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その日ダリアは

いつものように職場に出勤していた。


まだ誰も、

自分と王弟殿下が婚約したことは知らない。

ダリアの父が帰ってくるまで、

公表は待ってもらうことにしたのだ。


「ダリア?あなた大丈夫?

 なんか最近おかしくない?」


ゴリゴリゴリゴリ………と

一心不乱に薬草の入ったすり鉢をすり続けるダリアに

職場の先輩であるミラが話しかける。


「なんにもおかしくありません。

 わたしの薬草調合好きは、

 今に始まったことじゃありません。」

「いや、

 だからその没頭の仕方が…………。」


尋常じゃないのよ、と

ミラは言いたかったのだ。



あれからダリアは現実から目を背けるように

職場での薬草調合、薬草採取、薬草研究に

時間も忘れ没頭していた。

なんなら頼まれてもいないのに休日出勤までし、

同僚やミラを心配させていた。


大好きな薬草に囲まれていないと

あの王弟殿下の蛇のような目を思い出してしまいそうで、

ダリアは戦々恐々とした日々を送っていた。


「なにかあったのなら、いつでも話聞くわよ?」


ミラはそう言って心配してくれる。

友人のマリーにも同じことを言ってもらったが、

とてもじゃないが相談できる内容でもなければ

相談する元気がダリアには残されていなかった。


「だいじょぶです……

 そのうち皆さんも知ることになりますので。」

「は?」


なんのことだかわからないミラを置き去りにして

ダリアはまた、

ゴリゴリゴリゴリ………と薬草をすり始めた。




その頃、王城では


「では、  

 ファティール前公爵がお戻りになりしだい

 リージュ様とダリアさんの婚約を発表するのですね?」


王妃であるシェリルが

夫であり、国王でもあるディアスに尋ねた。


「その予定だが………

 問題は発表の仕方なんだ。」


大々的に発表したいリージュと

それは絶対に嫌です!!と反対するダリア。


リージュが王弟という立場もあることから

発表しないわけにはいかないのだが、

この前の祝賀会のようにやるのはやめてくれと

ダリアがものすごい勢いで懇願してきたのだ。


「ならば、

 まずは近隣の国だけお招きして

 遠方の国にはひとまず手紙でお知らせしては?」

「そうだな……

 リージュは各国を留学していたから

 いろいろな国の者とつながりがあるだろうし。


 ファティール殿が戻られたら、

 まずはその話し合いからだな。」




着実に、

ダリアとリージュの婚約発表に関して

話が進められていたのだった。






 




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