Episode 34 Climb
「ルクスリアに着く前に聞きたいんですけど、この荷物なんですか?」
エルドさんに持たされたこの荷物、それなりに重く、金属が擦れる音が聞こえる。
「後で説明する!とりあえず集まるのが最優先だ!」
ここら辺の地形が悪くて揺れと共に音も大きく感じる。
そのせいで、大きな声を出してくれているのは分かるが聞こえづらい。
「その仲間ってどれくらいいるんですか?」
「結構いるぞ!今回は色んな国の人達と合同だ!」
色んな国から?
それならかなり人はいるだろうな。
何カ国の人が来るかは分からないが。
「あと30分位で着くから、それまで寝るか黙って風景見るかにしろ!」
「風景見てます!その内寝ます!」
風景を見ると言っても、何にもない平原しか広がってないが。
そんな平原にも、見たことが無い動物が何体も存在する。
そんなものを見て、ここが異世界だというのを改めて実感する。
アルケニアとかは高層ビルが立ち並ぶので異世界感が無かったから尚更だ。
「にしても……デカいな……」
「何だって!?よく聞こえねぇぞ!?」
あまりの大きさに圧倒される。
2000m、いやもしかしたらその倍以上はあるかもしれない巨大な人型の何か。
この上に、肩の部分に人が住んでいる。
「そういえば、エルドさんはその大剣で戦うんですか?」
「そうだ!ルクスリアにいる原生生物には危ないが近接武器が一番信頼出来る!」
生物の大きさによるが、銃より剣とかの方が役に立つこともあるか。
魔物も小型とかは役に立つけど、ある程度の大きさになると銃より剣の方がいいからな。
「もうやることないので寝まーす!」
「寝ろ!」
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「ほら!着いたぞ!ほら起きろって!」
「ん、ん~?」
目を開けると、ルクスリアの右足の小指にあたる場所にいた。
ここから登るのか。
……どうやって?
「どう登るんですか?」
「5分歩いた先に昇降機がある。それを使って登る」
「昇降機なんて久しぶりに聞いた……」
もうちょっとキツイものだと思っていた。
エレベーター使えるなんて、良心的で良かった。
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「……エレベーターとは?」
いや、昇降機と言われれば確かに昇降機ではある。
ただ、安全面を一切考慮してない欠陥過ぎる昇降機だ。
「これ使えば楽なんだよ。怖くても乗るんだ」
ロープに小さな持ち手と足場が付いているものだった。
俺の想像しているのは、個室の中に入って自動で登るものなんだが、そんなものはない。
ルクスリアはもう動かないんだからちゃんとしたエレベーターくらい付けても良いと思うんです。
「ここ以外は特殊な器具を使って登る。それよりはマシだからな」
「これ以上なんですか……」
「じゃあさっさと乗れ。落ちないように持ち手をしっかり握ってろよ」
「あの~これに乗って落ちた人は……?」
「……………………………………」
「何か喋って……」
「じゃあ起動するぞ」
「え?ちょ……」
もう、覚悟を決めるしか……
エレベーターだったらどれほど良かっただろうか。
「……うわっ!」
見てしまった。
軽い気持ちで見てしまった。
今どれくらいの高さなんだろうと思ってしまった自分がバカだった。
「なんだ?高い所苦手なのか?」
「はい……頑張って乗り越えます……」
「まあ頑張れ。ほら、あとちょっとだぞ?」
早くたどり着いてくれ……
早く……
「はい到着もう絶対下見ないわ」
早口で喋ることで気を紛らわせた。
紛れてないが。
にしても、怖かった……
「ここは……小指の爪の中ですか?」
「そうだな。そのまま進んで、外に出て足の甲で合流だ」
「分かりました」
にしても、不思議な場所だ。
元が生物だから、周りを見ても筋肉ばかり。
骨は見えないが、神経のようなものも確認できる。
「とりあえず、まずは仲間のことについて話しておく」
「何でこんなギリギリになって話すんですか……」
「事情があるんだよ」
「はいはい。いつものですね。分かってますよ~」
どうせ教えてくれないことは分かってますよ。
俺だって何か力になりたいのに。
「それで、いくつかの隊に分かれて行動するが、今回俺達は1番隊と2番隊で行動する。他の隊は先に行ってるはずだ」
他にもいるのか。
一体全部で何人いるんだ?
