Episode 30 This World
「なんだ……これ……」
知らないものが、目の前にある。
俺の知っている世界では存在しないものが、そこにある。
ここは、一体―――
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「「「いただきます」」」
よく分からない。
アレリウス家、とかもよく分からない。
確か父さんの家族は昔何かの事件があって全員死んじゃって、母さんはどこか遠くの場所にいるって言ってたな。
遠くの場所にいる。
まさか結界の外にある場所だとは思わなかった。
それに、あの子がホイルアのことを調べたが、何も出てこなかった。
結界の外に人が住んでいるというのも驚いた。
母さんは一体―――
「それで、本当に何も知らないんだな?」
「え?あ、はい。俺は、俺が知っている世界とはまるで違う場所から来たみたいで、何も知らないんです」
「魔術がどうとか言ってたもんな。お前の世界ではそんなものがあるのか?」
「後で見せましょうか?」
「いや、いいよ」
母さんはもういない。
母さんのことを知っている人がいるとしたら、やっぱり―――
「あ、そうだ!すっかり忘れてた!」
「?」
「服の中に手紙が入ってたの!」
「え!?どれ?」
そんな重要なことを忘れないで欲しかった……
「えっと確か……あった。読み上げるね。『完全に回復したら、そこの世界のどこかにある魔力の塊探しといて。あとこの前渡した剣、完全版が出来たから置いとく』って、滅茶苦茶汚い文字で書いてある」
北原さん字汚いんだ……
「魔力の塊?」
「はい。水色の立方体みたいな形をしてて、なんか凄いオーラを放ってる奴です」
「はぁ?」
「それに触れると強くなるって聞きました」
「触っただけで強くなれるだって?」
「あ、いや、魔力って人体に有害で、一部の人しか扱えないんです。だから安易に触ろうとするのは……」
「ふ~ん。そんなのが……それを探すのか?」
「はい」
魔力の塊。
ただの勘なんだが、魔力の塊はあのデカい奴のどこかにある。
そんな気がする。
「というか、剣の完全版って……」
「あー君が眠ってる時に剣2本の場所動かしてたんだけど、あれどこやったかな~」
「はぁ!?忘れたの!?」
「多分見つかるから!大丈夫!だと思う……」
「自信なさげに言うのやめて……」
「食べ終わったら探すよ」
1本はすぐ出せるから良いけど。
完全版ってのはどんなのか気になる。
「そういえば、名前言ってなかったな。俺はエルド・リーゼ。コイツはミリア・リーゼ」
「よろしくね!15歳だっけ?私は14歳!年が近い人がいて安心したよ~」
「ここら辺は年寄りばっかだからな」
「そうなんですか」
まあ確かにここは田舎っぽい。
けど俺は、ホイルアにいた時のことを思い出すから割と好きなんだよな、この場所。
「「「ごちそうさまでした」」」
「それでお父さん、次はいつ出発するの?」
「う~ん……2,3ヶ月後かな?計画を練り直さないといけなくなったからな」
「? 計画って何ですか?」
「いや、まだ言えない。ところで、本当に君はソティス・アレリウスの息子なんだな?」
「はい。確かに昔、母の故郷について聞いたことがあります。とても遠い場所にあるはずとは言ってましたが、詳しくはあまり……」
「……彼女は、長い間行方不明だったんだ」
行方不明……?
「長い間って、何年くらいですか?」
「もう30年以上になるか。ある日突然いなくなって、ずっと探していたが20年前に捜索が打ち切りになって以来全く情報が無かったんだが……」
え?
30年以上前?
「父さんと母さんは今から30年以上前に出会ったって聞きました」
「30年、ね」
「父さんは昔、事件に巻き込まれて親族がいなくなって。そんな時に父さんが先生と呼んでいた人が引き取り、一緒に旅をしていた。その最中に母さんと出会った、と」
「他には?何か覚えていることは?その引き取ってくれた人ってのはどこにいる?」
「すみません。あまり覚えてなくて……その先生って人が今どこにいるのか、生きているのかすら分からなくて……」
母さんのことが全然分からない。
父さんのことも全然分からない。
昔、一体何があったんだ?
「エルドさん、ここにいる人たちがあそこ、あのデカい奴に住んでる人達がいる場所に行くことって出来ますか?」
「……俺達はこんな生活を~とか言ってたろ?」
「あ、言ってましたね」
「あのデッカイ奴、ルクスリアと呼ばれている神の遺物。昔は動いてたらしいけど、あれも一応元は生き物。とっくの昔にくたばった」
あれは金属の装甲をしている巨大な生物ってことなのか。
その生物を人間の技術を使って制御してたってことか。
……汎用人型決戦兵器?
「けど残ったもの、着ている装甲だったり血液だったり、その他全て、何もかもが重要な資源となる。その資源によって、あそこは世界一の経済国になった。この世界の寿命を削ってな」
……魔力の塊はルクスリアのどこかにある。
この勘は正しいのかもしれない。
「俺達はそういうのを回収して、国に納める仕事をしている。たまにルクスリアの肩辺りにある奴等の拠点に行くこともあるがな」
資源を回収する仕事。
そのルクスリアの人々がやる仕事じゃないのか?
「ま、仕事と言っても、なんやかんやで強制されてるんだよ。国からも、ルクスリアからも。ただでさえ上に登るだけで命懸けってのに、それを何度も何度も……」
「命懸け、ですか」
「あそこに住む生き物は凶暴なものも多いからな。奴らが住んでいるのは何とか見つけた安全地帯の一部だ。完全に安全とは言えないが」
「………………………………」
「奴らは資源を回収しやすい場所に移るから、拠点は足から腰、腰から脇、脇から肩へと移動してって。肩まで行ったらもうあとは頭しか残って無いってのに、欲張るから……!」
「そう、だったんですね」
資源は残り少ない。
この世界はもう、死にそうなんだ。
「それで、あそこに行く方法だったな。2、3ヶ月後に奴等の拠点に行く予定なんだ」
「行きます。母さんのこと、知りたいです」
「さっき凶暴な生き物がいるって言ったろ?」
「それでもです。それに、俺も自分の身を守ることはできます」
魔力の塊を探す目的もある。
だから何としてでも行かなくちゃ。
「ありがとう。本当に、助かるよ」
最後の言葉は何か、もっと深い意味があるような、そんな気がした。




