29話 時間切れ
--クラウス視点--
この前会った時より大きくなっている。
大体20mほどだろうか?
「死ねヤァァァァァアアア!!」
大きな拳を振り下ろすが、カイルが咄嗟に氷の壁を作ってくれたのでダメージを負わずに済んだ。
「カイル!」
「やるんでしょ!?」
「ああ!」
カイルと共にコイツを倒す。
コイツを野放しにしたらもっと大変なことになる。
「オラオラァッ!やるんダロォ!?前の人生のこと忘れてサァ!」
腕や足で俺達を叩き潰そうとしながらそう言ってくる。
だが、質問の内容が今までと異なっていた。
「はぁ!?何言ってんだよお前!」
「いいサ!そのまま前のことをスッカリ忘れちまった方がオマエにとってもいいだろうよ!」
段々喋り方が人間に近づいてきているような気がする。
早くコイツを倒さないと。
「もうお前は黙ってろ!俺は、誰かが死ぬのを見たくないから!こんなことしてるんじゃないか!」
「ナ~ニ言ってんだァ?バカじゃねェの?人救って自分が気持ちよくなってるだけじゃネェのかよ!?気持ちワリィからとっとと逝けやッ!」
「死なねぇって言ってんだろ!」
邪魔な腕を切断しようと思っているが、ずっと回避し続けられてて攻撃が当たらない。
「うああああ!!」
「邪魔だァア!」
攻撃しようと飛びかかるが、体を掴まれた。
「逝ねやッ!」
マズイ……
そう思ったのだが、
突然、相手の動きが止まった。
「ニヒヒヒヒ……ギャハハハハハッッ!!アイツ!自殺しやがった!」
そして突然、笑い始めた。
「アイツって、誰のことだよ!」
そう言いながら奴に飛びかかるが、腕で弾き飛ばされる。
「木原だよ。アイツが死んだってコトはつまり自分勝手してイイってことだヨナ?」
木原さんが、自殺……?
「おい待てどこに行く!」
どこかへ走り去っていった。
「カイル!」
「分かってるよ!」
すぐさま追うが、先程まで戦っていた時とは速度が違う。
手を抜いていたんだと初めて気が付いた。
「まずは1人ィ!」
「うわああああ!助け
走った先にはここにいる人々を貪り食う姿が見えた。
「お前……何してんだよ!」
「ごめんなさいごめんなさい……!嫌ああああ!!」
また1人……!
ダメだ、追いつけない
「自殺しようとしてんじゃネーよ!バァァァカッッ!」
「嫌だ……!嫌だ!はああああ―――」
奴は銃口を自分に向けていた者を掴み、すぐさま口に運んだ。
「撃てーッッ!!」
「効かネェんだよ!そんなもん!」
施設にいた人達が一斉に射撃をしたが、一切効かず次々に喰われてしまう。
体が壊れてもいいから、魔力を使って極限まで強化して―――
「はあああああ!!」
また回避される。
さっきよりも早く動けてるはずなのに、さっきと何も変わらない。
「この部屋にいんのか!他の奴等はよォ!」
そういい、見るからに強固な扉を破壊した。
「うわああああ!!」
「入って来た……」
「逃げ―――」
「うるせぇぞテメェら!黙って死ねェ!」
「やめろおおおお!!」
諦めずに飛びかかっても何も変わらず、殴られ飛ばされるだけだった。
「させな―――」
「テメェも邪魔クセェぞォ!」
「……!カイル!」
まただ。
誰も助けられないまま、終わる。
「最後ォォォオオオ!!!」
「あ……あぁ…………………」
今までの行為を全否定するかのように、最後の1人も喰われてしまった。
「ギャハハハハハ!!俺の勝ちだァ!」
施設にいた人は、あれからたった1分半で全員が死亡した。
死んだ。
みんな死んだ。
誰も助けられなかった。
アイツを止められなかった。
死んだ人に、家族はいただろうか、大切な人はいただろうか。
……いただろうな。
でも誰も……
「全員喰ってやったゼェェェエエ!!」
「………ふざ、けんなよ……!バカ野郎っ!」
誰も救えない自分が嫌だ。
誰も生き残れない世界なんて嫌だ。
けど今は、
人を殺すお前が1番嫌だ。
「お前なんて……」
「あ?」
「お前なんて!死んじまえええええええええええええ!!!」
もう何度目か分からない無意味な特攻も、また無駄に終わった。
腕に弾き飛ばされるばかり。
「何で大したダメージ入んねェか分かるかァ!?効かねェんだよオレにはァ!そんなモン!」
効かない?
