Episode 32 Secter 2
英雄と呼ばれる父さんを育てた人に俺も教わる。
ワンチャン俺も強くなれるんじゃ?
……正直、そんな少年漫画みたいなこと起こるのか、という気持ちの方が大きい。
「とりあえず、あと2ヶ月でここまで到達したいとかそういう目標はあるか?」
「目標……うーん……」
だとしたら、やっぱり―――
「魔力を自分の力にして一時的に強くなる、身体強化を使いこなしたいです」
「身体強化?なんじゃそりゃ?」
「え?聞いたこと無いですか?」
「ねぇよ。使ったことあるのか?」
「はい。突然閃いて試したらすぐ出来るようになったんですが……」
「魔力はあくまでエネルギーだ。そんな都合のいい、本当の魔法みたいなことは出来ないと思い込んでいたが……」
確かに魔力はエネルギーとは聞いていた。
何となく行けるかも、と思って試したものだったが……
「……魔術を使ってる奴に、その身体強化ってのを使ってる奴はいたか?」
「あ、いえ……」
そういえば確か、カイルは身体強化を知らないようだった。
イメージ通りに身体強化という魔法が使えたが、一体……
「まあ、お前だしな。意味分からん事起こっても仕方ない、か」
「え?」
この人、俺のこと知ってるのか?
父さんと普段やり取りをしていてもおかしくはないけど。
「ちょっとその身体強化って奴、試してくれないか?」
「分かりました」
外部にある魔力を溜め込んで―――
「あれ?この辺り、魔力が薄い……」
「ああ、そうだ。まあ気合入れりゃ何とかなるだろ」
気合で何とかなるのか?
ならなくても、気合で何とかしていくしかない。
根性論は嫌いだけど。
魔力の吸収を強くイメージし続けて、ようやく魔力が溜まった気がした。
「よし、じゃあ行きます!」
溜めた魔力を自分の力に変換する……!
「あ~なるほどな。腕とか足には力が入ってるけど……」
「そうなんですよね。何とかしたいと思ってて」
「ほーん。全身平等に力が行き渡るようにしたい、と」
「はい」
部分的にパワーを上げる、ではなく身体能力を底上げする感覚でやっていきたい。
これが実戦で出来たらどれだけいいか。
「じゃ、今日は解散かな。明日からはお前はその身体強化ってのを制御できるよう練習しとけ。俺は向こうでお前の持って来たものについて調べてくる」
「分かりました!よろしくお願いします!」
期限は2ヶ月。
それまでに制御できるようにならないと。
身体強化が行けそうなら、空を飛ぶ練習とかもしておこう。
--カリアン視点--
やはりあの子は持っていた。
あの子が持っていた通信機を耳に装着し、ボタンを押して起動する。
「ゲッ!これ8%しかねぇじゃねぇか」
サーディアに残っているのは残り8%。
残り少ない時間で終わらせるしかない。
「サインアウトのやり方は確か……」
記憶をたどり、間違えないよう慎重に操作する。
元あったアカウントで入り直す。
「モード切り替え。全リミッターを解除」
そう言うと、聞き覚えのある懐かしい声が聞こえてくる。
『起動完了。只今全機能の制限を解除中です。しばらくお待ちください……』
「頼むぞ。時間ねぇんだから」
『終了しました』
「北原直樹に電話を」
『了解しました』
頼む、繋がってくれ。
『もしもし』
繋がった。
残り少ない時間で可能な限りの情報を伝えなくては。
「北原くん。俺は今―――」
『クラウス君と一緒にいる。合ってた?』
「流石だな」
『貴方の状況、言いたいことは分かってますから言わなくて大丈夫です』
「………………なるほど。そういうことか」
『はい』
予定よりも早く完成したな。
なら、此方が入手した情報はわざわざ言う必要はない、か。
「もしかして、今こっちの世界に?」
『はい。第1セクターにいます。第2は……伊達さん、頼みますよ』
「……久しいなその名前。お前らが俺のこと置いていって以来だわ」
『すみませんね。あの状況で頼れるのが貴方くらいしかいなくって』
「分かってるって。今カリアンって名前で通してる。今度会ったらそっちで」
『分かりました』
「ま、あの子が死なねぇように上手くやっとくから」
『お願いします』
そこで通話は切れた。
各セクターを1つの世界ともとれる程の巨大な施設。
全部でいくつあるかは俺でも分からない。
しかもあの子が来てるとは、責任重大だ。
頑張らねぇと……
「……あと1%、か」
連絡はもう取れそうにない。
--クラウス視点--
「ただいま!」
「おかえりなさい!どうだった!?」
「今日はあんまり大したことやらなかったよ。色々説明聞いただけ。それで、エルドさんはどこに?」
「お父さんは作戦会議してるみたい」
「作戦会議?」
「よく分かんないんだけど、転移装置ってのをルクスリア上層にある地区に持っていこうって話らしいんだよね」
「……転送装置か」
……いや、俺の知っている転送装置とは関係無いな。
多分、だけども。
「じゃあ早いけどご飯食べよっか」
「お父さんのこと待たないの?」
「いいのいいの!どうせ遅くなるし」
「そうなんだ。分かった。皿とか用意するね」
「ありがとう」
……懐かしいな、この感じ。
「何笑ってるの?」
「ああ、ごめん。気持ち悪かったよね……」
「いや別にそんなこと言ってないし。いやまあそう思ったけど。それで、どうしたの?」
「……妹がいるんだ。それまでずっと4人家族で暮らしてたんだけど、色々あって母さんが目の前で死んじゃって、その時に父さんもいなくなって。その後はずっと2人だけで生活してたんだ。それを思い出して」
「……………………」
「そんな顔しないで。最近になって父さんは戻ってきたんだ。だから妹は父さんといるはずだし、大丈夫だとは思うけど、心配だな」
「その父親酷くない?4年間ずっと放置してたんでしょ?」
「あ、そうなんだけど、違うというか……とにかく、大丈夫だから」
エリス、父さん。
今どうなってるんだろう。
大丈夫かな?
「……分かった。じゃあ今までのこと、色々教えてよ」
「いいよ。長くなるかもよ?」
「あ、その前に洗濯物干したり風呂を沸かしたりしといてねーお兄ちゃん」
「えぇ……まあでも居候してる立場だしな」
「私も手伝うから。ほら、長男だから耐えられるでしょ?」
「長男だからって何でも耐えられるわけないでしょ……意味分かんない幻想は持たないで」




