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8発目 隊長<副隊長

 ***


   


〈ミオンサイド〉

   

「いやぁ荒れに荒れたね、今日の会議」

「毎度毎度、団長副団長が不在で第1部隊が仕切ってるからだろ。


 レイグレットを守る騎士団、アンビジョン。

 圧倒的な強さと賢さでアンビジョンを統治する団長と副団長だが、実態はまったく姿を現さない謎多き人物たちだ。


 住人は2人をあがめるが、内部では随分ヘイトを買っている。


 その原因のひとつが、伝書鳩に持たせた手紙1枚をオレたち第1部隊に預けて、議題の指示だけで仕切るのは俺たちだけだからだろう。


 団長たちに気に入られている、贔屓されている。

 周りにはそう見えるんだろうな。


「毎回私たちだもんね、進行頼まれるの」

「周りのやつらからしたら、自分たちが接点のないトップから直々に頼まれてるとか思ってるんだろうな」


 会議に出席しない不満、その本人にぶつけようのない不満をオレたちに向けてるんだろうな。理不尽だ。


「私たちだって顔知らないのにね」

「ほんとそれな」


 会議終わりにぶつくさ不満を垂れ流しながら拠点内を歩くのが日課になっている。

 そしてこれも日課。


「おねーさまお疲れ様です! はい、紅茶にチョコレート! 頭使う会議だったんでしょ?」


 何時に終わるかわからない会議にもかかわらず、毎回熱い紅茶とチョコレートを用意して待機しているユリリ。


「ユリリちゃん? いつも言うけど私もいること忘れてない?」

「……おねーさま! 今日のチョコレートはなかなか手に入らないカカオを使用したレアなやつですよ!」

「相変わらず露骨な阻害。ねぇ私隊長だよ? どうして副隊長のミオンが慕われているのかな?」


 めんどうな会議のあとに、面倒な絡まれ方をした。

 片方では俺の口にチョコをねじ込んでくるし、もう片方では質問攻め。


「ユリリ、ライラをそう邪険に扱うな。日々隊長として頑張ってるんだし、自分が所属する部隊の隊長だ。敬えとは言わないが口くらいはきいてやれ」

「はーい……」


 渋々、といったような表情でユリリは手に持っていたチョコレートをライラの口にこれでもかと言わんばかりにねじこんだ。


「ありがとうユリリちゃん! チョコレート美味しかったよ!」


 大量のチョコを一瞬で飲み込んだライラは、笑顔いっぱいでお礼を言った。


「……」

「……えっぐ」


 俺たちはライラに圧倒される。

 だって大量のチョコレートを一瞬で食べたんだぞ? もう人じゃないだろ。


「ん? 2人ともどうしたの?」

「ライラさん、紅茶でも飲みな?」


 すっと紅茶を出してライラに渡すユリリ。

 こいつの中でライラの評価が変わったんだろうな、いいことだ。


「偉いぞユリリ、渋々でも変われるのは長所だな」

「おねーさま好き!」


 ルンルンと跳ねるユリリの鎧がガシャガシャとうるさい。


「ねぇ、やっぱりそういうよさげだけど浅いこと言うのって隊長の役目じゃない?」

「騎士団員はみんなライラを慕ってるけど、こいつだけは規格外だから気にすることない」


 ライラは普段は厳格な雰囲気で隊長の役目を果たしている。

 そのことから、ほかの隊員や他部隊の人間にはとても慕われている。


 こんなに砕けた態度を見れるのは、俺とユリリだけだな。


「ねぇおねーさま、あのオークどうしたんですか? 見当たりませんけど」

「じいさんのところに預けてきた。流石にここには立ち入らせることは出来ないからな」

「え、あのおじーちゃんのところで大丈夫ですか? 戦闘狂だからオーク討伐されるんじゃ……」


 騎士団内での噂。

 ライラとミオンの師匠、辺境の地に住まう老人は、極度の戦闘狂で血を流すことに生き甲斐を感じている。


 そんな根も葉もない話が出回っている。


「鍛え抜かれても、討伐はないから大丈夫だ」

「オークを鍛える……?」

「あれはオレの友人でな、人間の姿にするために禁忌魔法を使う必要があるんだよ」


 あまり話すことでもないが、ユリリには話しておかないと気付いたらソロが討伐されている。なんてことにもなりかねないからな。


「あー……訳ありな感じですね」

「そ、だから討伐するのは勘弁してくれよ?」

「モンスターどもは嫌いですけど、分かりました。おねーさまがそう言うならアレは見逃します!」


 とりあえずソロの討伐の可能性は無くなった。


 俺たちは拠点を抜けて、堅苦しい鎧から解放される。


「ふー! やっぱり鎧なんてろくなもんじゃないですねー」

「ちょっとユリリちゃん? 騎士団の誇りなんだからね? あの鎧は」

「えー、だってあれ重いしー」


 2人が雑談をしながら歩いている。

 自宅までの道のり、ユリリは途中まで同じ方向。だからたまに一緒に歩くが、こうしてライラとユリリが笑い合っているのは初めて見る。


「ねぇミオン、ユリリが鎧のこと邪魔だとか言うよー! 騎士団員としてどうかと思わない!?」

「鎧は任意にして欲しい。重い」

「ミオンまで騎士団の誇りを重い荷物扱い!?」


 逆に鎧ごときにそこまで敬意を払えるのはライラぐらいだけどな。


「ほらー、おねーさまもこう言ってるんだからもう鎧なくそ?」

「いや私にそんな権限ないからね!?」


 騎士団長も副団長も顔を出さないんだから、第1部隊の隊長が声をかければみんなそれに従うだろう。だが、中には規則重視の堅物もいるしなぁ……。


「あ、もうこんなとこじゃん。あーし右方向だから、またね! おねーさま! 後ついでにライラさん」


 しばらく歩いていたら、もうお別れの時間がやってきた。


 いつもは無視されるからか、ついで扱いされているのに嬉しそうにしているライラを連れて、俺は左方向へ進んだ。

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