何でだ?
「諦めない……お前を殺さなきゃならないんだ。これ以上、誰も死なせたくない」
「言ってろッ!バカがァァ!」
もっと力を捻りだせ。
もっと、もっと―――
周囲の魔力を極限まで、死ぬ覚悟で……!
自分の力にして、倒す!
「絶対に!お前だけはぁっ!」
斬りつける、ふりをする。
すぐさま後ろに回って奴の右腕目掛けて飛び出す。
今なら無防備。
チャンスは今。
「おおおおおおお!!」
半分。
ここまで力を入れても半分しか斬れていない。
ならもっと―――
もっと力を入れる!
「斬れろおおおおおおお!!」
「テメェ!!」
左腕で殴り掛かって来た。
「させないっ!!」
カイルの援護のおかげで左腕の攻撃はズレ、直撃は免れた。
「いっけえええええええ!!」
7割、8割、9割……
10割。
「き、斬れ―――」
「うがっ……」
「まだっ!」
すぐさま首を狙う。
「死ねええええええ!!」
最後の一撃。
全てを捨てる覚悟で、全力で……!
「うおおおおおおおお!!!」
『クラウスくん!こっちの準備が出来た!急いで―――』
「おおおおおおお!!」
その時は何も聞こえていなかった。
目標はただ1人。
コイツを殺せば……!
斬れろ……
斬れろ……!
「ドキやがれェェェ!!!」
奴は逃げようとするが、カイルが咄嗟に放った氷結魔法により奴の体は思うように動かない。
今ここで倒すんだ!
今度こそ、勝つ!
今度こそ!
斬れろ、斬れろ……!
首は腕なんかよりも遥かに硬い。
けどそれは首を撥ねられるとヤバいってことじゃないのか。
「うおおおおおおおおおお!!!」
「舐めるなァ!クソガキァァ!!」
体を固定していた氷は破壊され、斬った腕も再生された。
あとちょっとで斬れそうだったのに……!
あと、ちょっとで……!
「逝ねやァァァァ!!……ア?」
失敗した。
奴を倒せなかった。
死を覚悟した。
音が聞こえた。
同時に感じた、痛み。
体がうまく動かない。
先程まで体を酷使していた反動が来たのもあると思う。
けどそれ以外の要因が分からなかった。
「あが……」
ふと見ると、奴の腕は斬られていた。
あの一瞬で。
「申し訳ないが強引なやり方を取らせてもらった」
「北原……さん……?」
やってきた北原さんは銃を持っていて、ようやく自分が撃たれたんだことを認識した。
いや、あれはただの銃じゃない。
麻酔銃だ。
だからか。
段々意識が保てなくなってきた。
「レイドくん。あと1分もないよ。やるならやるで頑張りな」
『準備はできてます』
「ならよし」
「邪魔すんナァァァアアア!!」
「邪魔だ」
そう言って何もない所から剣を生み出し、一撃でアイツを斬り飛ばした。
その剣は、俺の使っている剣と同じものだった。
あの剣は何本もあるのか?
じゃあ何故あれほどまで、この剣だけを特別視してたんだ?
「やっぱり今の状態じゃ完全には殺せないか」
「北原、さん……その剣、あと何本あるんですか……?」
「あと何本って……元々この剣は1本しか存在しない」
何を言ってるんだ?
(今持ってるじゃないですか。その剣)
……言葉が出ない。
「じゃあクラウスくん、これからは大変だろーー頑張ーーー」
ああ、ダメだ。
眠い。




