20話 全てを託された少年
--クラウス視点--
「そういえば、レイドさんって杖とか使わないんですか?」
準備中、前から疑問だった事を聞いた。
気持ちを和らぐためでもあったが。
「杖……?なんで?」
「いや、魔法使いって杖を使うイメージじゃないですか」
「いや、使わないと思うけど」
使わないのか……
「魔法使いは大体手ぶらだよ。僕はこの指輪を使って魔力を集めやすくしてるけど」
その指輪ってただのアクセサリーじゃなかったのか。
「じゃあ、指輪ありとなしじゃ全然強さが違うんですか?」
「結構変わるね。というか連射速度が5倍、いやそれ以上に違う」
そんなに変わるのか。
凄い。
「さてと、僕は先に行ってるよ」
「はい!よろしくお願いします!」
……頑張らないと。
今も死体処理をしに行っている人ばかりいるんだ。
人だけじゃなくて魔物の死体も結構転がってるから大変な思いをしてるんだ。
本当に頑張らないと。
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「そろそろ時間だね。父さん」
「ああ、あまり緊張し過ぎないようにな」
『ただ今より 午後9時ちょうどをお知らせします』
来た……!
「時間です」
「攻撃を許可する!」
「了解!射撃開始!」
『了解。射撃開始』
全世界の武力行使が始まる。
攻撃は結界の外で行っている。
それなのにここまで伝わる、爆音・地震・衝撃
「目標の損傷、確認できません!」
「構わず撃て!間髪入れるな!」
それでもダメージは通らない。
『KIAAAAAAAAAAAA!!!』
敵は大きな奇声を上げた。
「目標、反応あり!」
「目標から高エネルギー反応!」
「攻撃来るぞ!備えて!」
敵の皮膚が剥がれ、無数の触手が出てきた。
無数の触手の先端から、無数のビームが放たれた。
「第3陣営全滅!」
「クーネリア、及びエラサイトの2国の第1陣が全滅しました!」
「目標の攻撃終了まであと38秒!」
敵の攻撃が終わるまであと38秒もある。
軍は耐えられるだろうか?
「10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、目標 活動停止!」
「レイドくん!今だ!」
俺の目の前に再び裂け目が現れる。
「ルーク!クラウスくん!早く!」
「お兄ちゃん頑張って!」
「頼むぞーっ!」
「頑張れー!」
返事の代わりに、拳を高く上げた。
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「ここが、アイツの口の中……?」
「そうだ。コアはこの先にある」
気味が悪い。
何だか気分も悪くなってきた。
でも、やらなければ。
『コアは喉の奥にある。それらしきものを見つけ次第連絡を』
「了解!」
「って、これじゃないか?」
思ったよりすぐ見つかった。
あとはこれを―――
斬れ
斬れ
斬れ
斬れ
斬れ
斬れ
斬れ
斬れ
斬れ
斬れ
斬れ
斬れ
「……! コイツはっっ!殺さないとダメだーッ!!」
「!? クラウス!どうした!?」
父に羽交い締めをされ、止められた。
そのおかげで我に帰ることができた。
「何があった!?」
「分か、らない」
何があったかの記憶が無い。
何をされたかの記憶が無い。
何を思ったかの記憶が無い。
「……行けそうか?」
「やってみる」
このコアを刺激する。
今持っているこの剣で、ヒビが入る程度の、だけど破壊しない程度の力でやる。
時間的にチャンスは1回。
「うわっ!」
『目標、活動再開!』
『クラウスくん!早く!』
再び動き出したため、上手く立ってられない。
このまま体内に落ちそうになる。
でもやらなきゃ。
今やらなきゃ、みんな死んじゃう。
やれ!
戦え!
「うああああああああっっっ!!!」
飛び上がり、コアに近づいた。
加減しろ。
コアの硬さは石よりは柔らかい程度と聞いた。
同等の硬さの物を使い、何度も練習した。
何とか、何とか……!
「いっけえええええええ!!!」
剣を振った。
コアに攻撃を加えた。
「うわっと……コアの状況は!?」
体勢を立て直し、コアの状況を見た。
「ヒビが入りました!コアは……大丈夫そうです!」
『『『うおおおおおおお!!!』』』
通信越しから歓声が聞こえる。
『GAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!』
『僕だ。敵がこちらの世界に戻ってきている。君たちは急いで逃げて』
神 ゼウスから連絡が来た。
逃げなければ。
目的はもう達成した。
早く。
「……ああっ!」
触手に足を掴まれた。
逃げられない。
「クラウス!」
父さんが戻ってきて、触手を斬ってくれた。
「ありがとう」
「いいから逃げるぞ!」
「2人とも!こっちです!早く!」
あと、ちょっと……!
「あっ…………」
父さんもレイドさんも裂け目の向こう側に行き、俺も行こうと思った。
その瞬間、触手が俺の左腕を掴んだ。
「クソッ!またかよ!」
「クラウス!今行―――」
「ダメです!コイツの口が閉じたら魔力が遮断されて元に戻れなくなります!今行ったら!」
「だが!」
出口はどんどん狭くなっていく。
「クソッ!抜けろ!抜けろッ!」
力強く引っこ抜こうと思っても抜けない。
どんどん触手が絡みついてくる。
…………
……………………
……………………
…………覚悟を決めろ!
「うああああああッッッ!!!!」
掴まっていない右腕で権を握り、自分の左腕を切断した。
「ァァァァアアアアアッッ!!!!」
「クラウス!早く!」
痛みを我慢し、走り出す。
あとちょっと……あと、ちょっと……!
「限界です!裂け目閉じま―――」
裂け目が、閉じてしまった。
口はなんとか開いていたままだったので、俺は勢い余って外へ飛び出した。
痛みで意識が朦朧とする中、俺は上空から地面へと落ちていった。
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………………………あれ?
俺、まだ、生きてる?
落ちたのは覚えてる。
その後は覚えていない。
ここはどこだ?
首が動かせる範囲で辺りを見回す。
家の残骸やら、破片やらが落ちていた。
どこかの穴に落ちたようだ。
穴と言っても、深さは4mとかくらいだ。
「いた……!クラウスくん!聞こえるかい!?」
あの人、誰だっけ?
見たことはある、ような。
……ああそうだ。
入団試験の時に色々やってくれたギルドメンバーの人だ。
名前は確か、ノージン・オリスだっけ?
「聞こえます……」
出た声は、あまりに小さなものだった。
あの人には声、届いているだろうか?
「奴は……どうです?」
「倒したよ!もうここには魔物も1体もいない!」
「そう、ですか………!」
勝った。
今度こそ、勝利した………!
「……手を伸ばせますか?掴んで引っこ抜きますから!」
残った力で、残った腕を伸ばす。
腕が1本なくなった。
父さんには何て言おう。
エリスには何て言おう。
……考えるのは後でいい。
ようやく助か―――
次の瞬間、腕が落ちていくのが分かった。
……痛みは遅れてやってきた。
伸ばした腕も切断された。
助けてくれるはずだった、ノージン・オリスという人物によって。
腕は2つとも無くなった。
段々と消えていく意識にそれだけが強く残った。




