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オラシオン  作者: とりあえず全国の山田に捧げる
Chapter:Ⅳ Second World
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Episode 59 Lost

--ロイド視点--




さて、建物内部までは潜入できなくとも、とりあえず近くまではたどり着いた。

これからどうするか。


どうすれば、この巨大な壁の先へ行けるのか。

門の奥には当然警備もいる。


アイツ、クラウスが来るのを待つってのも、あの様子じゃ当分は戻って来れなそう。

とすると、やるべきことは………



「ここに残ってる奴等の味方のフリをして……は厳しいか」



そう考えていると、ふと思い出したことがあった。



「サーディア、そういえばどこに置いたっけか」



あんな小型メガネみたいな見た目してる割に、出来ることはかなりある。

全ての機能を把握してはいないが、知っている限りで出来ることは………


外部との連絡はもちろん、透視や盗聴、熱感知や機械人間との会話。

自身の心拍や写真及び動画撮影、音が聞こえた方向や距離の特定。

等々。


元々軍事用として作られた物らしいが、あまりにも機能が多く感じたのを覚えている。

サーディアさえ入手出来れば、ディクソンの場所の特定も行けるかもしれない。



「いずれにせよ、内部に入るのには慎重に…………行く必要は無さそうだな」



偶然窓を見ていたら、そこにディクソン本人の姿が見えた。

そこまで距離も遠くはない。



「強行突破だな」



そうと決めたからには、逆に注目されるよう堂々と門をくぐる。



「ん?あの子は確か……」


「ロイド様じゃないですか!のこのこと帰ってきましたが、簡単に戻って来れるとは思わないでください!お仕置きが―――」


「帰って来た?違ェな……」


「……?」


「潰しに来た。もちろん、俺の意思でな」




--クラウス視点--




(全てを終わらせて来い。一緒には帰れなさそうだが、俺は海の向こうで待ってる)



ラインさんは去り際にそう言った。

そんなことを言うから気になって話を聞きに戻った。


聞くと、ここからアルケニアまでそう遠くないらしい。

ちゃんとした船に乗って帰るか半年以上待つかの二択。

船に乗れば二日で着くとのことだから船で帰ると言っておいた。

アレリウス家にいた時に聞いた「見えない壁」は


そして、詳しいことは口で説明できないが、アルケニアは酷い状況だから覚悟しておけとも言われた。



「……気になる、けど」



今はそんなこと考えている場合ではない。


終わらせる。

今この場から、この状況からは逃げたくない。

人が、いるから。



「! 眩し……」



ようやく外に出た。

そして、初めて外がどうなっているかを知った。


街が燃え、人の死体がごろごろ転がっていた。



「……こんなことして、何が……」



魔力の大量生産。

それが敵の目的。


魔力とはそんなに凄いものなのだろうか?

……いや、聞いた情報だけで凄いのは分かるけれども。



「急がな―――」



急がないと。

そう言おうとした時、すれ違った気がした。



「……!?エリス!?」



ラインさんと一緒に来たのか?

父さんと一緒にいるんじゃないのか?

そんなことが一瞬で頭を駆け巡った。


後ろを振り返り、もう一度見てみる。

エリスじゃない。

妹ではない。

少し似ているだけの別人だ。


ホッとしたような、残念なような。

直後に、こんな状況なのにそんなことを思ってしまった自分が嫌になる。

最近この調子が続いてばかり。



「……あれ?」



エリスに似た子はずっと一人でうろうろしている。

迷子にでもなったのだろうか?



「アンタ!さっきから突っ立って何してんの!?」


「えっ?」


「音聞こえなかったのかい!?」


「え?何か鳴ってましたっけ?」


「ああもう!付いてきなさい!早く!」


「え?あっ……少し待ってもらってもいいですか?」


「待たない!」


「ごめんなさいすぐ済みますから!」



そう言って、すぐに子供の傍に駆け寄り、話しかけた。



「君、親は?」


「……いない」


「分かった。付いてきて。


すみません!すぐそっち行きます!」



子供を抱きかかえて走っていった。



走って数十秒。

防空壕のようなところにたどり着いた。

いや、防空壕なのだろう。



「すみません。助かりました」


「いいから奥行きなさい」



奥に行くと、他の人が九人程いた。



「ん?誰だオメェ……」


「あ、実は―――」


「道端で突っ立ってるから拾って来たのよ。アンタ、ここら辺にいる奴じゃないだろ?服装が違う」


「あ、はい。色々あって……」


「……んま、詳しいことは聞かないからさ。ただ、しばらくしたら出てってもらうからね。食料とかもあげん」


「あ、はい」



防空壕って長期間いるんじゃなかったっけ?

優しいのだろうけど、流石にそこまではしてくれないか。



「ところで君、名前は?」


「……サリア」


「そうか。ごめんね。勝手に連れてきちゃって」


「………………」


「何歳くらいとかって、聞いてもいい?」


「………………9」


「9歳か!よく頑張ったね!」



……親はいないって言ってた。

だから、なのかな。



「じゃあサリ―――」



ころんと何かが転がる音がした。

小さな音。

だが確かに音がした。


音がした場所を見た。



「爆………!逃げ―――」



反射的にサリアをぎゅっと抱きしめた。



「痛っっっ………………!!皆さん!大丈夫です!?」



爆煙のせいで何も見えない。

見えないだけじゃなく、聞こえない。

聞こえないのが何よりも怖かった。


恐怖の中、数秒。


経ってようやく見えるようになった。



「………………ぁ………………」



もう人と呼べる形をしている者はいなかった。

一瞬で血と内蔵でいっぱいになってしまった。



そして、恐る恐る下を見る。



自身の右手の薬指と小指、そして左腕は肘から先が無くなっていた。


サリアに至っては、頭の前半分が飛び出ていた。



「ぁぁぁぁああああああああああああああ!!!!」



また失敗

また助けられない

誰も



「なんだよぉぉおお!!何も……全っ然上手くいかねぇなぁ!!なんで!?」

「俺は助けられたってのに…………誰もっ……助けられないでっ!!」

「どうして俺だけいつも生きてるんだよ!!生きる価値なんて……もう既に死んでるのにぃっ!!!」

「俺だけ生きてたって……意味ねぇのにっ!!」


「…………………………………………」


「ハァ……ハァ……………………」



「ハァ……………………ハァ……………………」



……変わらないだろ。

叫んだって。



………………………



「ごめん、なさい………………………」



この戦いが終わったら、埋葬しよう。

ここにいる人達だけじゃない。

この戦いに巻き込まれた人全員。


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