Episode 44 Small Resistance
「お前なァ!なんてことをしたんだ!!どこまで話したんだ、お前は!!」
「アレリウス家の一族であること、古代文字が分かることもバレました」
「ふざけるな!お前が証明書なんて落とすから!!」
「いや、落としてなかったらケアラすらも助けられなかったかもしれませんよ」
「あの悪魔、ゼアドラがいたのが確認出来ました。偽造なんて速攻でバレて終わりだったかも」
「……だが…………くっ………」
これは俺が悪い。
否定しない。
しかしまあ、ゼアドラって奴はそこまで凄いのか。
今後が大変になりそうだ。
「無関係な人まで巻き込むんでしたら、俺は一部の指示を聞きません」
「お前………!」
「俺の目的は、俺の親族と接触して母さんについて話しを聞く。そして、あるものを探す。この2つだけです。恩を仇で返すつもりはありませんが、一応言っておきます」
「まあまあ。あなただってこの子が言いたい事分かるでしょ?」
「そうですよ。私たちはこの世界の人達を助けたい、子供が幸せに生きていける世界を目指して活動しているんですよ?」
「言いたいことは分かる。だが、無理なのは分かるだろう?」
エルドさんはすぐそういうことを言う。
厳しいのは分かるが、可能な限り何とかしようともしているか怪しい。
採掘場全てを破壊するんじゃなく、巨大なドリルだけを破壊するだけでもよかったはずなのに。
「………すまない。言い過ぎた。だが1つ、言っておく。夢は現実を知らないと見られない。お前の見ている現実はどうか、それを考えてくれ」
そう言ってエルドさんはどこかへ行ってしまった。
エルドさんが言いたいことは分かる。
だが、あの人は何か違う。
具体的に何が違うかは言えない。
ただ、テロ行為をする理由。
世界のためだとか、そんなんじゃない気がする。
「大変、だったよね。今はゆっくり休んで」
「ありがとうございます。そうしますね」
そもそも、テロ行為自体ダメなことだ。
それは分かっている。
だが、武力以外で解決する策は無いのか?
前世では、国民が一番力を持っていた。
………少なくとも、法の中では。
「あの、他の人はどこにいるんですか?知らない人だらけで、知ってる人を逆に見ないんですけど」
「………上層に行けば行くほど、原生生物は強くなっていくってのは知ってるでしょ?」
あぁ、そういうことなのか。
じゃあ今いない人は、もう………
「あ、そうだ」
「………?」
「病院行ってきな。本来行くべきところだった方の病院」
「ああ、大丈夫ですよ。何ともないです」
「とりあえず行ってきなさい!」
結局、半強制的に行くことになってしまった。
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「いやー大変だったねー。聞いたよ。いきなり捕まったと思ったら、拘束されてる場所が丁度採掘場だったから予定を早めて作戦始まっちゃったんだってね?」
病院に着くと、いかにも優しそうなお爺さんの医者がいた。
一見普通の病院だ。
裏ではテロ組織と繋がってるんだから怖い。
「そうみたいですね。俺はあまり人を巻き込みたくなかったんですけど」
「うんうん。全部聞いたよ。そんで、そろそろ本題入るとして……右腕に虫の卵が結構あるね。このままだと孵化して―――」
「イイイィィィ!言わなくていいですからそんなこと!」
「そんで、焼くか凍らすかどっちがいい?」
「………どっちがオススメですか?」
「どっちもどっち。自分で選びな」
「えぇ………」
「光を照射して焼き殺すか凍らして一生孵化しないようにするか」
「………じゃあ、焼く方で」
「りょーかい。ああそれと、まだ君には言ってなかったけども」
「なんですか?」
「ケアラさん、亡くなったみたい」
………え?
結局、死んでしまったのか?
