Episode 52 resoluthion
「これ以上は危険です!増援呼びます!」
「待て!今は事を荒立ててはいけない!交渉が失敗したらマズイ!」
「交渉?へぇ~いいこと聞いた」
この話が本当だとしたら。
この人数相手は厳しいが、何とか出来たら逃げれる。
「ロイド!」
「了解!」
この場を何とかすれば。
だがどうしようか?
どうすればここを抜け出せる?
「クラウス!行くぞ!」
「……ああ!行こう!」
何でも試そう。
思い付く限りのことを。
「ロイド、氷壁作ってどさくさに紛れて逃げれるか?」
「……分かった。やってみる」
凄い頼もしく感じる。
いつもの威勢はどこ行ったんだ?
「うおおらあああ!!」
ロイドは氷壁を連続で出した。
俺達が相手の視界から消えるように上手く氷塊を作っている。
俺も負けじと氷塊を作り出すが、高さが足りなかったりして上手くいかない。
やっぱりロイドの魔法の精密さは凄い。
「キエエエェェエエ!!」
「あっ………!」
ゼアドラが単独で突っ込んで来て、ロイドの氷壁作成の邪魔をされた。
ロイドが言うには、
一度魔法の発動を邪魔されたら、それまで発動した魔法全てが解除される。
これが魔法最大の弱点。
それまで作っていた氷壁迷路は一瞬にして崩壊した。
「今だッッ!!ぶちかませッッ!!」
ゼアドラ含む敵全員が一斉にこちらに向かってきた。
「くっ………こうなったらヤケクソだっ!!」
「あっ!バカ!!」
ロイドが何も考えずに高火力魔法をぶっ放した。
案の定目の前にいる敵は吹き飛び、案の定爆風に巻き込まれ、案の定煙は天高く登った。
「あーやっべ。めっちゃ人来そう」
「………悪い。そのこと考えてなかった」
「アホ」
「煙で相手は私たちのこと見えて無いはず。今のうちにどこかに逃げ込みましょ」
「確か倉庫はこの先だよな。あそこ広いし丁度良いか」
「お前のせいだって忘れんなよー」
「なんで倉庫に……機械があんだよ………」
「うわっ!おっきい機械……なんでこんな所にあるんだろう」
そこには倉庫の大半を占めるほどの巨大な機械があった。
俺が知っている機械だ。
「転送装置?何で今ここに?」
なぜこんな所に転送装置があるんだ?
それに、やけに新しいというのが俺でも分かる。
ここに設置されたのはいつ頃だ?
それにこの形状。
アルケニアにあるものと全く同じだ。
エルドさん達の所にある転送装置とはまた違う。
「あれ?これ、いつ頃設置されたんだろう?」
「え?知らないんですか?」
「え?えぇ……少なくとも、1週間前まではこんなもの無かったはずだけど……」
1週間前?
想像してたより最近だった。
「俺、知ってるよ。ほら、ラインって奴だよ」
「………ラインさん?」
「ああ、昨日家に来て話しているのが聞こえたんだ。ほら、お前と話した後のこと」
ラインさんがいるのか?
さっきの交渉ってまさか………
「ごめん、俺、行かなきゃ」
「は?今逃げるの優先だろ!?」
「いやだって、でも………俺は……行きたいんだ。聞きたいんだ。色々と」
「ああそうかよ!勝手にしろ!」
怒らせてしまったか。
当たり前か。
「すぐ………すぐ、だから………!!」
『会いに来なくて良いぞ』
「…………!?ラインさん!!どうして!?」
サーディアからラインさんの声が聞こえてくる。
だが一体、どうして?
『一応、同じ“サーディア”だからな。通信くらいはできる』
「あ、そっか。だからか」
『随分暴れてるみたいじゃないか。相変わらずだな』
「ラインさん!聞きたいことがあるんです!エリスは………父さんは今どうなってますか!?無事ですか!?」
『無事………とは一応言えるな。状況が状況で、今なお無事なのかは断言できないが』
「え?今そっちではどんな状況なんですか!?」
『なんて説明すればいいか。一種の戦争みたいなものと考えてくれ』
「……は?どういうことですか?」
『俺もよく分かんないんだよ。戦いも始まったばかりだし。今は少しでも資材やら人材やらが欲しいって状況だ』
よく分からないって何?
戦争なら戦争と言えばいいのに。
『だから絶対にこの交渉は失敗できない。もう数日ここにいると思う』
「数日……?」
『クラウス。そこにある転送装置を起動すれば、アルケニアに帰れるぞ』
「………は?」
帰れるのか?
