26話 先へ
「そうだ。一度切り捨てたとはいえ、君達耳は欲しいだろ?」
『……………………』
「今後のためにも、あとで何とかしてあげるから」
『……ありがとうございます』
レイドさんが未来を見た。
どのような内容かは分からないが。
何だが、嫌な予感がする。
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「さて、あっち側も頑張ってるみたいだし、僕達もそろそろ行くよ」
「ようやく、ですか」
「うん。それじゃ!」
そう言って、転移魔法のようなものを発動した。
「魔法、使えるんですね」
「使えないよ。エネルギーを活用してワープホールを作っただけ。マジックではなくサイエンスパワー」
「ほへぇ~」
ドヤ顔で話されたが、途中から無意識に聞き流していた。
どうせ俺みたいなバカが聞いたって理解できないし。
「ほらほら見てみなよ。君の死体だよ~」
ワープホールに入ってすぐの部屋の中には、首が無くなった死体があった。
「うわああああ!!」
5秒くらい経ち、落ち着いてから再び見てみる。
確かに俺だ。
今このカプセルに入っているのは、俺だ。
首は無いけれども、間違いなく。
……というか何でこんなものがここにあるんだ?
「そんなに驚くこと無いのに……ほら、この奥に用があるんだよ」
「え?あ、はい……」
自分の死体見たら普通驚くだろ……
と、思いながら扉を開けて、その先へ行く。
「何、これ……」
その部屋には、水色の正八面体の物体があった。
「何ですか?このラミエル。なんか凄い力を感じるんですが」
ここにいるだけで肌がビリビリする。
物凄いエネルギーが蓄えられているのが分かった。
多分、魔力の塊。
「これが魔力の塊」
ほらね。
「じゃあ、これに触れて」
「は?嫌ですよ!何か変なオーラ放ってるのに……大丈夫なんですか!?」
「大丈夫だよ(多分)」
今小声で多分って言ったよね?
言ったよね?
「触らないと先に進めないよ」
「くっ……」
恐る恐るその物体に近づく。
「触りますよ?」
近づいたことで周囲に電気が走る。
覚悟を決めて、それに触れる。
「触りまし―――」
振り返ると、そこには何も無く、ただ真っ黒の世界が広がっていた。
何もない、ただ黒い場所。
いつの間にか、どこを見ても同じ光景が広がっている。
[助けて]
[助けてくれ!]
[誰か!]
[誰かいないのか!]
[誰か!助けて!]
声が聞こえてくる。
色んな人の声が聞こえてくる。
けど、知っている人の声はない。
誰の声だ?
「わあっ!」
「うわああああ!!って、北原さんじゃないですか!驚かせないで下さいよ!」
突然後ろから北原さんが驚かしてきた。
あんな意味分かんない現象が起こった直後だからびっくりした。
「ごめんごめん。それで、どうだった?」
「声が、聞こえました.誰かが助けを求める声が。それ以外は特に何も……」
「……なるほど。そういうことか」
「?」
「それはともかく、これで君は強大な力を手に入れた」
「そうなんですか?あんまり感じないですけど」
「今後もこれに似たようなものを見つけたらどんどん触っていってね。それによってもっと強くなっていくから」
「何ですかそのゲームみたいなシステム……」
自分では強くなった感じがしない。
本当に大丈夫か?
とか思っている間にも北原さんはさっさと次の準備をしていて、ワープホールを作り出していた。
「白い敵はいついかなる時も同一個体しか存在しない。何体も出てきたとしても、それは本体の分身に過ぎない。本体がどこにいるか、というよりどう倒すか分からない」
「本体さえ倒せばーって思ったんですけど、それヤバくないですか?」
「敵は沢山いるからね。どうすればいいのか……」
「どうすればって……」
「それでも、今の所何とか出来るのは君だけだ。頼りにしてるよ。それじゃ!」
そう言った後、俺はワープホールの中に突き飛ばされた。
「何やってんすかああああああ!!」
ここ1週間で何度目か分からない落下を味わった。
『さっき魔力の塊に触れたから空飛ぶことも出来ると思うよ。飛んだら教えてね~』
サーディアからそんな無責任な言葉が聞こえてくる。
「信じますよ!?信じますからね!?」
大丈夫。俺は飛べる。
空を飛ぶことができる。
……飛べ!!
「うおおおおおおおおおお!!!
うわあああああああああ!!!」
やはりどれだけ祈っても出来ないことはできないのだ。
現実は非情なり。
とはいえ、このまま落下したら死ぬ。
死因:落下死。空を飛ぼうとして失敗
マジで嫌だああああ!!
「あああああああ!!」
「よっと。大丈夫?」
落下中の俺を、空を飛べるカイルがお姫様抱っこして助けてくれた。
助かったが、どちらにせよ滅茶苦茶恥ずかしい思いをしたのは変わりはない。
「お姫様抱っことか……」
「?」
カイルはお姫様抱っこが何かを知らない様子だ。
純粋というか無知というか……
「じゃあこのままラインさんの所に運―――」
「待って待って 俺も空飛べるようにするから」
流石にそれは恥ずかしすぎる。
空を飛べるようにするとは言ったものの、どうすれば……
「カイル、空ってどうやって飛べるの?魔法はイメージの力って言ったよね?」
「自分に掛かる重力を分散して、力の一部を自分が浮く力に変えて空を飛ぶから、そのまんまイメージしたら飛べるよ」
「??????」
あれ?
想像と違うんだけど。
空を飛ぶってそういう事なの?
『いや、もしかしたら覚醒まではもうちょっと時間が掛かるかも。君ならそんな複雑なこと考えなくても“結果“を想像するだけで思うがままにできるはずだし』
そうなの?
自分自身のことのはずなのに、全然自分のことが分からない。
自分のことが怖くなってくる。
……中二病じゃない、よね?
『カイルくん、その状態のまま浮いてる場所のどこかに研究施設の入り口があるはずだから探してくれないか?見つけたら連絡して2人で時間切れまで暴れてほしいんだ』
「了解」
時間切れって何?
教えてくれないことが多すぎる。
『クラウスくんは絶対剣を落としたりしちゃダメだよ?』
「何度目ですかその話。分かってますよ」
しつこい位、父さんの剣を無くさないよう警告してくる。
この剣、一体なんなんだろう。
それに、こんな重要な世界で神を名乗れる北原さんも何者なんだろう。
分からないことが多すぎる。
「ありました」
入り口は思ったより大きかった。
航空機とかが入れる大きさだった。
……ワープホール作れる技術あればそもそも入り口要らなかったんじゃ?
「じゃあ行くか」
「うん」
これからどうなるかは分からない。
けれど、やらなければ。




