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オラシオン  作者: とりあえず全国の山田に捧げる
Chapter:Ⅳ Second World
59/61

Episode 57 Benefacter

--ライン視点--



「これが、新兵器 ジェリコです」


「ほう……これが……この動画が本当だったらとんでもないものだな。あのG5をも超えるのでは?」


「いえ、G5はこれの20倍です。あれこそが最強の兵器です」


「G5はそれほどまで強いか……」



ディクソンはその動画を何度も繰り返し見る。

ただじっと、静かに見ていた。



「………聞いてもいいかな?何故君がここまで支援してくれるのか」


「あれ?言った気がするんですが……魔力の量産。その研究をいち早く完成させて欲しい。それだけです。我々も魔力が必要になりましてね」


「すまない。記憶を代償にしているのでね。所々忘れている部分がある」


「そうでしたか………でしたら――」


『ピリリリ!!ピリリリ!』


「鳴ってるぞ。私達のことは後回しでいい」


「………すみません。では―――」



そう言って一度外に出てみた。

だが誰からの連絡かが分かった途端、出るべきか悩んでしまった。



「エリス………」



向こうではどうなっているか、現在の状況を聞きたい。

だけど、そんな簡単に彼女と話すことはできない。



「………皮肉なものだな。魔物の源である魔力を使うしか術がないとは」



着信音が鳴り止んでくれない。




--クラウス視点--




登るのと違って、下るのは楽だった。


ルクスリアの口から左肩に向かう。

肩と言っても、肩甲骨部分だから移動距離はこれまでと違ってかなり短い。



「やっぱり攻めてきてるね……」



確かに、軍人らしき人々が大勢攻めてきている。

とはいっても、攻め込まれているのはザクトリア前部のみ。

比較的富裕層が多い後部までは来ていないようだ。



「えーで、ここの建物に入ってーの、


---


地下に行き―の、


---


奥に進んで、ハイ町長!」



3分もしない間に会えちゃった………

もっと時間掛かると思ってた。



「アストかーっ!結構早く来たんだな!」


「いや~お久しぶりです!」


「久しぶりに会えたというのに、まさかこんな状況になるとはな………」


「それで、例の鍵は?」


「ああ。この鍵だろ?持ってけ持ってけ。それで、お前さん達は何をするつもりなんだ?」



あっという間にここまで来て、あっという間に話が進んでいく。

ぶっ飛んだ作戦だった割には意外と順調に行ってる。

正直怖い。


というか、この町長さん何も聞かされてないのかよ。



「ちなみにこの鍵は?」


「サブアジトの鍵。といっても、アジトの地続きに出来た倉庫みたいなものだけどね。脱出の準備してくる。終わったらすぐ行くよ」


「……ちなみにどうやって脱出するんですか?」


「どうやってってそりゃあ、飛び降りるんだよ。もちろんパラシュート付きだから死なないよ」


「………ここ上空3万メートル以上ありますよ?」


「うん。そうだね」


「あ………が………」



あ、もうソアラさんがダメそうだ。

目が死んだ。

そんなに体力ありそうな人じゃないし、当然か。



「……ともかく、あとは攻めればいいんだよな?」


「そうそう。君の家をぶっ壊すことになるけど、いいよね?」


「構わない。元々そのつもりでコイツに付いてきたんだから。想像の100倍は戦力が足りなかったが」


「………え?」



元々、自分の実家をぶっ壊すために俺達に付いてきたってこと……?

ロイドは何のために?


前と違って、あんまり喋らないから何を考えているのか全然分からない。

大丈夫だと良いんだけど………



「あ、そうだアストさん。このお菓子袋、いつ頃開けた方がいいですか?」


「そうだね………すごい痛みに襲われたら、かな? それじゃ!」


「?………分かりました」



一見ただのお菓子が入っている袋だが、お菓子以外にも何か入っていそう。

その勘はどうやら当たっていたようだ。

何故こんな方法で渡したのかは謎だが……


そもそも、『凄い痛みに襲われたら』とは、どういう状況なのかは分からない。

ただ、その状況になるまではこの袋を守っておかないと。



「じゃあ俺達も行くか」


「確かこっちに行けば―――」



その時、かすかに声が聞こえてきた。

物音とかではなく、確かに人の声だった。



「こっちに誰かいるぞ!?」



声が聞こえた方向に真っ直ぐ進んだ。



「ワシは!?お前さん達が何やるか聞いてないんだけど!?あ、ちょっと!行かな―――ったく、最近の若いもんは………」



前に進み続けると、見覚えのある扉の前にたどり着いた。



「ここ……俺が捕らえられた拷問室だ」



まさかまたここに来るとは………


それにしても、俺が抜け出した後に誰か入れられたのだろうか?

