22話 真の敵
--クラウス視点--
「……う…………ううん…………」
目が覚めた。
寝ぼけていて記憶が曖昧だ。
ここはどこだ?
……どこだ?
しばらく時間が経ち、寝ぼけが直った。
確か拉致られてどこかに連れ去られたのは覚えている。
その先は覚えていない。
ただ、真っ暗で何も見えない。
「誰かいるか!?」
声に反応したのか、照明が付いた。
辺りを見渡しても、ただ広い部屋に閉じ込められたという情報しか手に入らない。
『おはよう。気分はどうだい?』
少し上の所にある窓が開き、そこに人が何人もいるのが見えた。
その中でリーダーのような人物が話しかけてきた。
「どこなんだここは!」
『質問には答えない、か』
窓に近づこうと思ったが、足に鎖が付けられて動けない。
「お前ら一体何なんだよ!これから何をするんだよ!」
そう言った後、窓の中に俺をこの場所に連れ去ったノージン・オリスがいた。
「おいお前………!何でこんなことしてるんだよ!」
『……………………』
「ここで何やってるんだよ!こんな意味分かんない所で意味分かんないことをして!」
『それに関しては私が答えよう。彼は元から我々の仲間、いや、同志だ』
「同志?」
『そうだ。お前たちの仲間でも、サポートしてくれる存在でも何でもない』
「何でだよ……」
ショックだった。
関わりがあったが、密接な関係とは言えない。
ただの仕事仲間というイメージではある。
それでも、ショックだった。
「…………言ったよな?お前のお兄ちゃんは死んだって」
『らしいな。もちろん―――』
リーダー格の人物が答えたが、これはお前に言ってるわけじゃない。
「お前の兄は!俺を庇い!人々のために死んでいった!人を護るために死んだんだ!兵器にやられて死体すらも残ってないだろうけど、それでも!あの人は立派だったのに!」
『………………は?おい、ちょっと待て』
向こうで、急に慌ただしくなった。
明らかに様子が変わった。
『本当にお前を庇ったのか?人のために死んだのか?不慮の事故でも何でもなく?』
「そう言ってるだろ!ガイトさんは立派だったんだ!凄い人なんだ!」
『どういうことだ……?……まさか自我が芽生え、裏切った?』
『ここ数日の様子は特に何も変わったことはありませんでした。自我が芽生えた様子はありません。逐一行っていたメンテナンスも全て正常でした』
『裏切ったわけではない。だとしたら………………まさか、偽物?』
自我が芽生えて裏切った?
メンテナンスって?
偽物ってどういうことだ?
聞こえてくる会話を聞き逃さないようにしているが、話している内容が理解不能だ。
『偽物って、そんなわけないじゃないですか。一連の流れの会話も全部盗聴して確認したじゃないですか。あの人はこの世界にいなかった。そうですよね!?』
『波長も、確かに向こうの世界の物でした。間違いはありません』
『ならやはり自我が芽生えた、というのが有力か。自我が芽生えて人を助ける行動に出た―――――いや、待て。だとしたらなぜ尚更人を助けた?この世界の人間の正体を知ってるはずなのに』
『奴等はそれでも生きている人を優先したんじゃないですか?』
この世界の人間の正体?
さっきから一体なんなんだ?
『もう1回、最初から調べ直してくれないか?』
『分かりました』
数分。
その間特に話が無い。
謎の単語や機械音が聞こえて来るだけ。
何を調べているのか、俺には全く分からない。
マイクが切れたので、その後の会話は良く聞こえなかった。
『一応君に確認するが、魔物や魔術についてどれくらい知っている?』
久しぶりに聞いた言葉は、そんなものだった、
「全然知らねぇよ!何も知らない相手を俺達は相手してんだよ!」
『そうか……なら、我々が魔物を作っているのは知らない、か』
ちょっと、待て。
今―――
「おい…………待て…………今、魔物をって、言ったか?」
『言ったな』
「何でそんなこと俺に言ったんだ!?」
『さぁ?どうしてだろうな』
どうしてだか想像ができない。
目的が分からない。
だから聞きたいこと、全部聞いてやる。
「お前らが、魔物を操ってるのか?」
『だったら何だ。お前は黙って―――』
「母さんや友達は魔物に喰われて死んだ!大勢死んだんだ!」
怒りが収まらない。
コイツ、どれだけの人が死んだと思ってるんだ。
「お前らがこんな意味分かんないことしてなかったら……!お前らの、せいで!!!母さんや友達を!返してくれよ!同じ人を殺して何とも思わないのか!?」
『お前が!人間を語るな!』
………はぁ?
