23話 降臨
--木原視点--
「ほらヨ。お望み通り喰ってやったゼ。にしてもこのガキ、あん時のガキじゃねェか。母の仇がどうとか言ってたのによォ~。いや、言ってたっケか?」
「言ってなくとも、アイツのことだ。お前のこと、母の仇だとか思ってるだろうな。まさか母の仇に、自分も喰い殺されるとはな」
「皮肉なもんだなァ~おい」
「じゃあお前は戻ってくれ。後で拘束しとくからな」
「へいへい」
「木原さん……」
「ん?どうした?」
「これでよかったんですか?あの子がいなかったら……」
「……仕方なかった。全てが消滅するよりはマシだ」
「だとしても……まだあの子は子供なのに……子供が喰い殺されるの、もう見たくありません……」
「確かに、見た目は子供だ。見た目だけは。中身がどうなのか知ってるだろ?」
「知ってます……知ってますけど……」
「……もうあと俺達がやれることは、この世界のどこかにいる奴のオリジナルを―――」
「また……殺さなくちゃいけないんですよね。分かってます……それでいいんですよね?」
「ああ。それで奴は存在しなくなる。そうしたら世界はより良く、より長く平和に暮らせられる。全ての元凶、北原直樹さえいなければ」
--ライン視点--
「こんなことじゃ死なない……とは?」
『いや、死なないは言い過ぎかな? 可能性はある。けど、例え死んでも問題は無い』
「大ありでしょう!? どういうことですか!?」
思わず、声を荒げた。
あんな重要な人物が死んでもいいわけないのに。
『まあ信じてよ。それに、彼らの行動はある程度予想できる。実験に失敗したら、クラウスくんをあの白い奴に喰わせようとするんだろう』
「実験に失敗……?」
『というかほぼ確実に失敗するだろう。僕が予めそうしたからね』
「……? 言ってる意味がよく……」
『裏切者は恐らく、ノージン・オリスという人物だ。彼がクラウスくんを連れ去った』
「……え?なぜ?」
『ちなみに、彼の兄であるガイト・オリスという人物も裏切者だ。冒険者になっちゃえばクラウスくんと簡単に接触できるだろう?』
「いや、あの……」
『君の質問に答えると、冒険者ギルドに入ると、冒険者に対する権限を持つ。それに、君達の世界では冒険者ギルドは政府直属の組織だろ?』
「確かに、冒険者は結界外の調査などを行う関係で、我々の管轄となってますが……」
『だから、冒険者ギルドのメンバーはベルフェルト出身のオーゴット・マルガレーと接触できる。冒険者は仕事上軍事関連のことも扱うからね』
オーゴット・マルガレー?
軍事における最高責任者……
そんな人が、ベルフェルト出身?
「というか、ベルフェルト出身って関係あるんですか?」
『大ありだよ。それを話すにはまず、G5ミサイルの入手経路について話さないとね』
「G5ミサイル……?我々が所持していた?」
『そう。なぜこの世界にあったのか。これが分からなくて色々調べたんだ。そしたらオーゴットって奴がベルフェルト出身じゃあないですか~。ってことでベルフェルトのこと独自に調べたら、僕達の世界の人が何人かベルフェルトにいるっぽいんだよね』
ベルフェルトに……?
『ベルフェルトが外部のつながりを拒絶した理由。あくまで憶測でしか無いけど、そういうのがバレたくなかったからじゃかな? それで自分たちは他にも色々スパイを送り出して色々情報を集めてた、と』
それならG5ミサイルがアルケニアにあった理由も頷けるが……
『これは憶測に過ぎない。それに、これ以上は関係無い』
「関係無いんですか?」
そう言うと、突然通話は切れた。
「あれ?もしもし?」
「ほら、着いたよ」
声が聞こえ、後ろを振り向いた。
「はじめまして。僕がこの世界の神、ゼウスだ」
「……え?あなたが?」
その人の見た目は―――
「ラインさん!どいて!」
同時に、レイドくんがいきなり現れた。
「おっと待て待て。落ち着けって、どうした?」
「ラインさん!コイツさっき言ってた……!」
「ああ、確かに。顔はノージン・オリスそのものだ。お前、偽物だろ」
先程の話を聞くと、コイツが神を語る偽物で、我々をハメようとしているというのが容易に思い浮かぶ。
「本物だよ!なんでそんな……
あーなるほど。言ってなかったな。ノージン・オリスとガイト・オリスは僕のクローンなんだよね」
「黒……?なんだそれは」
「僕のコピー、と言った方がいいか」
「????」
「えっと、複製体、って言った方が分かりやすい?」
「????????」
「もういいや。とにかく、僕は本物だ。敵の正体も分かってるし、クラウスくんが今どこにいるのかも分かる」
「分かるんですか!?」
何となく雰囲気が同じような感じがしたので、信用ゼロから半信半疑に変わった。
「ああ、場所は……」
そう言って、空中に地図のようなものを出した。
「ここら辺にいる。一部の精鋭は僕の指示で動いて、その他は魔物とかを可能な限り倒して欲しい」
神が指差した場所は、以前レイドに極秘任務として行かせた場所だった。
「まさか、また行く羽目になるとは思いませんでしたよ」
「俺もだよ……まさか敵の居所が、あの空中に浮いてる謎の場所だとはね」
「ま、世界を救うためと思って頑張って…………そろそろ行かないと」
「……え?」
突然、雰囲気が変わった。
「クラウスくんが死んだ。早めに終わらせないと行けないから、僕は先に行く。後で色々連絡するから!それじゃ!」
「ちょ、ちょっと!」
そう言って、意味も分からぬままどこかへ行ってしまった。
だが、それよりも。
クラウスくんが死んだ。
その一言が、胸の奥に深く刺さる。