そう思いながらも扉を開けた。


扉を開いた先に、確かに人がいた。

静かに椅子に縛り付けられていた。



「生き……てるの?」



指は全て無くなっていて、体中に刺し傷がある。

顔は包帯で巻かれていてよく分からない。

恐らく想像以上に酷いのだろう。



「………敵ではないよな!?味方なのか!?」


「生きてる!?」



俺達の話を聞いて、敵ではないと思ったのだろう。




「………味方かどうかは貴方の返答次第です」



ソアラさんは落ち着いた声色で話し始めた。



「まず最初に聞いておきましょうか。貴方、名前は?」


「………ケアラ・マグワイア」


「え?」


「……………あ、あなたは……何故捕らえられたのですか?」


「………言えない」


「では、生年月日は?」


「記憶に関してはバッチリだ。やっぱり貴方達は―――」


「じゃあ!!私のことは!!ソアラ・エリアスのことは!!………覚えていますか?」


「………こりゃあ、運が良かった………」


「え?」


「忘れるはずないよ、ソアラ」



………どうしよ。

生きてるのはかなり驚いたが、これは………



……………俺、薄情な奴だな。

いやまあ、そんなにケアラさんと関わりがあった訳では無いけども………



「あ、じゃあソアラさんはケアラさんを解放して、鎮痛剤でも打っといてください。ロイドと俺とで行こうか」


「あ、あぁ………」


「待て、まさか直接叩きに行くつもりか?」


「あーっと………正解です」



そう言うと、少し驚いた後にため息をついた。



「この先にある橋は爆破された。地上軽油じゃないと行けないぞ」


「爆破って………もしかして敵に移動ルートとかバレてる可能性は?」


「いや、多分関係無い。爆発の振動がザクトリアで作られているものとは少し違った」



よく分かるねーそんなこと……



「分かりました。じゃあ行きます。ソアラさん、連絡があったら起動してください」



どうしようもない最悪の事態の時にソアラさんに連絡する。

その後はソアラさんがルクスリアの血液採掘場に爆弾を放り込む。


そうなったら―――



「あれ?………………ロイド、隙を作るから先に行ってて」


「2人で倒した方が早いだろうが」


「いや………2人だけで話し合いたいんだ。この人は、絶対に殺したくない。怪我もして欲しくない」


「なんで………」


「俺にとって、親同然の人だからだよ。ラインさん」



突然目の前に現れた、俺の恩人。

この人無しではここまで生きられなかったと思う。


それがなんで。

なんで敵意剥き出しで来るんだ。



「ロイド、だったか?行くんだろ?進みなよ」


「………え?」


「君に用は無いからな。ほら、行きたきゃ行けよ」


「それじゃあ遠慮なく行かせてもらうぜ」


「あ、行ってらっしゃい………」



相手が相手。

気が緩んでしまう。

油断なんてしちゃいけないのに。



「………まあなんだ。とっとと帰る予定が、思ったより時間が掛かってね。だけど、やっぱり一緒に帰れなさそうだよなぁ………」


「俺は………帰りたいな。さっさとディクソンって奴を倒して、魔力の大量製造方法の研究を止めたら、一緒に帰れるかな?ああ、でもオラシオンを見つけて破壊もしないといけないし………」



今はこんな世界で大変なことをやってるけど、帰りたい。

またエリスと会って、



「え?なんで奴等のやってる研究を知っているんだ?」


「アストって人に教えてもらったんです」


「そのアストってのは、誰なんだ?」


「北原さんの親友らしいです!北原さんの妹さんとも付き合ってるらしくて―――」



………あれ?

違う。

そんなこと俺は知らない。


魔力の大量製造方法の研究をしていることも、オラシオンというものがあるというのも知らない。

何より、アストさんのことなんて俺は何も知らないはず、何も聞いていないはず。

なのに、なんで俺は知ってるんだ?



「………クラウス、お前がゼウ………北原さんの生まれ変わりだってのは聞いた。信じたくなかったけどな」


「え?いやまあ……確かにそうなんですが」


「今、俺達の世界では北原が敵だ」


「………え?いや………そんな………まさか………」



聞きたくない。

戦いたくない。


どうか、勘違いであって―――



「決めたぞ………俺は……お前を殺す。三英雄が一人、ライン・フェルターが相手だ。覚悟を決めろ!!クラウス!!」


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