第二話『異界人』D
「要するに異界人は天使と悪魔か。」
「そう呼ばれているだけで本当はそんなのは存在しない。」
説明を聞いて素朴に思った疑問をエリスは遮ると視線が机の隣にある紙切れを見やる。新聞紙に混在されたチラシだ。それに手を伸ばすと懐からペンを取り出す。スーッと三つの横線を引き海斗に説明するのだ。
「下界と上界も人が住む世界と全く変わらないわ。この線で説明するなら、一階に下界があって三階に上階があって、それだけよ。」
「確かに彼らは天使や悪魔って呼ばれていたわ。けど用いる力が異なるだけでそれ以外は我々と変わらない。だから異界人って訳。」
「へぇ、随分と単純に説明するんだな。」
「その方が解りやすいでしょう?」
地獄と天界、そしてこの世界も差ほど変わらなく。ただ部屋の形が違うように、その世界観も各々に異なっている。しかし、それだけの説明じゃ足りない。
「で、何でその異界人とあんたが対立してたんだ。」
「『究極者』よ。」
「あ?」
裏変える声で海斗は首を傾げた
「世界の秩序を束ねる力『究極のクリスタル』を扱う者よ。」
「……」
「ごめんなさい。貴方の認識で言うなら、神の力といった方が解りやすいわね」
「最初からそう説明してくれ。で、その神様がどうなったんだ」
「二年程も前、それは『破壊』されたのよ。」
「破壊……だって?」
「そう、起きないと思われた『神殺し』が発生したのよ。」
神と呼ばれる力、究極者と究極クリスタルの消滅。そして『神殺し』。全ての事の発端はそこからだった。
「神殺しについては私もよく解らない。けれど究極者が居なくなってから、世界と世界の間にある秩序は崩落した」
「そのことで本来なら禁じられた『別世界への移動』が相次いで、無法にこっちの世界へ侵入した異界人が多くなった訳。」
「世界に入り込むくらいなら、どうでもいいんじゃないか? 」
「そうも行かないのよ。此処からは込み入った話になるんだけれどね。」
複雑そうな顔をすると、今度は余白に複数の丸を書いた。
「信仰が複数あるように、魔術の発展の為、異世界の組織と共に同盟を結んだ組織が複数あるのよ。
勢力は大まかに分けて四つ。まあ長くなるし勢力の説明は省くわね。」
「けれど、究極者の消失から組織の長の間で大論争。同盟はそれがきっかけで破綻し、戦争にまで勃発したわ。」
「けど、大変なのがこの対立のせいで四つの勢力がこの現界で衝突してるという事よ。」