3話 決意
「ハァ……ハァ……」
走っても走っても追いかけてくる。
「あった!ここから逃げれば!」
こんな目に合うなんて思いもしなかった。
「エリス!大丈夫!?」
こんなことになるなら、こんな世界に転生なんてせずに、そのまま―――
「来てるぞ!早く走れ!」
何かが壊れる音がした。
大きな足音が連続して聞こえてくる。
「もっと早く……!速度を落とすな……!」
エリスがいるんだ。
唯一残った家族が……!
「ハァ………ハァ………もう……嫌だ。」
「撃てーーッッ!」
直後、銃弾が頭上に飛び交う。
「総員突撃!近接班は大型を討伐次第 小型の討伐、射撃班は小型の討伐、魔術班は近接班のサポートに徹せよ!」
そして、魔物が倒されるのを眺めた。
-------
「旧ホイルア領にいる魔物は掃討されました!」
「「「「うおおおおお!!」」」」
「良かった……良かった……」
「家に帰れるのかな!?」
「………………」
数日が経ち、突如出現した魔物は全て倒されたという情報が入って来た。
反応は様々だった。
あの後、世界中の国々が俺達難民の支援をしてくれている。
俺達は今、アルケニアの避難キャンプで暮らしてる。
アルケニアは世界で1,2を争う先進国だ。
多分大丈夫だろう。
「ほらエリス、今日はカレーだってさ。行こ?」
「………うん。」
たった1日で今までの生活が全て消えてしまった。
エリスには心配を掛けたくないから明るく振舞ってるつもりだが、それでもダメだった。
「君が“クラウス・アレリウス”、そして“エリス・アレリウス”かな?」
「……はい。そうですが、何か?」
「君のお父さんの……死体が見つかった」
ああ、やっぱりか。
「一応これだけが残っているが…… 見たくないならそれでいい」
そう言いながら、箱を渡してきた。
箱の形から、何が入っているか気付いてしまった。
けど、恐る恐る開けてみる。
「…………!」
中身が見えた瞬間、すぐに箱を閉じた。
箱の中に入っていた“腕”が父さんのものなのかを確認せずに。
「……君のお父さんの葬式があるんだ」
「葬式?」
「君のお父さんは元冒険者で、英雄として世界中から評されていた。そんな方が亡くなったんだ」
「…………………………」
「……こんな時期に悪いとは思うが、君達も出てほしいんだ。君達はメモを読むだけでいいから」
出ないという選択肢があったはずなのに、何故だかそれを選ぶことが出来なかった。
そんな感覚だった。
「………分かりました」
「私は……やだ」
「……僕が代わりに読みます」
「分かった。そう伝えておくよ。明後日の15時からを予定しているんだけど、大丈夫かな?」
「大丈夫です。もう予定なんてありませんから」
「………すまない」
「いいですから。もう……」
「…………これが、そのメモだ。大変な時にすまない」
-----
13時頃、迎えが来た。
その人についていき、着いた先でメモの内容を再度復唱する。
正直あんまり練習してないけど、まあ大丈夫だろう。
「この度はお集まりいただき、ありがとうございます。冒険者として魔物を戦い、小さかった結界の領土をここまで広げたルーク・アレリウス、彼がいなければ世界はここまで発展しなかったはずです。」
そう言って、動画が巨大なスクリーンに映し出された。
俺が知らない、英雄としての父さんの映像が流れた。
それを見て泣く者もいた。
俺の知らない……父さんを見て。
「……………………」
「そろそろ出番だ。頼むぞ。じゃあこれ」
そう言って、マイクを渡された。
「分かりました」
「では、ルーク・アレリウスの息子、クラウス・アレリウスのお別れの言葉です」
「え~こんにちは。わざわざお集まりいただきありがとうございます。上手く言える自信が無いので、ここからはメモを読ませて頂きます。
(母さん。ご飯まだ~?)
僕の父はとても偉大でした。どんな時でも優しく、悩みがあればいつでも相談に乗ってくれたりしてくれて、立派な父親だったと思います。
(ハイネ!これ見た?滅茶苦茶面白いよこの本!)
そんな父が亡くなったのは本当に悲しいです。ここ毎日また会いたいとずっと思っています。死んだ父の分まで―――
(父さん!それ俺のなんだけど!勝手に食べないでよ!)
………………」
「…………?」
「どうしたんだ? 突然黙って……」
メモの最後にあった言葉に違和感があった。
違和感はやがて、怒りに近い感情へと変わった。
「父さんだけじゃない……母さんも友達も!知ってる人みんな、皆死んだんだ!死にたかったわけじゃないのにっ!
なのに死んだ人の分まで生きるなんてそんな……そんな卑怯なこと!言えるわけないじゃないですかっ!」
ああ、やっぱり受けなきゃよかった、こんなの。
同情して泣いてる奴もいる。
頭では分かっていても、それが無性に腹が立つ。
………………………………
……………… ……………
……………… ………………
迷いがある。
けど…………
…………父さん
「………! 俺は!冒険者になります!誰も死んでほしくありません!」
涙を枯らし、マイクを使わず叫んだ。




