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声をかけられたダリアとマリーが振り返ると
そこには若い男性が二人、
こちらを見ながら立っていた。
「このたびはご婚約、おめでとうございます。」
そう言われてダリアは、
習得した作り笑顔でお礼を述べる。
………マリー狙いかな?
お祝いの言葉を述べた男性の隣、
もう一人立っている男性の方を見ると
どうやらマリーに何か話しかけたいようで
あの、えっと、と
マリーに必死に何か伝えようとしている。
………残念、マッチョじゃないわ。
ダリアがそんなことを思いながら男性を見ていると
「王弟殿下も幸せ者ですね。
こんな可愛らしい方を婚約者にできて。」
ダリアの前に立つ男性がそう話しかけてくる。
「………そんなことございませんわ。
王弟殿下のほうが素敵な方ですから、
幸せ者はわたしの方なんです。」
自分でも驚くほどの嘘をつく。
見る人が見ればあの王子も素敵な方に見えるだろうが
ダリアからしたら、
自分の命を狙う暗殺者みたいなものだ。
いつ命を奪われるかとヒヤヒヤしているというのに。
「ダリア嬢に声をかけようとしていた者が
何人もいたんですよ?
もっと早く声をかけておけばよかったと。」
「まぁ!そうでしたの?」
うふふ、と似合わない笑い声をあげて
ダリアは心の中でうんざりする。
そんなこと、知ったこっちゃない。
隣にいるマリーも同様に
笑顔で受け答えはしているものの、
話しかけてくる男性の体型を見て
「チッ。」と心の中で思っているに違いない。
さっさと会話を切り上げて
別の場所に移動しようと思ったダリアに
「もしよろしければ、
向こうのテーブルにお越し下さいませんか?
あなたにお会いしたい者が
ほかにも大勢いるんですよ。」
そう言った男性の顔に
今まで何度か見たことのある"下心"が見えて
ダリアは小さなため息をつく。
どうやらマリーも同じように感じたのか、
二人はチラッと視線を合わせ
「申し訳ございませんが…………。」
ほかに先約がありますので、と
その場を離れようとしたダリアの腰に腕をまわし、
後ろにグッと引き寄せる者がいた。
「………こんなとこにいたの?ダリア。」
首を持ち上げ
振り返って見た先には、王弟殿下の顔があった。
「殿下………!」
「なかなか戻らないから心配したんだよ?
………さ、
お友達も一緒に行こうか。」
にっこりと笑ったリージュにうながされ、
それでは……と、男性たちに挨拶をして
ダリアとマリーはその場から離れる。
…………助けてくれたのかな。
前を歩くリージュの背中を見ながら
ダリアは少しだけ、リージュを見直したのだった。