『この世界の人々はちゃんと、生きている人間だと理解はできた だがお前だけは!お前なんかが!こんな、呑気に生きてて……!なんで……なんで…………妻と子供を……返してくれよ……」
……何を……言ってるんだ……?
「そっくりそのまま返すぞ。同じ人を殺して!何とも思わないのか!お前は!』
…………これ、俺に言ってるん、だよな?
俺が……何かしたのか?
そんなこと………………
何も覚えていない。
何も知らない。
けれども、その言葉に何も偽りはないと感じてしまった。
「…………………………ごめん、なさい。何も、分かりません」
『木原さん、落ち着いてください』
近くにいた人が話しかけ、その言葉で木原という人は落ち着いた。
『……すまない。取り乱した。とにかく、私は君のことが嫌いだ。死んでほしいとまで思っている。そこは理解して頂きたい』
というか待て。
木原?
日本人じゃないのか?
「ここは日本なのか!? 一体どこなんだ!?」
『答えるはずないだろう』
それはまあ、確かに。
『何者かに侵入されました!』
『奴か!?』
『今調べ…て……これって……』
『奴か!早く殺せ!何としてでも、このガキと接触させるな!』
誰だ?
誰が来たんだ?
これは逃げるチャンスではあるのだが、足の鎖が外せなくて逃げられない。
剣があれば切れるのに……
『……の拘束を解除しろ』
あまりに小声でよく聞き取れなかった。
『解除してどうするんですか!?』
『このガキを殺す!いいな!?それで!』
『そんな……そしたら私たちは何のためにここまで―――』
『全て消滅するはいいだろう!?やるんだ!』
会話の意味が分からない。
けど、逃げなければいけないのが分かる。
剣があればこんな鎖……!
剣さえあれば―――
その時、気を失うかのような、
でもそれとも違うような不思議な感覚を味わった。
『おい、待て!あれは!』
そして突然、目の前に剣が現れた。
父さんから受け継いだ、あの剣が。
『アイツと同じ事をするのか、コイツも……!』
アイツとは誰だろうか。
そんなことを考えながらも、腕の代わりに口で剣を咥えて鎖を斬る。
『マズいですよ!どうします!?』
『拘束の解除はまだか!?』
『あと11秒です!』
逃げるなら、今この瞬間のみ。
深呼吸して……
集中
『こっちに来る!』
『一旦逃げるぞ!』
『了解!』
窓を割り、別の部屋に侵入した。
「く、来る……!」
「止まるな!」
「撃てーッ!!」
待ち構えられていた人たちに一斉に銃弾を喰らった。
「フフフフ……」
「?」
「ハハハハハッ!!いいねェ~こういうのォ~!逆らう奴全員殺すから覚悟しろよォ~?」
「ヒィッ!」
「コイツ!腕も再生しやがった!」
「覚醒……?まさか!早く殺せ!」
「今拘束解除できました!」
「聞こえるか!?今すぐコイツを喰え!」
「誰に言ってるんだァ〜?おいィィ!」
「嫌だっ!来ないで!」
その言葉で、我に返った。
「なんだったんだ?今の……」
頭がおかしくなったのか?
何か、別の……
「今だっ!殺せーッ!」
ふと後ろを見る。
大きく口を開けた白い奴がいた。
1秒もしない間に、俺の首に牙が当たる。
あ、死んだ。
―――1036年4月11日 14時32分56秒 死亡




