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衛兵に案内された部屋の中で

ダリアは茫然自失となっていた。



………なぜこんなことに。


わたしが何をしたんだろう?

あの王弟殿下に好かれるようなことは何もしてない。

酔っぱらって寝ていたのを起こしただけ、

二日酔いに効く薬草を渡しただけ。


それだけで、婚約?

そんなことで婚約する?したいと思う?


あの人、やっぱりちょっと変なんだ。

まわりが噂するような素敵な王子様なんかじゃない。

ただの女好きの変人なんじゃない?



心の中で自問自答していたダリアを 

現実に戻させるように扉をノックする音がした。



「…………は、はい?」



返事をするのとほぼ同時に扉が開き、

そこに立っていたのは


「………すこし、お話よろしいかしら?」


自身の衛兵を連れた、この国の王妃様だった。


「突然ごめんなさい。

 あなたが来ることは陛下から聞いていたんだけど。」

「は、はぁ………。」

「あの話し合いはやっぱり………驚いたわよね?」


さっきの婚約の話のことだろう、

事前に陛下から聞いていたのだと王妃は言う。


「リージュ様は………

 まぁあんな方だから誤解されやすいと思うけど

 陛下が思うほど女性にふしだらではないのよ?

 わたしにも礼儀正しく接してくださるし、

 だれかれ構わず声をかけているわけでは………。」


なぜか王妃様が

王弟殿下のことを庇うような発言をする。

え?あなた国王陛下の妻ですよね?

まさか他の女性たちみたいにあの人のことを

素敵な王子様だと思ってるんですか?


「ち、違うのよ!誤解しないで!

 わたしはリージュ様を義弟として思ってるだけで!

 ただ、陛下の心労を考えると………。」

「…………さ、さようですか。」


あの弟、

ずっと兄に心配かけさせてばっかりなんだろうなぁ………

あの弟だもん、苦労してるんだろうなぁ……。


「そ、それにね!

 あなたがリージュ様の婚約者になってくれれば

 わたしともお友達になってもらえるかと思って!」

「………友達ですか?」


王妃はたしか、2年前にこの国に嫁いでいらした

他国のお姫様だったはずだ。

知らない土地で、知らない者にかこまれて過ごすのは

きっと寂しかったに違いない。

国王陛下は王妃を気遣ってはいるだろうが、

なにぶん陛下も忙しい立場、

常に王妃と一緒にいるわけにもいかない。


「王妃様とお友達になるなんて畏れ多いことですが、

 あの方と婚約などしなくても、

 王城に参った際には

 話し相手くらいにはいつでもなります。」

「!!

 ……ほ、ほんとに?話し相手になってくれますの?」

「もちろんです、王妃様。

 ………と言っても、

 わたしは薬草にしか詳しくないので

 年頃の子たちが話しているようなことは……。」

「いいえ!そんなの構わないわ!

 

 ………この城に嫁いできてから、

 気軽に話せる者が近くにいなくて………

 もしリージュ様に婚約者ができたら

 ぜひ仲良くなりたいと思っていたの!」


………すみません、王妃様。

わたしは婚約者ではないのです。

あの方とはただの顔見知り程度の関係なのです。


「こ、婚約者というのは置いておいて、

 私でよければお話くらいお聞きします。」


仕事の都合上、城に登城することもあるので、と

ダリアは王妃に伝えた。


「そう、ダリアさんは薬剤師なのね?

 いろいろ大変なことも多いでしょうけど、

 とっても誇らしいことね!」


王妃はにっこり笑ってダリアに言う。


「………今日のことは、

 薬剤師として働くあなたには酷なことかもしれないけど、

 きっとリージュ様は

 何が何でもあなたと婚約しようとするわ。

 もちろん、陛下もきちんと段階を踏んで

 ダリアさんの気持ちを優先させるように

 リージュ様には口うるさくおっしゃってるんだけど

 ………でもその声が

 どこまでリージュ様に届いているかが心配で。」

「あ、あの………王妃様?

 わたし、ちょっとよくわからないのですが、

 たった数回、少し話をした程度の相手を

 婚約者に選ぶものなのですか?

 ましてや王弟殿下ともあろう立場の方がですよ?


 陛下と王妃様も、

 婚約を決めた時はそんな感じだったのですか?」


世間の色恋沙汰など

てんで興味を持って生きてこなかったダリアに

他の人はどのようにして婚約者を決めているのかなど

まったくもって知らないことだ。


パーティーなどで知り合いになり、

そこから友人として付き合ううちに

恋心とやらが芽生えて婚約するものかと思っていた。

もしくは親が選んだ相手と婚約するとか。


それが自分の場合は当てはまらない。

たしかに知り合い程度ではあるが

友人でもなければ親のツテなわけでもない。

むしろ、

見てはいけないものを見た、関わりたくない相手なのに。


「わたくし達は

 陛下がわたしのいた国に

 短期留学なさっている時に知り合ったの。


 そこから話すようになって、

 2人で出かけたりもしたわ!

 そうしてるうちに陛下を敬う気持ちが生まれて

 ちょうどお互い婚約を考える時期でもあったから

 両国の結びつきを強くするためにも、

 陛下との婚約を決めさせていただいたの。」

「…………そうですよね、

 ちゃんと段階をふんでますよね。」


わたしとあの王弟殿下には

そんなものはないんですよ!!


酔っぱらってるところを起こしただけ、

令嬢をこっぴどくフっている現場に居合わせただけ。

どこにも敬う気持ちが芽生えるシーンがないんですよ!!


「ダ、ダリアさん?」


今までの自分たちのことを思い出しながら

ぎいぃぃぃっとした顔をするダリアを見て

王妃が心配そうに声をかける。

 


「………やっぱり、

 わたしには無理です。

 あの方の婚約者にはなれません。」

「ダリアさん………。」

「なんとかもう一度、王弟殿下に話してみます。

 ほかにもっと、

 婚約者にふさわしい方がいらっしゃいますって。」




ダリアは婚約の申し込みを断る決意をし、

座っていたソファから立ち上がったのだった。








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