Episode 40 Shame・Fear
「……尾けられてるな」
「え?」
まあさっきのやり取りからして尾けられる理由は分かるが……
だが何故あんな意味不明な会話をしたんだ?
強引に連れ出しても良かっただろうに。
「とにかく行くぞ。あとで色々と説教してやるからな」
「すみません……」
俺がカードなんて落としていなかったら……
……いや、落とさなくても結果は一緒だった、
そんな気がする。
「ところでお前、その腕どうした?」
「腕?」
そう言われて自分の左腕を見てみると、ガントレットのような機械が装着されていた。
見たこと無いものだった。
そんなものが気付かないうちにくっついていたとは。
一体いつから?
「自分でも分からないです」
「そうか、分かった。とりあえずついて来い」
一体何をするつもりなんだ?
どうやって逃げるんだろうか。
「あっ!ごめんなさい!」
「すみま―――」
誰かとぶつかってしまった。
すかさず俺も謝ろうとしたが、違和感に気付いた。
「バレないように取り出して付けるんだ」
そう言われて初めて気づいた。
ポケットの中に何かが入ってる。
さっきぶつかったのは仲間なのか。
しかし、ポケットの中には一体何が入っているんだ?
付けるって何をだ?
そんな時、丁度角を曲がった。
今この瞬間なら取り出してもバレない。
「これって……」
ポケットの中に入っていたものは、見覚えのあるものだった。
俺がいた場所で使われていた通信機、サーディア。
急いで耳に装着し、電源ボタンを押した。
素材も柔らかいものになっていて、俺が知っているものより小さくて軽い。
「バージョン……3.7.0?」
映し出された画面の右下にはそう書かれていた。
俺の知っているものより新しいものだろう。
だが何故こんな所にあるんだ?
そんなことを考えているうちに数秒が経ち、画面が切り替わった。
このザクトリアの地図のようだ。
地図に青色で矢印が掛かれている。
恐らくルートが示されているのだろう。
とすると、この矢印通りに行けばいいのか。
ただ、薄い赤色で書かれている矢印がある。
これは一体何だろうか。
「またな」
小声で聞こえてきた。
周りを見ると、エルドさんがどこかへ行った。
「ちょっ―――」
が、すぐに気付いた。
エルドさんが向かった方向は、薄く書かれた矢印の方向だった。
2手に分かれるのか。
--エルド視点--
2手に分かれて、あの子を安全に移動させる。
怪しむとしたら俺の方なはず、だが……
気配が消えた。
違う。
2,人か3人いた尾行人が全員別の場所へ向かった。
まさか、全員あの子の方へ行ったのか?
アイツどこまで喋ったんだ?
アレリウス家であること喋ったんじゃねぇだろうな?
今は、アストから借りた通信機を使って連絡しなければ。
「俺だ。尾行してる奴が全員クラウスの方へ行った。多分あの子色々話しちまった」
『うわマジすか!?ぬわ~遅かったかぁ……すんません。もう少し早くどこにいるか特定できてれば』
「いいからお前はその機械使って何とかしとけ」
『もちろんです。せっかくステラさんの願いが果たせそうなんですから』
「……その話はいい。それで、あの子は今どこに?」
『もちろん調べてあり―――あっ……』
「どうした?」
『多分もう通信機どっかに捨てられてます。位置が全く動いてないです』
「そうか………あ?おい、今日祭りの予定なんてあったか?」
『なんでですか?』
「人が凄い集まってる。誰が誰だか分かんねぇ」
こんな人が多い中、どうやって見つければいいんだ?
--クラウス視点--
「静かにしてろ。今から俺の言う方向へ行け」
背中に何か突き付けられた。
銃だろうか?
誰かが大量に金をばら撒いたせいで人が集まってる。
派手な動きでもしたら他の人が撃たれるかもしれない。
今は言う通りにしないと。
「ここに入れ」
「……………………」
どこかに通じる扉に入った。
扉に入るとすぐに目隠しをされた。
同時に荷物も全て奪われた。
扉の先は地下に繋がっている事しか分からなかった。
---
「来たか……」
この声、さっきのお爺さんだ。
確か名前は、ゼアドラだったか?
そのすぐ後に椅子に座らされ、手足を縛られた。
「もう外していいぞ」
その言葉が聞こえた直後に目隠しは外された。
今俺がいる場所はどこかの地下室という情報しか分からない。
「色々と聞かせてもらうぞ。なぜアレリウスと名乗った?」
「………それが名前だから」
「じゃあ両親の名前は?」
「ルーク・アレリウスとソティス・アレリウス」
「ソティス……なるほど。生きていたか」
「5年前に死にましたよ」
「そうかそうか」
「アレリウスって何だ?俺はあまり詳しくないからよく分からないんだが、そんなに重要な一族なのか?ならもっと丁寧にもてなせよ!」
「嘘かどうか分からないからな。だがまあ、教えてやろう」
教えてくれるのか。
何も教えてくれないよりはマシか。
少しでも多く情報は手に入れとかないと。
「アレリウスとは大昔、人体実験によって生み出された一族。実験により身体能力が通常と比べて大幅に強化されている。その能力を使い、聖戦直後にルクスリアを乗っ取った。今なお裏で政治を動かしてる一族よ」
なるほど。
それならエルドさん達の行動には納得がいく。
そうか。
あの人たちはここに来て、やることが何かが分かった気がする。
「もう1つ、何故お前は古代文字である英語を知っているんだ?」
「………!?」
なんでバレてるんだ!?
なんで!?
まさか、あの中に内通者でもいるのか!?
「どうなんだ?」
「…………………………」
「答えないのか。よし、誰か金槌持ってこい」
金槌を持ってきて何をするつもりなんだ?
「持って来ました」
「よし。言わないのなら……こうだッッ!」
「うぐっ……!!」
金槌を手に向かって思いっきり叩きつけられた。
「痛っ………!」
「痛いよなぁ………でもこの痛みから逃れる方法、あるんだよなぁ~?」
言えない。
前世の記憶を引き継いでるなんて言えるわけない。
「んん~?なあお前ら、俺思いっきり叩きつけたの、見てたよなぁ~?」
「はい。手が潰れる程勢いよく叩きつけてました」
「だが見てみろ……手が治ってやがる、コイツ」
その言葉を聞いて、俺も確認した。
確かに治っている。
何事もなかったかのように。
魔物に太ももの肉を喰われた時と同じだ。
傷がすぐ治る。
「面白いッッ!!面白いぞ貴様ァァァァァッッッッ!!!」
「痛っ……うがぁっっ……!!」
連続で手を叩き潰そうと何度も金槌を振り下ろす。
「治るッッ!!治っていくッッッッ!!素晴らしいィィィッッッッ!!」
「ひぐぅっっ…………!!やめ…………がぁっ!!」
「んほ~~~~!!!脳汁止まらンンンッッッッ!!!」
痛い。
痛い。
もういっそ、前世のことを吐いてしまおうか。
………クソ。
言いたくない……