「俺は1番隊 隊長、2番隊の隊長はアストという色黒で金髪の男だ」
「アストって人、何回か聞いたんですけど、どんな人ですか?」
「強いけど調子乗ってるガキ、かな」
酷い言われよう。
どんな人なんだ?
「ガキって言っても、21だったか?」
「……大丈夫ですかね?」
「まあ頑張れ。俺とアストでお前を守ることになっているから死ぬことは無いだろうが」
「え?護衛なんて要りませんよ」
「ここ1ヶ月でお前は強くなったかもしれない。だが、何かあってからじゃ遅いんだ」
何かあったらどうなるんだ?
俺は他の人の命を危険にさらしたいとは思ってないのに。
「あれ?光が―――」
よく見ると、天井に穴が開いている、
「あの穴から外に出るぞ」
「どうやって出るんですか?」
「これを使う」
そうしてエルドさんが出したのは、見たことが無い器具だった。
後ろには持ち手があり、先端には何かを引っ掛けるためと思われるアンカーが付いていた。
「なんですかこれ」
「ここにある引き金を引くと……」
すると、アンカーが飛び出し、ワイヤーのようなものが出てきた。
やっぱりこの器具―――
「フックショットじゃないですか!」
「名前なんてどうでもいいだろうが……今紐みたいなものが出ただろ?ワイヤーっていうんだが、これがどっかに突き刺さったらーーー」
「そのまま持ち手にあるトリガーを引いて、こう……ビューンって飛ぶんですよね!?」
「あ?違ぇよ。持ち手を地面に刺して抜けないようにしてから、このワイヤーを掴んでよじ登るんだ」
違った。
想像と違った。
俺の想像では、そのままワイヤーに引っ張られて一瞬空を飛んで移動するものだと思ってた。
けど実際はワイヤーを伝ってよじ登るだけだった。
「なんでそんなガッカリしてんだよ」
「現実は夢ではないと改めて実感しただけです」
「はぁ?とにかく行くぞ。ほら、これお前の分」
「ありがとうございます」
勝手に期待して落ち込んでる場合じゃない。
早く行かないと。
「よいしょっと……」
登り切り、穴から脱出したことで外の様子が見えた。
「ここから見ると、凄い迫力ですね……」
足元には巨大な足があり、真上には巨大な体が見える。
空を覆い隠すかのような巨大な腕もそこにはある。
「あの崖を登った先に仲間がいるはずだ。行くぞ」
「あ、はい」
目の前にそびえ立つ崖。
ここを登った先に人がいる。
「……よし!」
先程貰ったフックショット風の何かを使って、崖にアンカーを刺す。
ワイヤーを伝ってよじ登る。
その最中―――
「うわっ!何だコイツ!?」
「おい!危ねぇぞ!早く登り切れ!」
「PIAAAAA!!」
「邪魔だ!あっち行け!」
巨大な鳥、それも何体も同時に襲ってきた。
身動きがあまり取れないから早く登り切るしかない、のは分かっているけど。
「弾に当たらないように気を付けてねェェ!!」
そう聞こえた直後、1人が飛び降りてきた。
左手に持っている銃、というよりマシンガンで俺の周りにいた敵を撃ち倒し、右手に持っている剣で俺に一番近くにいた鳥の頭を切断した。
「よっと、全部倒したかな?」
「あ……助けてくれてありが―――」
「見たよね!?今のカッコよかっただろ!?」
お礼を言おうと思ったが、言い切る前にその人は自慢を始めた。
「え?あ……」
「スゲェ飛びっぷりだったなぁおい!」
「早く戻ってこいよー!」
上にいる人たちが一斉に顔を出した。
顔を出した人達だけでもそれなりの人数がいる。
「あ、エルドさんチャーっス!」
「普通に挨拶できねぇのかお前は……」
よく見るとこの人、色黒金髪の男性……
あーなるほど。
この人がアストさんか。
何故だろう。
なんか不安。




