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オラシオン  作者: とりあえず全国の山田に捧げる
3章 ソトノセカイ
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28話 諦観

「父さん!」



後ろから父が現れた。

英雄として呼ばれている程の強者。


この場所は空中。

恐らくレイドさんが手伝ってくれたのだろう。



「一旦撤退するか?外にはレイドが待機してる!何やら事情があるから外にいなきゃいけないんだと」



事情?



「それとも、先に行くか?」


「もちろん!」


「分かった!ここは任せて先に行け!」


「え?それって……絶対に死なないでね!?」


「死ぬつもりがあるように見えるか?いいから先行ってろって!来てるぞ!?」


「分かった!分かったから!じゃあ先に行ってるから!」



こうして会話している間にも、父は魔物を凄まじい速度で倒している。

計100体は越えているであろうこの数を、この速度で。

やっぱり、父さんは凄いや。


ここで父さんが魔物を抑えている間、先に行くのはカイルと俺と―――



「じゃあ僕はチャンスを逃したし、また戻るよ。そういうわけで頑張ってねー」


「ちょ!北原さん!」



北原さんはどこかへ行ってしまった。

本当に何だったんだあの人……


結局、先に行くのはカイルと俺だけのようだ。



「何だったんだアイツ。とりあえず道を開けるから先に行け!」


「分かった!」



そう言って、カイルと俺は奥の通路に進む。

その間に俺達を襲ってきた魔物を全て倒していく。


地響きや魔物の奇声などがうるさい。

だが振り返らず、先の道を目指して走る。



「着いた……!」


「頑張れよ!」



この先に木原さんが。

話し合いで解決したい。

何が望みなのか、何をすればいいのか、全部聞きたい。



「キタかよ!」



突然大きな声が聞こえた。

同時に、大きな音と振動が。



「うわっ!」



気が付くと、目の前の道は封鎖されていた。

突然天井が崩れたせいで瓦礫で道が封鎖されてしまった。



「久しぶりダナ~相棒!また会えて嬉しいゼェェェエエエ!!」


「俺もだよッ!お前だけは絶対殺すって言ったよなァァァアアアア!!!」



思ったより早い再会になった。

母さんの仇を、今、ここで……!




--ルーク視点--




「……!クラウス!」



道が封鎖されてしまった。



「うっ……!」



この数を1人で倒し切らなければいけない。

よそ見なんてしてられない。


それに昔と違って腕は1本しかない。

生きるか死ぬか、かなりギリギリだ。



「うおおおお!!!」



もっと早く。

もっと―――



「あああああッッ!!」



数が多すぎて、倒れている魔物は死体なのか生きているのか分からなくなる。

魔物を倒した時に噴き出る血があまりに多く、視界が遮られる。


もっと早く動け。

もっと早く斬れ。



「はあああああ!!」



どんどんと新たな魔物が出てくる。

キリが無い。



「GAAAA-――」



そう思ったが、突然全ての魔物が動きを止めた。



「何が……って」



そして、魔物は全て消滅した。



「これは……あの時と同じ……!」



「君が奴の父、ルーク・アレリウス、か」



誰だ、この人は。

何者なんだ?



「二刀流……そうか。だから奴も二刀流……アイツはそこまで考えてそうだな」


「誰だ!?何を言ってるんだ?」


「木原、といえば分かるか?通信を聞いていたから予め私のことを話していたのは知っている」


「あんたがそうか」



魔物を動かしている人物。

敵、と聞いていた。


けど、さっきクラウスの通信から話し合おうと提案したのが聞こえた。

この人は何か情報を握ってる。



「話してくれないか。その件についても、この世界のことも」


「………………………………」


「君の話を聞く限り、深い事情があるのは分かる。けど俺達は何も分からないんだ」


「無理と決めつけるのは良くないって!?じゃあどうしろと!?」


「何も知らないんだ、俺達は。教えてくれ。どうしてこうなったんだ?」


「………………………………」



すぐには答えてくれなかった。

話すのを悩んでいるのか、それとも思い出して辛くなっているのか。



「どこからが始まりなんだろうか、これは」


「どこから、とは?」


「この地獄の始まりだよ。全ては北原直樹という人物が魔力を発見してからだった」


「魔力……」


「魔力の製法などは未だに謎なんだ。分かっている人物はごく一部。けどその製法の情報を彼が漏らした。今はそこまでしか分からなかった」



魔力の製法が不明。

では一体?



