰られるけれど、地獄な未来しか浮かばないので遠慮したい。

 一番早いのは、王太子殿下に婚約者が出来ることなのだが、国王陛下はその話になると笑顔を貼り付けて足早に自身の執務に戻って行く。


「ん? なんか……父上のにおいがするんだけど?」

「先ほど来られていましたよ。監禁の件は既に報告してます」

「なんで二人きりで会うの!?」


 ――――わぁ、面倒臭い。


 あちらが勝手にやってくるだけだ。私は拒否できる立場にない。相手はこの国の一番上の存在である国王陛下なのだから。

 そう話すと、王太子殿下が苦しそうに顔を歪ませて溜め息を吐き出していた。


「どうされました?」

「皆さ、地位だなんだって言って、私自身を見てくれないよね。王太子殿下だから、王太子殿下ならば……ってさ。それに最近は、皆が結婚しろって煩いんだ。私にはフェリシアがいるのに」


 でしょうね、としか言いようがない。

 表側で見た限りは、イケメンスパダリ王太子。地位も見た目も中身(偽装)も全てがパーフェクトだとか言われている。

 何より、次代を担う大切な存在なのだから。

 早く妃を娶って子を生せ! と、頭の固い老人たちが口うるさくなってきているとは聞いていた。

 そろそろ潮時なのだろうと思う。


 この犬に、どうにか主人離れをさせなければ――なんて考えている自分に恐怖した。

 慣れって、怖い。




 王太子殿下が視察に出かけている間、私は王太子殿下の私室でのんびり過ごすのがお仕事。

 なぜならそう懇願されているから。

 視察について行ったら、どこぞの野郎どもが私に恋をしてしまうとか、ワケのわからない理由で。

 別に聞いてあげなくてもいいんだけど、室内に大人しく待機しているだけでお給金が出るのだから…………そりゃ、ねぇ?


 そんなときに、事件は起きた。


「フェリシア・キャボット、お前を拘束する!」

「はい?」


 王太子殿下の私室になだれ込んできた大量の騎士たちに拘束され、騎士団の地下牢へと入れられた。

 理由をと聞いても、騎士たちは無視。

 数人は視線をアチラコチラに飛ばしていたので、明らかに自分たちの任務に違和感や不安を覚えているのだろう。


 拘束される際に、王太子殿下の私室の警備をしていた近衛騎士の二人は、大人数に取り囲まれて、私を助けることが出来なかった。

 顔面蒼白になって大暴れしているのが見えた。

 彼らは犬な王太子殿下を知っている数少ない人物でもある。

 あれは完全に、どうにかしないと俺たち死ぬぞ、の顔だろう。

 まぁ、数の暴威には敵わなかったようだが。


 さてどうしたものかと、牢獄内のベッドに寝転んでいたら、カツカツとヒールを石造りの床に打ちつける音が聞こえてきた。

 この場にそぐわない音に、なんとなくの予想が脳裏に浮かぶ。


「フェリシア・キャボット! 貴女の罪を暴いて差し上げますわっ」

「……ごきげんよう、ジャクリーン様」


 ジャクリーン・へガティ。

 へガティ公爵家の娘で、彼女の祖父は騎士団司令部総司令官。

 

「貴女が王太子殿下を脅し、この国を乗っ取ろうと企んでいることを知っていますのよっ!」

「証拠はあるの?」

「フンッ! 絶対に処して差し上げますわ!」


 …………いや、証拠はどうした。

 まさか、王太子殿下を犬属性ヤンデレ風味にした罪とか?

 勝手に犬と化していただけなのに。しかも駄犬。

 

「処されるのはいいんだけど……貴女、死ぬわよ?」

「ふんっ、檻の中から脅したところで怖くもなんともありませんわ」


 脅しではなく、ただの事実なんだけどね……?


