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2話 怒る者・笑う者・絶望する者



「ク――ス!お――!」



声が聞こえる。



「クラウス!起きろ!」


「……? 父さん?どうしてここに? というか、ここはどこ?」


「お前こそどうした!? 何でここにいるんだ!? 学校はどうした!?」



………?

確か、学校から帰ってくる途中で倒れて…

気付いたらここにいて…


ここどこだ?

森の中…… っぽいけど。



「学校は…行ったよ。どれくらい寝てたのかな? 今何時?」


「今? ………15時40分だ」



あれ?

さっきも15時40分くらいだったよな?


瞬間移動でもしたのかな?



「なあ、ここまでどうやって来たんだ?」


「分からない。確か学校から帰って来る途中で、いつの間にかここにいて…」


「マジか…そんなことあるんだ…丁度、学校帰りの時間だもんな…」



そんなすぐ信じられるもんなのか…



「それで、ここどこなの? なんで父さんがいるの?」


「……あれ見てみろ」



そういって父さんが指を指した先には、剣が浮いていた。

いや、状況的に封印されていた、と言った方がいいか。



「これはな、この世界を創ったとされる神、ゼウス様が人類に渡したとされる剣なんだ」


「ふ~ん」


「今は銃が基本だろ?皆剣なんて使わないけど、大切なものだから一応ここで守ってるんだ。この場所を知ってるの、もう俺ともう1人だけだからな」


「他にいるんだ」


「ああ。と言っても、まだ生きてるかどうか分からないんだけどな」



なるほど。

英雄と呼ばれるくらいの実力を持つ父さんがこの剣を守ってるって感じなのかな?



「父さんは昔、この剣を使ってたくさんの人を護った。だから英雄に選ばれたんだ」


「へぇ~」


「凄いどうでもよさそうだな…」


「剣なんて使うこと無いだろうからね」


「…そう……だといいな」



父さんは寂しそうな、けれども嬉しそうな顔をした。



「じゃあ、帰ろっか」


「うん」




「……………クラウス、悪いが急いで帰るぞ」



先程まで優しそうな父の顔は消え、どこか焦っているような、怯えているような顔に変わった。




-----




街は既に俺が知ってる光景ではなかった。


沢山の家が燃えている。

壊れている。

その様子はまさに悲惨という言葉そのものを表しているかのようだった。



「あれは…まさか、魔物? 何で、ここに…」



何百もの見たことない巨大な化け物がいる。



「俺はエリスと母さんを探す!クラウス!お前は逃げろ!」


「え?でも……」


「いいから!早く! 父さんは魔物を倒しに行くから、帰るのに時間が掛かると思う」


「時間が掛かるって、本当に帰って来れるの!?」


「大丈夫だから!早く逃げろ!」



父を信じて1人で逃げる。

それがどれだけ卑怯なことだと分かっていても、逃げる。


エリスと母さんは大丈夫だろうか?

父さんは大丈夫と言っていたが、本当に大丈夫だろうか?

友達も大丈夫だろうか?