これを使えば。
「でも俺はまだここにいなきゃダメなんです。どれだけ時間が掛かろうとも、ここを何とかしたいんです」
『………分かった』
自分から通信を切った。
行かなきゃならない。
まだ、ダメなんだ。
「………ごめん。行こう」
「ようやくか。そろそろ敵に気付かれる頃だしな」
アストさんがいる所はどこか?
分からないが、ひとまずアジトの方へ行ってみる。
アジト自体は破壊されたはずだけど、近くにまだいるのかもしれない。
もしかしたら、下界にいるかもしれない。
「近くに敵はいないな。出口はこのまま真っ直ぐ。よし」
「……?」
ロイドが両側に氷壁を作り出した。
「早くこの中に入って。入ったら閉じるから」
「はー便利だねー魔法って。私は使えないけど」
俺もこのレベルまで到達する気がしない。
本当に凄い。
「ほら早く行くぞ」
「あ、うん」
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「敵は?誰も追って来てないね?」
出口を抜け、アジトの近くにまで迫っているが、敵が近くにいる様子はない。
チャンス。
敵はまだ、俺達があそこにいると勘違いしているのだろう。
「アジトはこの店の地下!急いで!」
にしても変だ。
アジトは破壊されたんじゃ?
アジトの近くにいるのではと思ったが、まだアジトに人がいる可能性が出てきた。
「えっと、確かこれをこうしてこうしたらエレベーターが起動して―――」
ガコンと聞こえ、何かが作動した。
「何も変わってないけど?」
「ここに乗ると地下に行くんです。とりあえず3人ずつ行きましょう。地下に降りたらボタンを押してください」
「………?うん、まあ分かった」
………あ、そうか。
ここではボタンなんて言葉無いんだっけ?
まあでも分かったみたいだし、大丈夫だろう。
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結局追手は来てないようだ。
「来たみたいだぞ」
「分かった。じゃあ乗るか」
当然俺達が最後に乗ることになった。
エレベーターに乗って、地下へ行く。
「あ、どっちのボタンを押すか言うの忘れてた!」
2つボタンがあり、もう1つを押してしまうと、エレベーターはただの床に早変わりしてしまう。
だが1発でどっちを押せばいいのか分かるとは運が良い。
「結果オーライ、か。運良くて助かった」
「運が良いんじゃないよ」
「え?あっ!スコールさん!」
「よっ!待ってたよ」
スコールさんがいるとは驚いた。
だからどれ押せばいいのか分かったのか。
「にしても結構連れてきたね。想定外だよ」
「スコールさんはどうしてここに?」
「いやぁ~アストが『あの子達来るみたいだから助けてあげて!』ってさ」
「アストさんが?なんで分かったんですか?」
「さぁ~それは教えてもらえなかった。アストは下界にいる。さ、早く行きな」
そう言ってスコールさんは転送装置をを起動した。
下界に繋がり、穴の奥にはアストさんやソアラさん達が集まっていた。
「ほら来たろ?俺の言う通りになるんだって」
「マジか………」
「皆さん早くこちらへ!」
穴の奥にいる人達が手伝ってくれるようだ。
「じゃあ早く穴の中に入って下さい!」
「え?これ、大丈夫なの?」
「赤ちゃんもいるんだけど………」
「ダイジョブダイジョブ。ほら入って」
そう言ってようやく穴の中に入っていった。
そして、穴に入ったのが2人目になった頃、音が聞こえた。
「何の音だ?」
「エレベーターだよ!ほら、ウチの奴加圧式で自動で下がっちゃうんだよ!」
「嘘だろ!?他に人がいるようには見えなかったのに!!」
「早く入れ!早く!!」
急がないとマズイ。
あと8秒あるかどうか。
「ほら君で最後!!」
俺の番になり、穴を通って下界に移動した。
「スコールさんも!早く!!」
「……………………………………」
「スコールさん?」
「じゃあ誰が、この機械ぶっ壊すのよ……」
「………え?」
何をするつもりなのか、分かってしまった。
「動くな!!」
「来たなァ?」
「スコールさ―――」
穴は閉じられてしまった。
声は最後まで届かなかった。
--スコール視点--
「動くな!!」
「…………………」
「こっちに顔を向けろ!!」
「なあ」
「?」
「これなぁ~んだ?」
「………!!みんな逃げ―――」
--クラウス視点--
「反応が消えた。これは………爆発でもしたか?」
「自分諸共、か………」
スコールさんも、死んだ。
スコールさんがいなかったら、俺は………
「…………………!アストさん!」
「どうした?」
「話を、しましょう」
「そうだね。そのつもりで来たんでしょ?」
この人、どこまで知っているんだ?




