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薬剤の在庫チェックも終わり、
ダリアはふぅっと一息つきながら
王城の門に向かって歩いている。
在庫が切れそうなものは
また出来しだい届けると駐在している薬剤師に伝え、
ダリアは研究所に帰ろうとしていた。
「………二日酔いの人が多かったのかな。」
在庫が切れかけている薬剤の中に
二日酔いに効くといわれる薬があった。
この前の祝賀会で飲み過ぎた人が多かったのだろう、
吐き気止めの薬もかなり減っていた。
「そんなになるまで飲まなきゃいいのに。」
…………そういえば
王弟殿下もあの日、酒の匂いをさせてたっけ?
あの殿下、酒飲みなのかしら。
そんなことを考えていたダリアの耳に
「…………ダリア!」
…………聞いたことのある声がした、
「…………………。」
が、聞こえないふりをして歩きだした。
「なんで無視するのー?」
早足で近づいてくるその人にダリアは、
『勘弁してよ………。』と心の中でつぶやく。
「元気だった?ダリア。」
にこーっと笑ってリージュが話しかけてくる。
「………ごきげんよう、王弟殿下。
……………おかげさまで。」
殺されるんじゃないかと
ビクビクしながら生きておりました。
「あれから
どうやって会いに行こうかと思ってたんだけど
こっちに来てたんだね。」
「………え?」
「ずっと会いたかったんだ、キミに。」
わたしは会いたくなかったです、殿下。
「な、何かお会いする理由がありましたか?
あの日のことは誰にも………。」
「あぁ、あんなのどうだっていいよ。」
どうだっていいって………
あなたにとってはそうでも、
お相手のご令嬢にしたら死活問題ではないだろうか?
「………ダリアは?
ダリアは婚約者とかいないの?」
「………いません、それどころではないので。」
ダリアの両親は
自分たちの子供の将来に口を出すタイプではない。
結婚しようがしまいが、
家業の薬剤師になろうがならまいが、
特になにか言うような人たちではない。
「今はやっとなれた薬剤師の仕事がありますから。」
「じゃあ、一生独身でいるの?」
「それは!………わからないですけど。」
いつか結婚できれば、ぐらいにしか今は思っていない。
たとえできなくても、薬剤師として働いていれば
実家に迷惑をかけることもないだろう。
「………わたしなんかよりも
ご自分の心配をされたほうがいいのでは?」
ダリアはリージュを見て言う。
「そうだねぇ………
今ちょうど、目星をつけたとこなんだよね。」
「!」
「どうやって自分のところに囲おうか、
いろいろ考えてるんだけどね…………。」
そう言ってダリアを見たリージュの瞳は、
縦に光が入ったように見えた。………それはまるで、
……………蛇みたい。
ダリアは首を振る。
いくらなんでもこのヒトは人間だ、蛇じゃない。
「さ、さようですか……
ではその方と婚約が成立するといいですね。」
「ね、楽しみにしててよ。」
べつにわたしは楽しみに待ちませんけど。
ダリアはそう思いながら
「それでは失礼いたします、王弟殿下。」
そそくさと城を後にした。




