Episode 53 Sorry
「さて、これで全員かな?」
「あっ、アリスさん。赤ちゃんは無事ですか?」
「大丈夫そう。ぐっすり寝てるよ」
「よかった………可愛いですね。女の子ですか」
「ちゃんと赤ちゃんを見たのが初めてだったね。ユウナっていうの」
「そうですか………」
守れてよかった。
本当に良かった。
「で、聞いても良いですか?なんでこっちに来たんですか?あそこにいた方が安全だと思うのに」
疑問だった。
なんでこっちに来たんだろうって。
「………本当に安全だと思う?」
「え?まあ、こんな所にいるよりは安全だと思いますけど」
「相手からしたら、敵がどこにいるかがすぐ分かるんだよ?」
「え?多分隠し部屋というか、隠れる場所とかどこかにあるんじゃ?」
「ない。昔っからの決まりでね。面倒臭いでしょ?」
「そんな面倒なものあるんですか………」
「この一族は男は全員戦場に行かなきゃならないってのもあるから、ロイドくんは逃げたんじゃない?」
「そうかな………?」
違う気がしてならない。
まあ聞く必要もないし、いいか。
「あそこにいたくなかった。それだけだ」
「あ、ロイド。聞いてたんだ」
「アスト、だっけ?呼んでるよ」
「分かった。すぐ行くよ」
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「……来たね」
「はい。色々、教えて欲しいことがあるんですよ」
「うん。全部、話すよ。君が知りたい事、全部」
「………え?」
「全部。もう、時間が無いんだ」
「いや………え?」
全部話す?
全部話すって………
全部って?
「全部っていうのは………」
「君が知りたい事全て答える。ただ、僕らでも分からないことは説明できないよ」
「急にそんな………言われても………」
「………ちなみに、急に誰か殺したくなったりとかした?」
「そんなこと!は、ない、ですけど………いや、あります」
「へぇ~頑張ったね。凄い進歩だ」
褒めないでほしい。
こんなこと、やめてくれ。
前世がどうあれ、悪いことは悪いんだ。
「………聞いて、いいですか?ここって、どこ、ですか?」
「地球」
やっぱり、そうなんだ。
異世界に転移したわけではない。
薄々、感じてた。
「というか、ちゃんと1日が24時間、1時間が60分って分かった時点で察するでしょ」
「あっ………」
言われてみれば確かにそうだ………
なんで気付かなかったんだろう………
「過去に大規模な戦いがあったって聞いたよね?」
「はい。それで魔力がどうのとかそういうのは聞きました」
「その時に、別の惑星に逃げた人たちがいる。そのままそこに住みついて長い年月が経って、地球に行ったら魔力が見つかって、持ち帰って、それで」
………魔力、か。
全部、魔力のせいなのか。
「ん?ってことはアストさん達は宇宙人ってことですか?」
「どうだろうね。元地球人、ではあるんだけども。宇宙人じゃ嫌?」
「そんなことないです。ただ、驚いて」
「俺も自分が宇宙人って全然無いし………まあそこら辺の話はいいか」
「はぁ………じゃあ、その、アストさん達の世界ではどんな状況になんですか?」
「うーん現在の状況を軽く話すと、俺達新人類VS宇宙人VS白色生物、しかも人類同士で戦争してるから外から攻めてくる奴等には対応できないし、白色生物を倒しちゃうと地球人が絶滅しなくなるからそれはそれで大変になるっていうヤバい状況」
「………?ん?」
「成り行きで宇宙規模越えの戦いになっちゃったwwwヤバいでしょwww」
「なんで笑ってられるんですか………」
「笑うしかないでしょ。死は救済が一般常識になった世界線に突入しちゃったんだもん」
「えぇ………それも全部魔力のせい、なんですか?」
「そう。ヤバいでしょ?」
思ってたよりも大変なことになってる………
パッとしなさすぎて何にも分からない。
「それで、地球がこんなことになって理由だけど、これは正直よく分かってない所が多い。俺らじゃ詳しい情報は入ってこないんだ」
「北原さん、ですか」
「アイツが第一人者だからね。この計画を立案したのもアイツだし」
「凄いんですね………あの人………」
「凄いさ………だからこそ、アイツは………敵なんだ。人類にとって、一番の」
「………………………………………」
敵。
あの人は、俺の将来。
俺は、何を思って、何をするのか。
怖い。
「魔力の正体も何となくしか分からない。人の願いや祈りやらの集合体みたいな感じだって前に言ってたけど、具体的な事はよく分からない」
「祈り………」
「話は、これくらいでいいか?」
「え、あ、は………いや、あと1つ、いいですか」
「……………………………………」
この世界に来て一番最初に疑問に思ったこと。
今まであまり教えてくれなかったけど、やっぱり聞きたい。
「俺は………俺はなんで、こんな場所に来たんですか?俺にある記憶は、前世の地球と、今いるこの地球しかない」
「生まれ変わったこの星は、魔力を増やす特別な場所として再利用されることになったことしか知らない。なぜ君が送り込まれたか分からない」
「じゃあ、その………俺は過去に何をしたんですか?俺は一体、なんなんですか?」
「…………………俺はね、君のこと、大切に思ってる。嫌いじゃないんだ」
「………は?」
「もう………ほとんど仲間はいないって思ってね」
「いや………あの………」
「………本当に聞きたい?」
「はい。もちろん」
「………………………………」
聞いて後悔するかもしれない。
それでも、気になる。
ただ知りたかった。
知って、一歩でも前進できればいい。
何も分からない。
そんな状態から抜け出したい。
無知なのは嫌だ。
「………白色生物はね、本来どんな方法を使っても倒すことは出来ない。自分自身でしか傷つけることが出来ない」
「…………?それって、どういう…………」
「昔、俺も参加した実験。白色生物の本体、その魂を人間の器に入れる実験。人間の管理下にある白色生物を倒せる人類の味方。そんな存在を作る実験」
「……………あぁ………そうか。」