「聞いた感じ、確かに厳しそうだねぇ。あそこの病院、設備だけはいいから大丈夫かと思ったけど。腕は僕の方が上だけど」
ダメだったのか。
結局、助けられなかったのか。
「じゃあ説明を始めるけどね―――」
その後の話は何も入ってこなかった。
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「戻ってきました」
「おかえりなさい。ここら辺人通り少ないから大丈夫だと思うけど、どうだった?誰かと会わなかった?」
「ソアラさん………」
「ん?」
「ケアラさん、死んだって………」
「あー、うん。そうらしいね」
「そうらしいって………恋人同士とかじゃなかったんですか!?」
「実感、湧かないんだ。ごめんね」
今この場にいる中で知っている人は、5割もいるかどうか。
俺は色々すっ飛ばしてここに来たけど、普通に来たらこうなっていたのか。
「皆さん!出来ましたよ!」
突然、奥の部屋から声が聞こえてきた。
「完成したんだって。見に行く?」
「何をですか?」
「転送装置。下界と繋がってるんだよ」
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「ババーン!古代文明を解析したカリアンさんとアストさんのおかげで完成しました!転送装置!」
沢山の人に紛れて、俺も転送装置と呼ばれるものを見た。
何となく気付いていたけど、やっぱり間違ってなかった。
俺の世界にある転送装置だ。
「早速、動かせるか?」
「もちろん!」
その人は、近くにあった操作盤にあるボタンやらを色々触り、転送装置を動かした。
そして、ゲートが開く。
ここも、俺が知っているものと同じ。
「ん?あっ!完成したんだ!」
「え!?ミリア!?」
「久しぶりだね!」
ゲートが開いたと思ったら、出てきたのはルクスリアの下にいるはずのミリアだった。
まさか最初に会う人がミリアになるとは思わなかった。
「流石スコール。機械系は何でも使えるな」
「そりゃ俺天才ですから!こういうの作るのも簡単ですよ俺にとっては!」
「その調子で頼むぞ」
「もちろんです!」
「じゃあ!飯喰おうか!」
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「大勢の仲間が死んだ。だが、我々は忘れない!俺達が安心して暮らせる世界に変えていこうではないか!」
「おおおおおおおおおおお!!」
「そのためにも、アレリウスの一族を殺すか奴隷にしてやるんだ!俺達と同じ苦しみを味合わせてやるために!!」
「おおおおおおおおおおお!!」
………ああ。
やっぱり、価値観も考え方も何もかも違う。
「………ミリア、下の様子、今どうなってる?」
「戦争が始まっている。ウチは田舎過ぎて狙われないけど」
「はぁ………」
「まあ、ルクスリアの調査隊の精鋭が多くいる場所だし、簡単には狙えないってのが一番の理由だと思うけど」
エルドさん達がこれまでどんな生活をしていたかは知らない。
けど、他に方法はあるはずだ。
………いや、他に方法はあったとしても―――
「やっぱり、どんどん人が死んでく」
「人を助けたいって言ってたもんね。凄いよ。私は、助けたいと思っても、怖くてできない。なんでそんなに人を助けたいの?」
「………正直、前は憎しみとか苦しみからの解放とかばっかり考えてた」
「へぇ~意外」
「けど今は、俺みたいに苦しい思いをしてる人を減らしたい。それに、俺がそこにいればその人を助けられたのにって思いたくないから。結局、人助けの理由は自分の為になるけど」
「それでいいと思う。私には、とてもできないことだし」
「俺も、前はそうだったよ。自分がこう思うなんて思わなかったけど。動機が憎しみだったからなのかな」
「それでも凄いよ。死ぬかもしれないのにそんなこと。………怖く、ないの?」
「死ぬこと自体は怖くないよ。怖いのは仲間を失うこと。あと痛いのも………あ、いや。そういえば、痛いのも苦しいのも、あんまり怖くなくなってるな。そんなに嫌でもない。いつからだろ」
「………………やっぱり……怖いよ………」
--ゼアドラ視点--
「というわけで、ギリギリでしたが、何とか手術自体は成功しました」
「コイツはまだ生きてると」
「はい。予定通り数日後に覚醒させますか?」
「ああ。頼む。
………ケアラ・マグワイア 23歳、か。起きた時には、色々質問をするとしようか」




