4話 見守る者達
「俺は冒険者になります!誰も死んでほしくありません!」
俺は決めたんだ。
誰かが死ぬのなんて、見たくない。
「え~では最後に、アルケニア国王の言葉で締めくくろうと思います」
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魔物への復讐心もあったかもしれない。
けどそれ以上に、誰も死んでほしくないと思った。
だから決めたんだ。
「クラウス君、君は本当に冒険者になるつもりなのかい?」
国王様が話しかけてきた。
そういえば、冒険者ギルドはこの国、アルケニアが管理していて、最高責任者が国王なんだっけ?
「はい。もう決めたんです。もうあんなのは……嫌だ」
「…………立場上、君の行動や思想を否定することは出来ない。が、私個人としては、冒険者にはなって欲しくないと思っている。
冒険者になるということは、君の思ってる以上に辛いことが待ち受けているんだ」
「心遣いありがとうございます。正直もう僕の命とかもうどうだっていいんです。もう既にあの時死んだようなものですから」
皆は”あの時”を魔物の事件だと思うだろうが。
「……この子達に金銭支援をしても大丈夫ですか?」
「ああ。ただ、他の避難民と比べて不平等ではある。あまり派手に動かない方が良いだろう」
「分かっています」
この人、誰なんだ?
「まあ、そういうわけで、食費とか住居とかある程度は何とかするから。とは言っても、限度があるが」
「あ、ありがとう、ござい、ます。それで、あの、あなたは?」
「ライン・フェルターだ。随分と、お前のお父さんにお世話になったんでね」
「そう、なんですか……すみません。父さん、自分のことはあんまり喋らなかったのであんまり……」
「あいつが? 意外だな」
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「じゃあ、これが家の鍵だから。申し訳無いけど、あんまりこっちの様子を見てあげられないと思う」
「大丈夫です。わざわざここまでして頂いてありがとうございます」
「あいつへの……せめてもの恩返しだよ」
本当に恵まれてると思う。
聞いた話だと、親戚にたらい回しされたり、施設に行く人とかいるらしい。
俺達だけこんな扱いをされるのは正直罪悪感がある。
たまたま父さんの息子として生まれただけなのに、ここまでしてもらえるなんて。
「じゃあ、俺はこれで」
「ありがとうございました!」
行ってしまった。
ラインさんには感謝しかない。
いつか働いて、今まで貰った分を返していこう。
「じゃエリス、行こっか」
今日からこのマンションに、妹と2人だけで暮らす。
父さんも母さんもいない、2人だけで。
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数日経った。
エリスはここ最近あまり喋らなくなってしまった。
気持ちは、痛いほど分かる。
「………………………………」
“かあさん”、いつも1人で頑張って俺のこと大事に育ててくれたよね。
俺も、似たような感じになっちゃった。
金にはまだ困ってない。けど、
「俺一人で、できるかな。」
今後どうなるか分からない。
明日は学校がある。
新しい所で大変だろうな……
「…………寝よう」
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「はい。では、転校生を紹介します。例の事件の被害者だから優しくしてあげて下さい。ほら、入ってきて」
教室に入ると、色々な人に何故だか避けられているような気がする。
「えっと、クラウス・アレリウスです。よろしくお願いします」
エリスは大丈夫だろうか?
もしいじめられでもしたら……
考えないようにしよう。
「じゃあ、クラウス君はあそこの席に座って」
「分かりました」
そう言って席に向かう。
席に着く途中も、席に着いた後も何か違和感がある。
……………やっぱり避けられている。
だとしたらなぜ?
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翌日。
学校に着いたら机の中にあったものが全部無くなっていた。
一瞬無くしたのかと思ったが、周りを見るとクスクスと笑っている人が何人かいた。
正直こんなことをされるとは思わなかった。
前世含めこういうことをされたことなかった。
こういうのを見ると、やっぱりこの世界にいる人間も同じ人間だと改めて気付かされる。
「にしても、どうしよ…… 教科書とかあったのに」
このままだと授業受けられないぞ?
「あ、ゾルア君。今日の授業の教科書見せてもらってもいいかな? 無くしちゃったみたいでさ」
隣の席の人に教科書を見せてもらえるか聞いてみる。
隣の人は優しそうでよかった。
「まだ2日目だよね……? 大丈夫?」
「大丈夫………なのかな? 多分大丈夫だと思う」
見つかるのかなぁ……
一応先生にも言って、1週間くらい様子を見てダメそうなら新しく買うか。
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「ただいま~」
「お兄ちゃん……おかえり」
「エリス、学校は大丈夫そう?」
「………うん。大丈夫」
「そんな嘘つかなくていいから。……本当にキツそうだったら言ってね」
まだ言いたくなかったりするだろう。
今はまだ……
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数ヶ月が経った。
いじめは無視し続けたおかげで、徐々に無くなっていった。
他の人と積極的に話しかけたりなどをし、何とかこの学校に馴染め始めている。
「……おはよう。起きて。学校行くよ?」
「お兄ちゃん……」
「……大丈夫?」
「うん……」
エリスはまだ厳しそうだ。
気持ちは……分かるが。
「……ごめん。今日は学校、行きたくないや」
「……分かった。俺、今日は社会科見学だからいつもより少し遅くなると思う。
ご飯、ここに置いておくから食べてね」
「ごめんね……ごめんね……」
ここ最近ずっとこんな調子だ。
もう、どうすればいいのか分からない。
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「じゃあ、あとは自由に見て回って下さい。レポートは明後日までに提出してください」
レポート提出のために色々見て回んないとな……
……エリス、ご飯食べたかな?
本当に大丈夫だろうか?
どうしたらいいんだろう。
まだ数ヶ月しか経っていないと見るべきか、もう数ヶ月も経ったと見るべきか。
分からない。
何とかしたいけど、助けになるだろうか?
誰も教えてくれない。
誰も助けてくれない。
誰も――――
神“ゼウス”が着ていたとされる服を見て、それまで考えていたことが全て吹っ飛んだ。
それほどの衝撃だった。
「宇宙、服……? なんで、ここに?」