 殿下が視察で不在の間に私を拉致。

 この件は、国王陛下も承知していないはず。

 だって王太子殿下の危険性を一番分かっているのは、国王陛下なのだから。

 

「まぁ、好きにしたら?」


 あと三時間ほどで視察から帰って来るだろうし、お昼寝でもしておこうかな。




「――起きろ!」


 牢獄の鉄格子をガンガンと叩いて騒音立てている騎士を横目で見る。

 せっかく眠りに落ち始めていたのに。


「なんですか? もう迎えが来ました?」


 まだ一時間くらいしか経ってない気がするんだけど。

 

「何を言っているんだお前は。今から緊急裁判を行う。大人しくついてこい」


 手首に手枷と鎖をはめられ、さっさと歩けと鎖を引っ張られた。

 今から裁判だというが、証拠は何か見つかったのだろうか?

 騎士に引っ張られながら歩いていると、顔見知りの使用人たちが顔を青ざめさせてこちらを見ていた。

 これは、わざと人目のある場所を歩かされているのだろう。

 

 王太子殿下は、たぶん視察から戻ったばかり。

 緊急裁判をするために、会議場に連れて行かれている……といった感じだろう。

 正直、会議場に行くのは気が重い。

 面倒で。


「お待ちしておりましたわ!」


 会議場に入ると、真ん中にある証言台でジャクリーン嬢が得意満面な様子で待ち構えていた。

 会議場内には、各部署の役職たちが沢山集まっていた。

 顔を真っ青にしてお腹をゆっくりと擦っている国王陛下。きっと、胃が痛むのだろう。

 陛下の隣にいる王太子殿下は、それはそれはもう美しい微笑みで、ジャクリーン嬢だけを見つめていた。

 あの笑顔は、本気でヤバい。


 ジャクリーン嬢は、王太子殿下の視線に気付いて、ポポポポポと頬を染めているが、まぁ仕方ない。あれは勘違いするだろう。


「っ、おほん。それでは、先ほど連行いたしました、フェリシア・キャボットの罪を皆様にお教えいたしますわ!」


 口で『おほん』って。

 気になっていた私の罪とは何なのだろうか。何の権限で拘束していたのだろうか。


「フェリシア・キャボットは、国王陛下とブラッドリー様の弱みを握り、王太子専属侍女という立場と法外な給金を得ています! しかも、私と婚約しないよう強要していたのです」


 ――――へぇ。


「証拠はございます! こちら、侍女への給金支払い一覧表でございます。誰が見ても明らかに数字が可怪しいのです。侍女たちの管理は家令の管理下にございますが、彼女だけは国王陛下と王太子殿下の承認がなければどのような些細な変更も許されないのです」


 ――――へぇ。


 知らなかった。

 でも、ちょっと納得ではあった。手が空いたときなど、侍女長に指示を仰ぎに行くと、家令のゼリオ様のところに行けと言われ、ゼリオ様に指示を仰ぎに行くと、焦ったように王太子殿下の私室で待機でいいと言われるわけだ。

