Episode 39 Lie
「緩まないようにしっかり紐結び付けたぞ」
紐で俺の体とケアラさんの体をしっかり結ぶ。
これで準備完了。
あと4分30秒。
間に合ってくれ。
「もう一度言うが、このらせん状の坂の真上に登ったら湖がある。そこを乗り越えたら門を通じて入って奥の方にある病院に行く。間違っても違う病院には行くなよ?分かったな?」
「はい!」
失敗は出来ない。
「ほいこれ。絶対無くすなよ?」
「分かりました」
そう言って渡されたのは、ザクトリア人証明書と書かれているカードだった。
恐らく偽造だろう。
「ごめん。俺が行けたら―――」
「アストさんはいいですから、そこにいる奴全部倒しちゃってください!」
絶対に死なせない。
周囲にある魔力を体内に溜め込む。
「……行きます!」
慎重に。
集中。
「はぁぁっっ!!」
溜めた魔力を全て自分の跳躍力に変え、何十mほどの高さまで跳んだ。
「イッッ……」
やっぱり身体強化を使った全力はまだ早いか?
でも今は痛いなんて言ってる暇もない。
「もおいっちょおおお!!」
時間の間隔を開けず、もう一度大きく跳ぶ。
跳ぶのはまだ2回目だが、もう頂上が見え始めた。
だが見えただけ。
届かなかった。
「クソッ!届かねぇ!落ちる……!」
遂に、壊れるのを恐れて使わなかったシュワイザーを使ったので、落ちずに壁に張り付いた。
体を揺らし、着地できる地面目掛けて跳んだ。
「っと……体力的に身体強化はあと1回くらい……」
あと1回。
どうせあとちょっとなのだから走って登り切る。
50秒が経ち、頂上に到着。
残り3分。
そして頂上では湖の景色が広がる。
ここを超えればザクトリアに着く。
向こう側まで大体40mほど。
早くしないといけないけど、焦っちゃダメだ。
焦らず、慎重に。
「………!!いっけええええええ!!」
届け……届け!
残り10m、5m。
あと少し、あと少し……っ!
「……!届い―――う、うわぁっ!」
届いたと思ったが、奥にあった滝に落ちてしまった。
「滝あるって聞いてねぇぞおおおおおお!!」
再びシュワイザーを使用して何とか上手く着地、したが―――
ガンッという音が聞こえ、全てを察した。
「クソッ、シュワイザーが壊れた……!」
その後は言われた通りの道を進む。
近くに生物がいると小さくなる植物
光り輝く謎の虫
青色の葉っぱをした樹の数々
どれも登って来る過程で見たものばかりだ。
「ハァ………これ……ほんとに道合ってるのか……?」
若干不安になりつつも、エルドさんから聞いた話を信じて走る。
「あ……あれか!」
見つけた。
斜面にいくつもの建物が並んで出来た特殊な街、ザクトリア。
目的地が見つかれば、あとは全力で走るだけ。
「頼む……間に合ってくれ……!」
街にたどり着くまで30秒、1分、どんどん時間が過ぎていく感覚があった。
それでも走る。
沈みゆく太陽の10倍の速度で走ったメロスよりも早く走る。
しばらく走ると、何かが見えてきた。
「あれは……門?」
「ちょっと!そこの君!止まりなさい!」
門番らしき人に止められてしまった。
今はそんな時間が無いってのに。
「大変なのは見てわかるが、カードを提示してもらいたい」
「え?カード?あっ、確か……」
確か偽造したカードがあったはず。
えっとこのポケットの中に―――
「……無い」
マズイ。
どうしよう。
無くしてしまった……
「すみません!無くしてしまって……」
「じゃあIDと名前だけでいいから」
「名前はクラウスで……IDは……」
「……言えないのか?あのなぁ、お前らみたいな下界人を~~~」
何なんだコイツら……
腹が立つ。
「まあ、そういうわけだから―――」
「ふざけんな!カード無くしたって言ってんだろ!今そんなことしてる場合じゃねぇの見てわかるだろ!?万一、この人が死んだらどう責任取るんだ!?」
「しかしこの場所に下界の者を入れるわけにはいかないのは分かるだろ?」
「そんなくだらない考えで人を見殺しにする気かよ!?」
「だが……」
「いいじゃないかアラデルくん。私が付き添おう」
いきなり50,60代くらいのお爺さんが出てきた。
「え?いいんですかゼアドラさん」