逃げる間ずっとそのことを考えていて、いつまで経っても不安が消えない。




--ルーク視点--




「ガウル村に魔物発生!原因不明!至急応援を頼む!」



冒険者ギルドとホイルアの軍に応援を呼んだとはいえ、この数は厳しいかもな…



「ソティス!エリス!いるか!?」



返事はない。

しかし、近くに人がいる気配はない。


まだ温かいコーヒー。

慌てて支度をして逃げたのだろう。


だとしたら、魔物を倒さなければ。



『ルークさん!ホイルアの軍です!助けに来ました! 小型は我々に任せて下さい!』


「すまん!助かる!」



ホイルアの軍隊が来たようだ。

国の動きが早くて助かった。

銃や固定砲台があるだけでかなりマシになる。


じゃあ、俺は大型に専念しよう。



「大型が3体もいるとは、どうしたものか……」



「死ねっ!くたばれッッ!」


「ここは俺達の故郷なんだッッッ!出ていけェェ!」



銃声と共に故郷を守ろうとする勇敢な者達の声が聞こえる。

自分の命を懸けて故郷のために戦う。

……昔を思い出す。



中型は8~15mもある巨体で素早い動きで人を喰らう。


小型は比較的簡単に死ぬが、圧倒的な数で群れて行動し、捕食する。

中型の食べ残しなどを狙う個体もいる。


一方で大型は数こそ小型や中型に劣るが、20~50mという圧倒的な大きさに、コアを破壊しない限りいくらでも再生して死なない。

再生速度が速いせいで銃なんかじゃ歯が立たない。

だが、何故だか剣や斧などの近接武器で肉を削いでからコアを破壊すれば問題無い。


軍が来たから小型と中型は大丈夫…だが、今回はちょっと大型が多いな…

サーディアが無いから正確なコアの場所が分からないってのも厳しい。



「仕方ない!長年の経験と勘に頼るか!」



勝つためには、生きるためには、そうするしかない。




--アルケニア・セントラルタワーにて--




「早くサーディアと人員の確保を!一刻も早くホイルアの人民を守るのだ!」


「「「了解!」」」


「しかしマズイですね…結界内に魔物が侵入とか前代未聞ですよ」


「現れたのがホイルアってのがまた…」


「ああ全くだ。ベルフェルトとかならまだしも…」


「とにかく、結界が破損した可能性があるのは非常にマズイ。全世界の危機だぞ?」


「それに関しては後程調査をします。が、その可能性は低いでしょう。

結界が一部でも破損したら即全壊のはずですから、奴らは何かしらの方法で侵入をした、として考えた方がいいでしょう」


「それよりも、情報によると大型魔物が多いんだよな?確か3体だっけか? 英雄ルークがいるとしても限度はある。魔物が他国にまで来たらマズいぞ?」


「最悪、G5ミサイルを使用して魔物を一掃することも考えた方がいいかと」


「ダメだ!具体的な威力も分かってない最新武器なんざ信用できるか!」




--クラウス視点--




爆発音

銃声

悲鳴



血の匂いもし、遠目で見える破壊された村。


人が空中に打ち上げられる光景。

人が死ぬ瞬間。

人が喰われる光景。

人が踏み潰される光景。

バラバラになった人。

建物が踏み潰されている光景。

建物が燃えている光景。

飛んできた瓦礫に潰される人。


何も見たくない。

何も聞きたくない。

俺はただ逃げていた。



「お婆ちゃん!ほら走って!」



そんな時、聞き覚えのある声が聞こえた。



「あんだって?」


「魔物が襲ってきたんです!早く逃げて!」



母さんだ。

周りにいる人たちを助けたり魔物の襲撃を伝えたりしている。

父さんはそうだけど、俺には母さんも英雄に見えた。


周りの人も助けている母

人を護るため魔物と戦っている父

逃げているだけの自分


改めて両親の偉大さに気付いた。



「母さん!」


「………! クラウス!?大丈夫!?」



銃声や爆発音で聞き取りづらい。



「大丈夫!父さんは!?」


「分からない!けど多分魔物と戦ってると思う!」



「えっ?会ったんじゃないの!?」


「会ってないよ!」



父さん……大丈夫だろうか?



