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その後、
マリーは一緒に来ていた友人達のもとに戻り、
ダリアもリージュと一緒に
自分たちに用意された席に座った。
「………さっきの、知り合い?」
「え?
………あぁ、さっきの2人ですか?
まったく知らない人です。
マリーの知り合いでもないと思うけど………。」
マリーの親しい男性は、
どちらかといえばみんなガッチリ体型だし、
さっきの2人はどちらかといえば細身だった。
「………すぐ変なのに目をつけられて。」
「はい?」
「ダリアは危機感が薄いから
パッと攫われて、どっか連れてかれちゃうよ?」
この国、誘拐犯がたくさんいるんですか?
子供じゃないんだから、
そんな怪しい人たちにホイホイついて行きませんよ。
むっと怒った顔をしてみせれば
「え?なに?煽ってんの?」
と、意味のわからないことを言われた。
どうしたらこの人と
意思疎通ができるようになるのだろうか。
「やっぱり
鎖かなにかで繋いでもいい?
ダリア、すぐどっか行っちゃいそうだから。」
「わたしはペットじゃありません!!」
前を見たままハッキリ答えたダリアに
なんで?と真顔でリージュが聞き返す。
「こ、婚約までしたんですから
そんなに心配しなくてもどこにも行きません。」
「ダリアがそう思ってても
無理矢理連れて行かれそうになったらどうするの?」
「そんな野蛮な人がこの国にいるんですか?
殿下のお兄様が一生懸命治めるこの国に、
女性を誘拐する極悪人がいるんですか?」
「そりゃいるんじゃない?
………現にダリアがそうでしょ。」
「は?」
「簡単に捕まっちゃったじゃん、俺に。」
ニッコリ笑うリージュの瞳には
うっすらと縦に光が入っていた。
…………蛇モードになろうとしてる、このヒト。
「じゃあ殿下は極悪人なんですね。
そんな方と婚約を続けるのは難しいかもしれません。」
ぷいっとそっぽを向けば
リージュがくすくす笑い出す。
………なんなのよ、笑ったりして。
気に入らない、というような表情のダリアに
「極悪人ではないけど、
でもこのままダリアを攫って、監禁して、
誰の目にもふれさせないように………。」
「やめてもらえます?!怖いから!!
やっぱり極悪人じゃないですか!!」
なんでこの人はすぐ
わたしを監禁しようとするんだろう………
牢獄にでも入れて
ジワジワ弱っていくわたしを見て楽しむつもり?
「………そばにいてね?ダリア。」
「………監禁はしないでくださいね?殿下。」
やっぱり少しズレてしまう会話をしながら、
パーティーの夜は更けていったのだった。