「子供相手だ。優しくしてあげないとダメだろう?坊主、今から腕のいい医者がいる病院まで連れてってあげるよ」
「あ……ありがとうございます!」
「お礼なんて言わずに、ほら。一刻も早く急いだほうが良いよ?」
良かった。
優しい人が来てくれて助かった。
「すぐそこにある病院だ。焦って事故にあわないよう気を付けて」
「ありがとうございます!」
すぐ近くに病院があって助かった。
すぐに治療してもらわないと―――
「あれ?ここ、国立病院?」
そうだった。
行くべき病院は奥の方だった。
国立病院はマズい。
嘘がバレる。
「どうした?行かないのか?その男が死んでしまうぞ?行けない理由でも、あるのか?」
マズイ。
本当にマズイ。
「い、いえ。わざわざここまでありがとうございます!」
「うんうん。知ってる人が死ぬのは嫌だよね。分かるよ。誰か!急患だ!急いで運んでやれ!」
そうして、ケアラさんは運ばれていった。
「本当にありがとうございました!」
「良いんだよそんなお礼なんて。ところで、見た所、お金も持って無さそうだが」
お金。
あとでエルドさんと合流したら払えるかもしれないけど……
「あ、あとでお父さんが来るはずだから」
「おぉそうかそうか。じゃあそのパパとやらと会って話がしたいなぁ。ウチはダメな子ばかりだから、こんな良い子をどうやって育てたか聞きたいんでね」
「あ……あはは……良い子だなんてそんな……」
「人のために我々に歯向かった。それも人のために。度胸もあって優しさもある良い子じゃないか」
「あ、り、がとうござ、います……」
「それで、今すぐお父さんがいる場所へ連れて行ってくれないか?」
「え?今……ですか……?」
ホントにマズイ。
ホントにマズイ。
どう切り抜けばいいんだ?
「………で、でも、ケアラさんが……さっき運ばれた人が気になって……」
「おぉそうかそうか。心配だよな。それは残念だが、仕方ないよなぁ」
よ、よかった―――
「そうだ。さっきお父さんが来るって言ったが、お母さんはどうしたんだい?」
「あ、え……お母さんは……今いなくて……」
「ほう。いないのか。それはすまなかった……それで、お父さんはあとどれくらいで来るんだ?」
「え?あとどれくらい……分からないなぁ……」
「それに、誰とも連絡を取らなかったのにお金を払いに来てくれるお父さんって、凄い情報網を持ってる人なのかな?」
「えっと……」
マズイ、やらかした!
どう答えればいいんだ?
そろそろ限界だ……!
そんな時、このお爺さんが持っている何かから音が鳴った。
「あぁごめんよ。電話が来たみたいだ。
はいもしもし。ええ。はい」
何なんだこの人は。
この人が何となく気付いてるのは分かっているが、何が目的だ?
「すまんね。ちょっと監視カメラを色々見ていたが、君がこの街の外に出ていった映像が無いのだが、いつこの場所から出たんだ?」
「えっと……」
もう何なんだこの人は……っ!!
「……………………聞いてなかったね、君の名前。教えてくれるかな?」
「え、っと………クラウス・アレリウスです」
「………アレリウス?」
「見つけた!」
突然声が聞こえた。
この声の主は間違いない。
エルドさんだ。
「え……お父さん!来てくれたんだ!」
「えっ?ああ。にしても、ようやく見つけられたよ。本当に」
……エルドさんから凄い視線を感じる。
「すみません。色々と助けられたようでして」
「いえいえ、こういうのはお互い様ですよ」
「いえいえ、本当にありがとうございます。では、私達はこれで」
「ええ。これからも頑張ってください、ね?」
………え?
こんなあっさり?
「……とにかく今は行くぞ」
「あ、はい!」
--ゼアドラ視点--
「……今行った。絶対に撒かれないようにな」
『了解』
「それと、上の者に連絡しないといけないことが出来た」
『?それは一体……』
「2つ。1つは、あの子供、アレリウスと名乗った」
『アレリウス?その名前がどうかしたんですか?』
「出世したら名前の意味が分かるよ。2つ、これが1番重要だ。お前でも重要だと分かるはずだ」
『は、はぁ……』
「あの子は古代文字が分かる。カードと言っていたから、再度カメラと言って確認したんだが、通じた。もしかすると私以上に古代文字が分かる人間