「避難先はこちらです!急いで下さい!」



忘れてた。

早く逃げないと。



「母さん、あそこに行けば大丈夫なんだよね!?」


「そのはず!さ、急ご!」




-----




「シェルターはこちらです!焦らず落ち着いて下さい!」



ようやくシェルターが見えてきた。

ようやく安心できた。



「やっと……」




---




「こちらの中でお待ちください」


「やっと……着いた……」



シェルターの中とはいえ、さっきからずっと鳴り響いている銃声で思ったよりも安心できなかった。

この部屋が暗いからというのもあるだろうが。

けど、さっきよりは間違いなく安全と言える状況になった。



「あっ、そうだ」



シェルターの中にいる1人の兵に話を聞いた。



「あの、お聞きしたいことがあるんですけど…」


「どうしましたか?」


「えっと、父さ……ルーク・アレリウス……さんについてですが、今どうしてるかとか分かりますか?」


「ルークさんは今大型の魔物を倒してるはずだよ。英雄って呼ばれるほどの実力者なんだ。大丈夫だよ」



父さんはまだ生きてる。

まだ生きてる。


何とも言えない安心感が俺を包んだ。



「…………君のお父さんのおかげで沢山の人が救われてるんだよ。あんな凄い人だ。きっと今も沢山の魔物を倒してるに違いないよ」



父さんはまだ生きてる。

これだけでどれだけ救われるだろうか。


いや、状況的に父さんが一番危ない。

安心できる状況ではない。

だけど、嬉しかった。



「ありがとう……ございます」



お礼を言ってその場を去った。

指定された場所に行き、一度今後どうするか考えないと。

けど、冷静になるにはどれくらい時間が掛かるだろうか。




そんなことを考えながら部屋に戻っていると、突然天井から光が漏れた。

違う。天井が崩れたんだ。

何で崩れたかが一瞬分からなかった。



「魔物だあああああ!」


「魔物が入ってきたぞおおおお!」


「早く扉を開けてっ!」


「外はどうなってる!?」



何故気付かなかったんだろう。

先程から銃声が小さくなった。

叫び声を聞くことが多くなった。


魔物は一番近くにいた俺を目掛けて走り出す。



「クラウスッ!!」


「子供が喰われる!」


「危ない!」



けど間一髪。

咄嗟に避けることができた。


魔物はそのまま壁に突っ込んだ。

つい外を見てしまい、すぐに目を逸らした。

外がどんな状況になっているか頭では分かっていたはずなのに。



「伏せて!」



その言葉が聞こえた直後、魔物はたくさんの銃弾を浴び、倒れた。



「また来る……!」



だが他にもシェルターに魔物が入ってくる。



「早く逃げて!」


「総員!シェルター内にいる人を死守せよ!」


「逃げるったってどこへ!?」


「どこでもいい!逃げるんだよ!」



先程魔物が作った穴から全員が一斉に逃げ出した。



「押さないで!」


「どけどけ!」



「ゴホッゴホッ……2人とも大丈夫?」


「大丈夫……だよ……エリスは?」


「大、丈夫……」


「よかった……じゃあ逃げるよ!」



逃げている間にチラリと後ろを見た。

沢山いたはずの大型の魔物は1体のみになっていた。

確かあの兵士は大型の魔物は父さんが担当していると言っていた。

大型が減っているのは、父さんが頑張って倒したんだろう。


だけど、しばらく様子を見てもあの魔物が倒される気がしない。

父さんが近くにいる感じは全くしない。

もしかしたらもう父さんは―――



「もう……死んだんじゃ、ないの……?」



今はそんなことを考えてる場合じゃない。

魔物の数は減っていると同時に、兵の数も減ってきている。

兵の数の方が少なくなってきている。

だから逃げなければ。


逃げながら周囲を見るが、やはりどこも絶望的な状況だった。

人の部位が落ちていたりもする。

地面は血まみれ。

そして、いくつか見た友達の死体。


もう嫌だ。




-----




「ハァ……ハァ……」


「ダメ!こっちにも魔物がいる!」


「こっちにはいない!ここ通ろう!」



どこに続くか分からない道を目指して走り続けている。

ずっと、ずっと―――



「ハァ……ハァ……」


「ごめん……少し、休ませて……」


「……この家に入ろう」



近くにあった誰かの家の中に入って休むことにした。

幸い窓が割れており、そこから入った。


疲れた。

死力を尽くして走った。

体力が回復するまでどれくらい掛かるだろうか?

2,3分ですぐに行きたいが、恐らくそれ以上に時間が掛かるだろう。




直後、大きな足音が聞こえる。

魔物が近づいてくる……



「GRUUU…………」



恐怖を煽る音が近づいてくる。


頼む。このまま気付かないでくれ。

消えろ。

消えろ……!


祈るような気持ちで、呼吸もせず、口を塞ぎ窓際で縮こまって静かにしている。



「………っ!」



窓から顔を覗かせてきた。

すぐ真上には魔物の白い頭が見える。



「あ“あ”ああああっっ!!」



母は近くにあったガラスの破片を魔物の目に刺した。



「逃げて!!早くっ!!」



その言葉に反応し、俺は妹の手を引き咄嗟に立ち上がった。

奥にあったドアを目指し、走った。


怖い。

怖い。

誰だって怖い。

けど母さんは立ち向かった。


逃げ道となるドアを開けた。



「母さんっ!早く逃げ―――」



頬に血を浴びた。

咄嗟にエリスの目を自分の手で覆った。



「母、さ…………」



上半身が喰われていた。

まだ母さんは魔物の口に咥えられたままだ。



「え?いや……なん…………待っ……」



一歩一歩後ろに下がる。

少しずつ、無意識にその場から逃げる。


不快な呼吸音だけが聞こえる。



「………!!」



目の前の状況から目を背け、逃げ出した。

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