第二話『魔術師』E
厳密に言えば魔術組織団体と呼ばれる物。
その大きさは組織によって様々だ。小さければとことん小さく、大きければ国規模で存在する。
究極者消失前までは有力な魔術組織団体が異界者の組織団体と、
魔法に於ける技術発展に向け、情報貿易を目的に頻繁にコンタクトを取っていたらしい。
魔術組織活動の名目で行われた異界人との交流は、正規の方法で行われた為、当時の究極者の秩序に触れる事はなかったみたいだ。
しかし、究極者消失した結果、此まであった友好から原則的に禁則された異界移動も破れ去り。
これから先はエリスの説明通り。
そんな所で海斗の作った料理が出来上がった。
食器皿二枚の上に此でもかと山のように盛り付けたのは夜食では定番な焼きそばである。
海斗は両腕を皿二枚で塞がれたまま、近くの卓袱台の上に運んだ
ご飯出来たぞ、とは言わず変わりに卓袱台の上から濃厚なソースが漂った。
案の定、エリスはその臭いを嗅ぎついてくれた。
布団からひょっこりと日の出のように顔を表し、山のように盛り付けられた炭水化物を見据える。
「なにこれ?」と、予想以上の量に驚愕。
しかし、先の戦闘で溜まった疲労や狭い部屋から漂うソースの濃厚な香りが彼女の食欲を濯ぐあまりで、不意に小さな腹の虫が鳴った。
頬を火照らせながら、目の前の焼きそばに素早く手を伸ばした。
「それで……何でこの世界なんだよ。」
と下品にも口を動かしながら海斗は言った。
品位を持てと言わんばかりの鋭い視線を向けられるが海斗自身は気に掛けていない。
「コホン、簡単に説明するとさっきの説明のように現界が1階と3階の間『2階』にあるからだわ。」
炭水化物を咀嚼し終えると小さな咳払いをしてエリスは言った。
現界は下界と上界に挟まれた世界。言い換えるなら上界と下界の道を繋ぐ『橋』である。
そのため、戦力を蓄えるには現界という領地は尤も安全で強力な場所らしい。
上界や下界と違って、現界は魔法を知らない人間が多い。
そんな人間に紛れながら潜伏する異界人が多いらしいのだ。
「しかし、幾ら現界が便利な場とは言え現界で対立が発生してるのもまた事実なのよ。」
「クソッタレな都合だな。」
そう返す頃には焼きそばは完食。炭水化物が入ったお陰か海斗の思考は多少冴えていた。
「要するに、あいつらはかなり得してるんだろ?魔法すらも知らない都市の影で人間を装いながらな。」