 いつからか、勝手に私室でのんびりするようになっていた。

 まぁ、給金泥棒と言われればそうなのだろう。

 給金を返せと言われるのなら、返そう。お金はそんなに使わないので、上乗せでもらっている分は返せると思う。


「王太子殿下は、この国の次代を担う大切な存在です。妃を娶り、子孫繁栄に励まなければなりませんのに……このままでは王族の血脈が途絶えてしまいます」


 子孫繁栄に励むて。

 言ってて恥ずかしくないのだろうか? 公衆面前で、ヤりまくれと言ったのと同じだと思うのだけれど。

 さっきから、王太子殿下の笑顔がどんどんと輝きを放っているのが、本気で恐ろしい。


「あのぉ」

「私がまだ話しているのよ! 邪魔をしないでちょうだいっ!」

「あ、いえ。別に、処されるのはいいんだけど……貴女死ぬわよ?」

「は? 私を脅そうっていうの!? 私のお祖父様は騎士団司令部総司令官なのよ! 口を慎みなさい、このアバズレ!」


 アバズレって、初めて言われた。

 選ぶ言葉がいちいち面白いなこの人。


 そして、親族の地位に誇りがあるのは構わないが、それが身を護るための盾にはならない。

 そんなものでアレは止まらない。

 私は出来れば血みどろな現場など見たくはない。


「ステイ!」


 王太子殿下がゆらりと動いたのが見えて、慌てて叫んだ。

 あり得ないほどの恍惚とした顔で、王太子殿下がこちらに駆け寄ってくる。

 手すりやイスなどの障害物をひらりと華麗に避け、目の前までくると、お待たせと破顔された。

 王太子殿下にギチギチと抱きしめられ、頭頂部に頬を擦り寄せられる。


「マイ・スイートエンジェル!」

「フェリシアです。人前ですよ。あと、ステイって言ったのになぜ動いているんですか。駄犬ですか」

「っ、ごめんなさい……命令してくれたのが嬉しくて」


 しょんぼりする姿はちょっと可愛いなと思ってしまうのだから、私もずいぶんと感化されているのだろう。

 拘束されていた手を王太子殿下の目の前に差し出すと、殿下が騎士を脅して拘束を外してくれた。


「なっ、ななななな……なんなんですの…………」

「マイ・エンジェル、首刎ねていい?」

「なんで刎ねる一択なのよ。首とかいらないわよ。家族に返してきてちょうだい」

「マイ・エンジェルは本当に優しいね。嫉妬しちゃうよ」


 仄暗い笑顔でジャクリーン嬢をジーッと見ていたので、これはやばいと王太子殿下の両頬を包んで、無理やりこちらに視線を戻した。


「マイ・エンジェル、首がもげるよ?」

「あら、私以外を見つめていたのに、お仕置きがないとでも?」

「っんぎゅ、お仕置きぃっ?」

 

 その場の勢いで口走ったら、王太子殿下に思いの外刺さったようで、ハァハァしだしている。

 やばい。変なスイッチを押してしまったらしい。


 チラリと国王陛下を見ると、頭の上で両手をクロスさせ、大きなバツ印を作っていた。どういう意味なの?

 

「マイ・エンジェル? 何見て――――」

「ブラッドリーは私以外見ない」

「はいっ」


 もう一度チラリと見ると、頭を抱えていた。

 なるほど、ヤンデレ風味の駄犬ストーカー王太子殿下だとバレたくなかったよう。

 そんな責任を私に押し付けないでもらいたい。


「まぁ、そんな感じなので、ジャクリーン嬢が死ぬのはどうでもいいんですが、目の前でとか私のせいでとかは嫌なので、どうにかしてくださいます? 国王陛下」

「マイ・エンジェル、なんで私を頼ってくれないの?」


 王太子殿下が寂しそうに聞いてくる。


「後処理に時間がかかるでしょう? 私たちがともに過ごす時間が減るけれど、それでいいの?」

「嫌。父上に全部やらせる」

「……ハイ、ヨクデキマシタ」

 

 本音は、王太子殿下に後処理を任せると、たぶん関係者全員の命も、総司令官の命もないだろうから。

 全てを国王陛下に丸投げし、王太子殿下を引き連れて会議場を出た。


 コレを飼い慣らすのは、野生動物を手懐けるより大変そうだなと思いつつも、ちょっと楽しんでいる自分がいるのは否定できない。


「飼い慣らせたとして、恋に発展するのかしらね?」

「私とマイ・エンジェルが? 命令してくれるのなら、何でもするよ」

「…………ふぅん? ま、今はいいわ」


 王太子殿下は、まだまだおこちゃまのよう。

 今後は恋愛方面の教育をしてみようかな――――。




 ―― fin ――




最後までお読みいただきありがとうございます。


冒頭からなんか嫌な予感がしてた! お前またこのパターンか! 実はヤンデレも好き← もうちょい甘めで読みたい! ちょっと解釈違いなんだよなー。こんな流れが欲しい!!!!!!

とかとか、そんな感じでいいので、感想はもちろんのこと、評価やブクマなどいただけますと、作者が小躍りしますヽ(=´▽`=)ノ

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― 新着の感想 ―
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なんだかんだ、引き取ってるフェリが良いね! 弱リーン、そんないっぬでも欲しいのかな。 弱リーンに『いゃーー、そんな殿下要らないー!』って言われて、 しょぼーんとしたフェリ、フェリの気持ちを下げたと怒る…
可哀想な国王様…(ノ_・、)此飲んで下せえ つ太田胃散
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