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「リージュ。」


城の会議室から出ようとしたリージュに

この国の国王でもあり兄でもあるディアスが声をかける。


「なに?兄上。」

「………なに?じゃないだろう!!

 おまえ、ちゃんと"精算"したんだろうな?」

「…………まだ言ってんの?」


はぁ、とため息をついてリージュは兄を見た。


「あれはあっちの勘違いだって。」


王城で祝賀会が開かれたあの日、

リージュは他国で知り合った令嬢に声をかけられた。


確かに数回、他の者も交えて食事をしたことはある。

そのときに話したような気もするが、

色恋沙汰になるような関係ではなかったのに。


「なにを勘違いしたのか、

 俺も自分と同じ気持ちだと思ってたんだって。」


いつそんなことを自分が言ったのだと聞けば


言わなくてもわかります、

リージュ様はわたくしに

好意を寄せていたではありませんか!……だと。


「しかもあの令嬢、国に婚約者がいるんだよ?

 食事会の時に聞いたのに、

 当の本人が忘れてるんだから………

 相手がかわいそうだよね。」

「………おまえがそういう態度を見せたんじゃないのか?」

「は?

 誰かれ構わず手を出してるわけじゃ………。」

「じゃあほかに手を出した令嬢もいるんだな?!

 今回の令嬢だけじゃなく

 これからはそこらじゅうの国の令嬢から

 沙汰がくるのか?!」

「そんなわけないでしょ………。」


あぁぁぁぁ………と兄は嘆いているが

そんな面倒くさいことになる令嬢と

"お付き合い"はしていない。

自分の立場もちゃんとわかってるつもりだし

いずれこの国に帰ることは決まっていたのだから。

………兄上は心配しすぎだ。



「…………あぁ、でも。」

「なんだ?!

 やっぱりいるのか?!」

「…………気になる子がいるんだ、ここに。」

「ここに?

 いったいどこの令嬢だ?」

「………"ファティール"だったかな。

 すっごく可愛い子だったから。」

「ファティール?

 ………それならばダリアか。」

「!

 兄上、知ってんの?」

「もちろん。

 ファティール家は代々王家の医療、

 特に薬剤について助力してくれている家門だ。

 ダリアはそこの娘で、たしか最近薬剤師に……。」

「へぇ…………。」


まさか兄から情報がもらえるとは。

たしかにあの日も森で薬草を摘んでいたっけ。

………そうか、薬剤師だったのか。


「リージュ………

 お前まさか………。」

「大丈夫、"まだ"そこまでじゃないから。」



そう言ったリージュの瞳が怪しく光るのを見た兄は、



(…………かわいそうに、ダリア。)



ダリアに憐れみの言葉をかけながら、

リージュとともに部屋を出た。












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