Episode 41 Rebel
痛い。
痛い痛い痛い。
それでも潰れた右手は治ってしまう。
「にしてもすごいねぇ~。こんなにも治っちゃうなんてねぇ~。そろそろ爪、剝がしちゃいます?」
「まだやるんですか?多分この子吐かないと―――」
「今言おうかどうか迷ってる。そうだよね?」
突然顔を近づけて言ってきた。
本当にこの人には俺の考えが全て見透かされてる気がする。
「爪全部剥がしても吐かなかったら次は指チョンパ。楽しみぃ~」
指を切られると恐らく再生はしないだろう。
以前両腕を失った時、両腕は再生せずに皮が被っている状態だった。
俺のこの体質は再生能力ではなく治癒能力の向上だろう。
体質と言っていいレベルかどうかは分からないが。
「ほれほれ~。話さないの~?いいの~?」
前世のこと、言ってしまおうか。
ただ、言ってしまったらどうなるのだろう。
前世の情報を今の世界の人に与えるのは危険だと思う。
だから言わないのがいいのは分かってる。
「ほら吐け吐けぇ〜。次に進んじゃうぞ?」
けど、考えしまったんだ。
話そうと思ってしまった。
まだ話してはいないが、大勢の人が死ぬ道を選んでしまうかもしれない。
俺は前世と今、どっちが大切なんだろう。
何のために生きているのだろう。
………いや、そんなに生きることが重要なのだろうか。
「んで、その左腕の奴、まだ取れないのか?」
「数人掛かりで取り外そうとしてますが、取れる様子はありません」
「じゃあ3つ目の質問だ。左腕のこれは何だ?」
「……………………………」
「聞いてるか〜おいぃ〜?」
「あっ、はい。左腕のは何だか良くわかんないんです。いつの間にかついていたもので」
「……嘘では無い、か」
分からないことだらけ。
俺はずっと、こんなよく分からない世界を、人を守り続けて、何がしたいんだろう。
……よく分からなくなってきた。
「って……」
さっきの左腕の話を聞き、自分の左腕を見て気がついたことがある。
このガントレット型の機械に描かれている模様。
これは北原さんからもらった、あの剣にも同じものが描かれていた。
そういえば、あの剣は今どこにあるんだ?
最後に持ってたのは……
確か、ここにくる前、大穴に落ちた時だったか。
ケアラさんを運ぶ直前には確かもうどこかへ消えた。
大穴に落としたのか?
いや、それだったら既に見つけているはずだ。
〜〜〜
「恐らくあれはただの剣じゃない!剣として以外に何かあるはずだ!」
〜〜〜
俺は、ガリアンさんが最後に言っていた言葉を思い出した。
剣として以外に何かある。
まさか、あの剣はこの左腕に付いているものに変形したのか?
とすると、あのコウモリみたいな生物を消し飛ばした謎の光はこの機械から?
あの謎の光が出た時、魔力を放出した感覚と非常に似ていた。
だとしたら……!
「うっ、何だこの光は!!」
魔力をこのビームみたいな奴にしてぶっ放す!!
「うわぁっ!」
想像以上に威力が強かった。
後ろに吹き飛び、壁に激突してしまう程に。
だがそのおかげで拘束されていた椅子が壊れた。
「これで逃げられる!」
「アイツを取り押さえろ!この場所が破壊されたらマズイ!」
とは言ったものの、どう突破しようか。
狭い場所に10人くらいの人。
もう少し時間が経ったら応援が来て危なくなる。
取られた荷物も回収したいし、一体どうしようか。
父さんも、仲間すら今はいない。
誰かに助けてもらおうなんて考えない。
「動くな!」
誰かがそう言うと、全員が一斉に銃を取り出した。
だが、これで本当に言われた通り動かない。
そんなことあるわけない。
左手を真上に向ける。
あとはもちろん、天井を壊すつもりで本気で放つ!
「ヤベェ俺ぶっ放してばっかじゃん。脳筋じゃん俺」
だがこれで天井は崩れ、さっきよりは十分広い部屋へと繋がった。
すぐに跳び上がり、開いた穴を通って新しい場所に移動した。
「何だコイツは!?」
「そのガキを止めてくれ!」
「え?りょ、了解!」
あの爺さん余計なこと言うなよ。
どんどん人が来てしまう。
「あっ」
俺の荷物を持った人を見つけた。
丁度荷物が金庫に入れられそうになる所だ。
「それ俺の!返せ!」
荷物を持ってる人目掛けて飛び出した。
もちろん、身体強化魔法を使って。
「よっしゃ!回収!」
幸い奪われた荷物は全て袋の中に入っていたようだ。
じゃあ後は逃げるだけ。
「絶対捕まえろ!」
「逃げ切りますよ!べぇーだ!」
近くにあった扉を勢いよく開けた。
俺がいる場所は、どうやら随分と特殊な場所だったようだ。
真ん中には穴があり、上にも下にも通路がある。
雰囲気は工場のようで、最下層には緑色の謎の液体が貯まっている。
構造だけで言えば大型のショッピングモールと非常に似ている。
ただ、最下層にある液体を見るだけでも危険な場所なのはわかるが。
「あれ?なんでこんな所に子供がいるんだ?」
「やだ!あの子剣持ってる!」
一般人もいるのか?
マズイ、目立つ。
今はすぐ逃げないと。
『武装した5名が侵入しました。各員、ただちに採掘場から焦らず速やかに逃げてください。尚、剣を所持している15歳ほどの少年を見掛けたら捕獲、報告してください』
他にもいるのか?
もしかしてエルドさん達じゃないか?
「剣を持ってる少年……」
「あの子じゃね?」
やっべ。
逃げないと。
……あ、そうだ。
もらったサーディアでエルドさん達と連絡取ってみるか?
いるなら合流しておきたいし。
袋からサーディアを取り出し、耳に装着して電源ボタンを押す。
すると、起動してすぐに何かが見えるようになった。
熱センサーも搭載されているようで、周りに人がどれくらいいるのかが分かる。
『ディゴード:ガントレットの存在を検知。描かれている模様を視界に入れてください』
突然機械音声のようなものが聞こえてきた。
ディゴードってなんだよ。
って思ったけど、模様って言ったよな?
なら、この左腕にある奴だと思うが……
言われた通り、描かれている模様を見てみるか。
『認証成功。対人戦闘、ロック解除』
何それ凄い。
もしかして俺専用のモードなのかな?
『ディゴード:レプリカの電撃攻撃を即死に設定しています』
「え?即死はダメって!設定のし直しってどうするんだ?」
『即死設定を解除しますか?』
音声認識なのか?
「即死設定解除で」
『即死設定を解除しました』
やっぱりそうみたいだ。
他に何ができるのかな?
逃げ切ったら試してみよう。
今やるべきは―――
「ええっとどうやって連絡するんだ?なんかUIまで変わってる……これか?」
少々分かりにくくなっていたが、それらしいものを見つけた。
「あーあー。もしもし、聞こえます?」
『その声、クラウスくんかい?』
誰だ?
聞こえてきた声は覚えがない。
知らない人か?
だが、俺のことを知っているからエルドさんの仲間なのか?
「そう、ですが……あなたは?」
『それは後。今から僕の指示通りに動いてね』
「分かりました。その前に1つ聞いていいですか?」
『何?はい か いいえで回答できる質問なら』
聞いておきたい。
何となく分かったけど、答え合わせをしておきたい。
「あなた達って、テロリ……国家転覆でもするつもりなんですか?」
『そうだ。まだ言うつもりはなかったけど』
間も開けず、すぐに回答が返ってきた。