「結果、我々の世界では世界中を巻き込む戦争が起こった」


「ああ、それは聞いた」



作戦前、予め本作戦の指揮者、そして何より古い友人であるラインから聞いていた。

魔力とはあまりに強力なエネルギー。


この世界でも結界外にある資源や魔力などを巡ってたまに戦争が起こるが、やはりどこも変わらないものなのだろう。



「その過程で生まれたのが、あの白い奴だ。奴が魔法という概念を生み出した。そして、この世界の頂点に位置する可能性がある生物だ」


「世界の頂点?」


「奴等の最終形態は人間の姿そのものだ。知能もそれなりに高い。食物連鎖の頂点に立つどころか、人類は絶滅し、今人類がいる立ち位置が変わる可能性がある」


「おまけにまあまあデカかったよな?」


「ああ。このままだと新時代の頂点に立つ生物が奴等になる」



……想像しただけでも気持ち悪い。

あんな生物が世界を牛耳るのは。



「それも阻止しなければならないのに、魔力を巡って戦争は起こる。もうどうしたらいいのか……」


「もっと詳しく教えてくれないか?この世界は一体なんだ?何のために魔物なんかを?」


「はっきり言って、この世界のことはあまり分かっていない」


「分かっていない?」


「北原―――いや、この世界だとゼウスという名前だったか?彼が最初から現在まで全てをコントロールしている」


「全て……仲間は何人いるんだ?」


「分からない。分からないことだらけなんだ。情報が足りないのはこっちも同じ」



困った。

可能な限り情報を引き出そうと思ったが、上手くいかない。

拷問とかしてまで情報を引き出したくはない。



「魔物は元々、彼が生み出した生物。目的も何も分からない」


「そんな……魔物は君たちが動かしているんだろう?」


「上の者に言われてだよ。人なんか殺したくないさ」


「……随分と、教えてくれるんだな」


「ああ。せっかくこの立場になったが、全て無意味だったことに気付いてしまった。つい、さっき。いや、今まで気づかないふりをしていただけなのかもしれない」


「無意味って……」


「……君の息子が、ある日突然大量殺人者になったらどうする?」



その時、脳裏に浮かんだ。

ナイフを持ち、自他共に血だらけになっても、構わずナイフを振り続ける。

そんな光景が。


想像したが、湧き出た感情は言葉では表せない。



「俺は―――」


「家族は、大事だよな。俺も、大事に思ってた、のに……」



涙を堪えるために上を向いている。



「………………助けてくれ……俺には、無理だ。何もできない……!」


「………………………………俺にも、無理だと思うが」


「君達なら、可能かもしれないんだ」



この人がこれまで、どれ程の思いをしてきたか。

想像もできない。



「もう……俺は何をすればいいのか……何が正解か分からない……」


「……………………………」



彼はただ、上を向いている。

どれほど辛いか、考えるだけでも俺も泣きそうになる。

けど、絶対に泣きはしない。

彼のためにも。


「………!」


「おい!待て!どこへ!?」



突然、どこかへ行ってしまった。

そして、エレベーターに乗って地下へ行ってしまった。階段を降りて下の階へ向かう。



「どこにいるんだ!?」



声を掛けても返事は無い。

彼が向かった階にたどり着き、1つの扉を開ける。



扉の先には部屋があり、机の上には水の入ったコップと、何かの薬があった。

先ほどまで話していた彼もそこにいた。

だが全く動かない。

いつまで経っても動く気配はない。


血は出ていなかった。

息はしていなかった。




木原 智和 ????年??月??日 死亡


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