第三話「日常」E
取りあえず語り出さないように美少女云々の話に於けるゴールの線引きをする。
鈍感な連司なら爆弾発言に成り兼ねないことを言うかもしれない、という危惧が海斗の余計な気遣いまで働かせていた。
「ほんと、海斗は細けぇよな。そんなんじゃ卒業出来るもんも出来ないぜ。」
「おめぇも便乗すんなよな……。 」
重いため息を吐いた。
そんな気遣いも知らず、さらりと一言で済まされた。
そして連司も授業の部分を掘り返した来たのだから、脱力感が沸き上がるばかりだ。
「まぁ安心しろよ。30年間、童貞を貫けばまほ……」
海斗が拳を振り上げ、連司の言葉を遮った。
堪忍袋の緒が切れたと言うよりは、桜井に話を同調させるため気遣いである。
また、つくづく自分は細かいと連司の言葉を痛感する。
「っ痛ってぇな!」
「言い間違いに気をつけろよ。30年の道程で魔法使いになるんだけどな。」
「そうみたいだね。」
「お前等、何言ってるの……? 」
「いや、お前の方が意味不明だ。」
「うん、全くだよ。」
頭を押さえながら、何を言っているのか解らないと首を傾げる連司。
海斗が話題を調整しているとまでは気が付かない。
そこで桜井は何かに気づいた。あれだの集団も今はお開きになったようで、誰も居ない。
当然、その居ないとは席に座るべき人物エリスも含まれていて、
「ちょっと、青葉君を借りるけどいいかしら。」
と、窓際の席から声が聞こえた。
紛れもなくそれはエリス・フォン・シュトレーゼの声。
「何だよ。海斗~俺より先に抜け駆けしやがって。」
「やっぱり知り合いだったんだね。まぁいいや杉守君、私たち二人で応援しましょっ!!」
「ちょっ……まっ」
二人は冗談紛いに海斗の背中を押していた。
明らかに聞いていないぞ、と言わんばかりに顔が驚いている。
「ごめんなさいね。すぐ用事を済ませるから、」
「俺の意見はかんけぇねぇのかよ!!」
海斗が吠えた所でエリスは襟を引っ張りながら強引に教室の外へと進んだ。
「それにしても、海斗はいつあんな美少女と出会ったんだろうな」
「さぁ……私たちでは想像を出来ないほどの出会いなんじゃないかな」
「絡まれた不良を助けた……とか? 」
「もしかしたら、強ち……間違ってないかもね。」