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【書籍化&コミカライズ】双子の妹に殺された姉、二度目の人生は初恋のイケおじ王弟にフルベットします!  作者: 黒猫ている
4章:王権の影

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55:双子の姉は真実を知る

「失礼します」


ノックの後、静かに扉を開く。

ディアナにとっては見慣れたはずの父の執務室が、今はなぜか薄暗く感じられた。


「……座りなさい」


父の声に頷き、ソファーに腰を下ろす。

ディアナの向かいには、父ウェズリーが腰を下ろした。


端正な唇から、ため息が零れる。


「お前にも、いつかは話さなければならないことだ……」


ウェズリーが指を組んで、目を閉じる。


「お前が、公爵の座に就く時に……話そうと思っていた」

「私が……?」


ディアナが、唇を噛む。

次期ガザード公爵として、幼い頃から教育を受けてきた。

既に次期公爵としての準備は整ったものだとばかり思っていた。

だが──、


(まだ、私の知らないことがあるというの……?)


前世の父ウェズリーは、流行り病で帰らぬ人となった。

爵位を継いだ時は、王国中が混乱の真っ只中にあった。

ディアナは、父の最期を看取ることさえ出来なかったのだ。


「我がガザード家は、建国以来の名門。建国の立役者となった六つの家門については、知っているか?」

「……五大貴族と、ラトリッジ王家でしょうか」


ディアナの答えに、ウェズリーが頷く。


(……また、五大貴族……)


膝の上で、ディアナが拳を握りしめる。

どうして、この呼び名がここまで自分達に付き纏うのか。

もはや、偶然とは思えなかった。


「これらの家門は、ただ有力な家系だったというだけではない。実際に()を持っていたんだ」

「力……?」


俯くウェズリーの頬に、長い睫毛が影を落とす。


「浄化、洞察、技巧、剛勇、再生……様々に言い伝えられているが、その中でも、王の座に就いたラトリッジ家の能力は──“統治”と言われている」

「統治……」


ウェズリーの言葉を繰り返すように、ディアナが小さく呟く。

言葉だけ取り上げたなら、正に王に相応しい能力と言えるだろう。

だが──それでは、コーデリアのあの様子は、説明は出来ない。


「それぞれがどんな能力かは、推察するしかないが……王家が持つ能力は“人心を掌握する能力”だと聞いている」


ゾクリと、ディアナの身体が震えた。

人心を掌握などと言えば、聞こえはいい。

だが、先ほど見たコーデリアの姿はどうだ。


そして、前世で見せたコーデリアの敵意──。


(コーデリアは、私が憎くて刃を向けたのではなかったの……?)


背中を、汗が伝う。


「今のコーデリアは……洗脳されているということでしょうか?」


ディアナの言葉に、ウェズリーは苦い表情で頷いた。


「それ以外に……説明が付かないんだ」


重苦しい沈黙が、場を支配する。

傷もないのに、コーデリアに刺された腹が痛む。


「……治す方法は、ないのですか?」

「断言は出来ない。まるで雲を掴むような話だ」


弱々しいウェズリーの声。

彼ほどの力と見識を持ってしても、断言は出来ないのだろう。

それでも──。


「……あるのですね?」


沈黙が、答えを雄弁に物語っていた。

やがて、諦めたように、ウェズリーが唇を開く。


「同じ五大貴族の一つ、エルドレッド家の能力は……浄化と言い伝えられている」

「浄化……」


ディアナの脳裏に、エルドレッド家の兄妹──クライドとケイリーの姿が浮かぶ。

ケイリーは、コーデリアを気にしていた。

そして、あの温室でのケイリーの問いかけ──。


“ディアナ様……貴女は、もう、お目覚めなのですか?”


その言葉は、何を意味していたのだろうか。

彼女は──コーデリアが精神支配を受けていることを、知っていたのだろうか……?


「エルドレッド家の方にお願いすれば……コーデリアの洗脳は、解けるのでしょうか?」

「……希望的観測だな」


ウェズリーが苦笑する。

五大貴族の能力などという、言い伝えじみた話。

ディアナとて、コーデリアの取り乱した姿を見ていなければ、とても信じる気にはなれなかっただろう。


そこで、はたと思い出した。


「技巧……ということは、ひょっとして、クローク子爵様は……」

「ああ、技巧は、クローク家に伝わる能力だ」


ウェズリーから贈られた印章と、直接話した際のクローク子爵の人となりを思い出して、ディアナが納得する。

物作りに長けた印象を受けた子爵だが、それが一族に伝わる能力となれば、合点が行く。


「では、我がガザード家の能力は……?」


ディアナの問いに、ウェズリーは一拍置いて唇を開いた。


「我が家に伝わる能力は──“再生”だ」


父の言葉が、ディアナの耳にはどこか遠くで響いていた。

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