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婚約申し入れから数日が経ち、

とうとうファティール家に王家から沙汰が届いた。


手紙を凝視したまま微動だにしない母と

お前………と何か言いたげな顔でダリアを見つめる兄。


ちなみに父は薬剤師の仕事で他国に出張中だ。



「………何かしたんじゃないかとは思ってたけど

 なんなのこれは、ダリア!!」

「お、落ち着いてお母………。」

「これが落ち着いてられますか?!

 いったい何があったら

 あなたが王弟殿下の婚約者になるの!!」

「………わたしが一番聞きたいです。」


ただ酔っぱらって寝てた人に声をかけただけなんです、

まさかそれが王弟殿下だと知らずに。

それから祝賀会で"偶然"お会いして、

なぜか婚約者になってくれと言われたんです。


とまぁ、簡潔に母に説明する。

いろいろ省いた説明にはなったが

すべてを話せばさらに母の血圧があがりそうだし

口に出すのもなんだか疲れる気がしたから。


「………それで?

 ダリアは承諾してきたんだな?」


すらっと背の高い、眼鏡をかけた黒髪の青年。

ダリアより5つ年上の兄、ジェイドだ。

その兄に問いかけられ、ダリアは


「………契約書にサインしました。」


ポツリとつぶやく。


最後まで抵抗はしたんです!!

ペンを投げ捨てようかとも考えたし

スペルをわざと間違えて、

あ、これわたしの名前じゃないですね、無効です。って

後日言おうかな、とかいっぱい考えたんです!


でもあの今にも射殺されそうな目に

隣でじぃぃぃぃと見つめられて

恐怖で何もできなかったんです!!


「それじゃあもう逃げも隠れもできないな。」

「うっ………。」

「まさか妹の婚約者が

 "あの"王弟殿下になるとは………。」


兄は冷静沈着な性格をしている。

早々に公爵家の当主になれるだけの手腕もあり、

ダリアが薬剤師の資格をとるために勉強していた時も

陰ながらバックアップしてくれた自慢の兄だ。


その兄もさすがに


「……王家からの申し入れなら

 こちらから断ることはできない。

 ………腹を括るんだな、ダリア。」


そう言って同情の眼差しでダリアを見た。

 

「………ダリア、

 あなた薬剤師の仕事はどうするの?」

「………しばらくは続けていいそうです。

 ただ、婚約者としての勉強をしないといけないそうで

 勤務日数を減らすように言われました。」


地獄だよ。

薬剤師になるために勉強して、

やっと試験に合格したかと思ったら

今度は婚約者としての勉強?

なにそれ、なにを勉強するの?

お姫様にでもなる勉強でもするの?



「でもまだ結婚が決まったわけじゃないです! 

 婚約の段階です!」

「おまえ、逃げられると思ってるのか?

 婚約した時点で結婚も決まったも同然だ。」

「………なんとか婚約破棄、できませんか?」

「お前が犯罪を犯すとか、

 よその男と子どもでも作れば破棄できるかもな。」


………よその男のこども。

 

「お前には無理だろうな。」


はっきり、きっぱり断言された。

わ、わたしだってその気になれば………!


「恋愛事にはまったく興味を示さず

 薬草に恋でもしてるのかと思ってた子が

 ………まさかこんな大物を捕まえるだなんて。」

「捕まえていません!!

 むしろこっちが捕まった方です!!」

「………とにかく

 お父様にも手紙を出しておくわ。

 一度こちらに戻って来てもらわないと。」


はぁぁ……とため息をつく母を見て

『ため息をつきたいのはわたしの方です。』と

ダリアは言いたかった。


好きで婚約したわけじゃない。

王家の人間に、

お前を殺して俺も死ぬ、なんて言われて

ハイ、そうですか!ご自由に!なんて言おうものなら

こちらが不敬罪で訴えられそうだ。


それに、

一目惚れしたという好意だけで

婚約を申し込んできたわけではない気がするのだ。

婚姻関係による結びつきが欲しいわけでもないだろう。



いったい何が王弟殿下を

ここまで自分と婚約したいと思わせたのか、

ダリアには検討もつかなかった。






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