53:双子の姉は邂逅する
コミカライズ連載スタート&小説発売という記念日は過ぎましたが、もう少しだけ週2更新を続けてみます。
週1更新に戻ったら、忙しくなったんだなと思ってください。
ディアナとアランがガザード公爵家の別邸に戻ると、門の前に豪華な馬車が停まっていた。
同じガザード家の紋章が刻まれた馬車。
屋敷に入ると、訪問客がにこやかに手を挙げた。
「邪魔しているぞ」
「お父様、来られるのでしたら先触れをいただければ、早く戻りましたのに」
ディアナの父であり、アランにとっては長年の親友である、ガザード公爵ウェズリーがそこに居た。
「なに、途中で立ち寄っただけだ。すぐに帰る」
「どこかにお出かけで?」
「ああ、知り合いを訪ねていてな」
その時、ウェズリーの背後からぴょこんと栗色の巻き毛が顔を覗かせた。
丸眼鏡をかけた小柄な男性が、丸い瞳に好奇の色を浮かべて、ディアナとアランを見つめていた。
「紹介しよう、クローク子爵だ」
「初めまして、フィランダー・クロークと申します」
「初めまして、ディアナ・ガザードです」
「アランだ」
銘々に名乗りを上げた後、ウェズリーが誇らしげに胸を張る。
「彼は優れた魔道具師であり、細工師でもある。ディアナに贈った印章も、彼が拵えた物なんだ」
「まぁ、そうでしたの。あのように素晴らしい意匠、誰がお作りになったのかと思っていたんです」
クールソン伯爵の陰謀を防いだ、印章──その作り手を紹介されて、ディアナが表情を輝かせる。
「フィーラン王国との軍船共同開発という話があっただろう?」
フィーラン王国の特使である海軍提督カーティスとの話し合いで、ガザード家が得た権利だ。
交渉の席に着いたとはいえ、ディアナはいまだ爵位を継いではいない。
現公爵であるウェズリーに、話を通していた。
「有難い話だが、私は門外漢なのでな。物作りに詳しい彼を頼ったという訳だ」
「海洋の列強、沿岸諸国随一の技術力を誇るフィーラン王国の職人から技術を学べるなんて、こんな機会滅多にありませんからね!!」
クローク子爵が鼻息荒くまくし立てる。
ディアナとアランは、思わず顔を見合わせて苦笑した。
「今後、軍船の開発は彼の意見を聞きながら進めようと思う。その旨、伝えておこうと思ってな」
「ありがとうございます」
ディアナが和らいだ笑みを浮かべる。
今は離れて暮らしているが、元々仲の良い父娘だ。
ウェズリーは娘達に甘く、ディアナもまた、父には頭が上がらない。
「こちらで過ごすのも良いが、たまには本邸にも顔を出せよ」
「ええ、勿論です」
素直に頷くディアナの背後で、アランが僅かに視線を逸らした。
アランにとっては、新妻との新婚生活を友人に邪魔されるのは、なんとも気まずいものだ。
それを分かってか、ウェズリーが軽くアランの肩を小突いた。
「じゃあな」
「お二人とも、失礼します!」
軽く片手を挙げて、歩き去るウェズリー。
クローク子爵は軽く頭を下げた後、小走りでその後を追った。
バタン──と、重い扉が閉まる。
「クローク……子爵?」
記憶を辿るように、ディアナが小さく呟く。
「建国当時は公爵家だった家──と、記憶している」
「そう、確か五大貴族の一角と言われた……」
今は没落寸前のクローク子爵家だが──元を正せば建国の名門、クローク公爵家だ。
かつてラトリッジ王国を興した、ラトリッジ王家と五つの公爵家。
その一角であるモンクリーフ家は潰えて久しいが、それ以外──ディアナの生家であるガザード公爵家、ケイリーとクライドのエルドレッド公爵家、そしてアランはペニントン公爵家の血を引いている。
さらには、数代前に降爵したクローク子爵家まで──。
(これは、偶然なのかしら……?)
ディアナが、静かに唇を噛みしめる。
「気にするな」
低い声が、耳元で囁かれた。
か細いディアナの肩を、アランの逞しい腕が力強く抱きしめた。









