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とある王国にある小さな森で、
その少女は困った状況に遭遇していた。
「………だ、大丈夫ですか?」
森の奥にひっそりと立つその大きな木の下は、
彼女のお気に入りの場所でもある。
だが現在、
その大きな木の幹にもたれかかるようにして
一人の青年が眠っていた。
………眠ってるんだよね?
死んだりしてないよね?
先ほどから何度か声をかけているが
起きる気配がない。
ほんとうに寝ているだけならいいが、
もしかして行き倒れ?などと
ダリアは心配になったのだ。
ダリア・ファティール、それが彼女の名前だ。
この王国にある公爵領で暮らす16歳の令嬢。
………令嬢と呼ばれるにふさわしいかは怪しいが、
いちおう令嬢であることは間違いない。
そしてそんな彼女は
この王国の薬剤師でもある。
生まれた公爵家、ファテール家は
代々国の薬剤師を務めてきた。
ダリアが森に来るのも、
使用する薬の原料となる薬草を取りに来るためだ。
ダリアはそろ〜っとその青年に近づいてみる。
………ケガはしてないみたい。
近づいて見てみたその青年は
真っ黒な髪と目元にあるホクロが特徴的な
…………酔っぱらいだった。
「酒くさっ………!」
近づいてみてわかった酒の匂いにダリアは、
心配して損した!と悪態をつく。
もう昼近いというのにこんなところで寝ているとは
よほど大量の酒を飲んで酔っぱらい、
この森にでも迷い込んだのだろうか?
「………ほっとこう。」
そう思いその場から離れようとした時、
………背後で動く気配がした。
「…………だ、大丈夫ですか?」
もう一度だけ……と、声をかけてみたダリアの声に
その酔っぱらいはうっすらと目を開けた。
「……………だれ?」
それはこっちのセリフだ。
こんなところで寝ている酔っぱらいに
だれ?と聞かれて名乗る筋合いはない。
「意識があるなら大丈夫そうですね。
………それでは失礼します。」
酔っぱらいに関わってもいいことなどない。
ましてやこんなところで寝るぐらい飲んでいるのだ、
遊び人かアルコール中毒のどちらかに決まっている。
立ち去ろうとするダリアに、青年が声をかける。
「………キミ、この国の人?」
「………………いえ、違います。」
ダリアはさらっと嘘をついた。
なぜだかわからないが、嘘をつかねばと思った。
「たまたまこの国に遊びに来て
たまたまこの森にきただけです。」
ニコッと笑ってこたえた。
ダリアの『嫌な予感』は昔からあたるのだ。
「………そっか、
ちょっと帰り道がわかんないから
教えてもらいたかったんだけど。」
「そうですか、それは大変ですね。
それでは失礼………。」
「嘘だよね、さっきの。
キミ、この国の人間でしょ?」
「!」
「じゃなきゃ、
こんなとこにカゴ持って薬草取りになんて来ない。」
「!!」
………しまった。
ダリアは自分が左手に持っているカゴを凝視する。
今すぐにでもこのカゴを投げ捨てたい!!
「………帰り道、教えてくれるよね?」
今度は青年が、ニコッとほほえんだ。




