Episode 30 ReSTART
俺には、分からない。
人を助ける。
辛い思いを誰にもさせたくない。
そして、行動するのが正しい。
そう思ってた。
俺なんかに、勝手に善悪を決める権利なんて、ないのに。
どうすればいいのか、分からない。
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「………!」
長い眠りから目覚めた感覚だった。
だというのに、さっきまで見ていた夢のせいで勢いよく体を起こした。
もう、夢の内容なんて覚えていないが。
「「いたっ!」」
勢いよく体を起こしたせいで、頭が何かにぶつかった。
「いてて……まさか急に起きるとは……君、大丈夫?」
ぶつかったのは、この女の子の頭のようだ。
俺より少し年下だろうか?
「話せる?自分の名前言える?生年月日は?」
「あ、ええっと……名前はクラウス・アレリウス。生年月日は……1022年5月10日」
「大丈夫そう、なのかな?お医者さんだとこういうのを確認するんだよね?」
自分に言い聞かせるかのような独り言を小声で言っていた。
「大丈夫なんじゃないかな?」
「大丈夫……大丈夫だよね? えっと、クラウスくん、でいいんだよね?」
「あ、うん」
「私が見つけてから君ずっと寝てたんだよ?」
「え?その」
「ええ分かっています。焦ることはありません。落ち着いて聞いてください。あなたが眠っていたのは―――」
「……………………」
「9年です」
「!?」
「冗談だよ。2ヵ月くらい」
「全然違うじゃん……」
マジで焦った……
いや、でも2ヶ月は普通に長いな。
「まだ寝てた方が良いと思うよ。私は医者でもなんでもないから分かんないけど」
「うん。そうするよ」
「じゃあ私は村のみんなに伝えてくるね!」
そう言って、どこかへ行ってしまった。
……ここは一体どこだろう。
木造住宅で、どこか古臭い家。
村とか言ってたけど、一体どこの村なんだろうか。
あの後、北原さんとかはどうなったんだろう。
父さんは?カイルは?
……寝よう。
「ああちょっと!起きて!」
さっきの子が戻って来た。
慌てているようだけど、何かあったのだろうか?
「どうし―――」
「こ、この中に入ってて!」
「え?あの、まだ服着てな―――」
強制的にクローゼットの中に入れられた。
何かあったのだろうか?
「あ、―――りお――さん」
1,2分ほど経ってから声が聞こえてきた。
一体誰と話してるんだ?
聞き耳を立てるが、ぼんやりとしか聞こえない。
「あ、ちょっと!そこは開けないで!」
閉まっていたクローゼットが30~40歳程の男に開けられた。
さっきの子の父親だろうか?
俺がパンツ一丁の状態だった時に、その人との初の会合を果たした。
「あ、ど、どうも……」
「……ミリア、こういうのはまだ早い」
「? まだ早いって?」
「……それ以外の目的で彼氏をこの中にぶち込むか?」
「いや、本当に分かんないんだけど……」
一般的に考えたらこの状況、しらを切ってるのか、もしくは本当に知らないかの2択。
この子はそういう事に関して疎いんだろうか?
とりあえず訂正しとかなきゃ。
「あのー俺、彼氏なんかじゃないんですけど……」
「じゃあお前誰だよ」
「ああその人、道端で倒れてたから拾ってきたの。ずっと眠ってて、しばらく看病してたの」
「村の人には?」
「一応話しておいた。事情を聞いたら食料とか恵んでくれた人もいた」
……あとでお礼を言いに行かないと。
「じゃあ何で隠した?」
「ウチにはお金が無いし、家に置いておく場所も無いし、許可も取らずにこんなことしてたから」
「それくらいいいのに……まあいいか。君、名前は?」
「クラウス・アレリウスです。年齢はじゅうよ……じゃなくて15-――」
「……!」
突然首を掴まれた。
「うぐっ……何を……」
「ちょっと!お父さん!」
「なぜこんな所にアレリウス家の者がっ!丁度いいさ!これまでの恨み!今ここで―――」
「やめてよお父さん!!何をやってるの!?」
「ミリア!コイツは―――」
「なんなのお父さん!!この子は何もしてない!ただ眠ってただけ!」
一体なんなんだ?
アレリウス家って?
「お前は知らないだろうがな!俺達にこんな生活を強いているのはアレリウス家なんだ!」
「アレリウスって何!?とりあえず放してあげてよ!!」
ミリアと呼ばれたその子の言葉によって、首を掴んでいた力が段々と弱まっていった。
「ハァ……ハァ……一体、アレリウスって何ですか?悪いですけど、俺は何も知らないんです」
「何も、知らない?」
「俺はホイルア出身、ルーク・アレリウスとソティス・アレリウスの間に生まれた子供です」
「ソティス……アレリウス? 彼女は……生きていたのか?」
「いえ、今は、もう……」
「……そうか。ミリア、ホイルアという国について調べてきてくれ」
「分かった!」
「……とりあえず来い。話を聞く」
「あの~その前に着替えたいんですけど……」
「……着替え持ってくるからここに座っとけ」
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「確か、道端に寝っ転がってたのを助けられて2ヶ月経ち、ようやく目覚めたんだっけか?」
「はい。そのようですね」
「まずは、そうだな。寝る前に起こったこと、話してくれないか?」
「えっと、貴方も見たと思うんですけど、あの白くてデカい奴を倒した後、いつの間にかどこかに連行されてて、その後なんやかんやあって一度死んだはずなんですけど何か生き返って……」
「……ん?白くてデカい奴?というか、生き返った?お前本当に人間か?」
「そう思ってます。自信無いですけど」
あんな意味分かんないこと続きで自分が本当に人間かすらも疑わしい。
「その後、また白い奴と戦うことになったんですけど、魔術をフル活用しようが中々止められなくって……」
「説明下手すぎないか?それに、白い奴とか魔術とか専門用語を使うなよ」
専門用語?
一般的な知識のはずでは?
「あなたも見てましたよね?結界を破壊しそうになったあの白いデカい奴を―――」
「見てねぇよ。結界とか何とかって、もう分かんねえことばっかだなお前」
「え?いやいや。ここって結界の中のどこかですよね?」
「結界って何だって。分かんないんだってこっちはよ」
「いやいや何言ってるんですか?外を見たら結界が―――」
そう言って、窓から外の様子を覗いた。
確かに、ここには結界が存在しない。
そこには、結界の代わりにあった不可思議なものがあった。
「あれは……」
すぐに確認しに外に出る。
目の前には広い平原が広がっている。
その先に―――
「なんだ……あれ……巨大、ロボット?」
あまりに巨大。
数百、数千、いや万は超えるか?
それに、ロボットというには違う気がする。
あれは……なんだ?
「あれのせいで、あそこに住む奴らのせいで俺達はこんな生活をしなきゃならねぇんだ」
「あれに……住む?」
知らない。
俺はこんな場所、知らない。
少なくとも、結界の中には、こんなものは存在しない。




