18話 作戦会議
「あれは……何?」
あまりにも巨大。
「おい……あれ……」
奴は口を大きく開けた。
結界を丸ごと喰うかのように大きく口を開けた。
そして、何度も何度も噛みついてくる。
「何なんだアイツ!」
『全軍撤退!直ちに撤退せよ!』
撤退命令が出た。
訳も分からない敵を残して。
--ライン視点--
「では、未確認生物の詳細について。とりあえず現状の報告から頼む」
「未確認生物が出現して1時間27分06秒。現在100層ある結界のうち3層が破壊され、このペースだと44時間06分57秒後には結界は完全に破壊されます」
「……時間はあまり残されてない、か。相手の目的も分からない。こりゃどうも……」
「攻撃の許可をお願いします。倒せる可能性は僅かだとしても、賭けましょう」
「……攻撃を、許可する」
「撃てーーーッッ!」
ミサイルやら弾丸やらが一斉に撃ち込まれる。
だが奴に効くかどうかだが……
「全弾命中!」
「……どうだ?」
「頼む……」
煙で様子が分からないが……
「敵、損傷は確認できません!」
「クソッ!」
「やはり攻撃は効かない、か……」
「人類はこんな所で、滅んでしまうのか……?」
その攻撃は街1つ吹き飛ぶレベルだったが、ビクともしない。
「レイド、どうだ?」
「勝てる見込みはありませんね。魔法はあくまで、未知な部分が多分に含まれている攻撃手段。この状況を何とかできるような便利なものじゃありませんから」
確かに、魔法と言えど国レベルの軍事兵器には火力は劣る。
奴に対話は不可能。
武力による勝利以外は有り得ない、が。
どうしたものか。
「とりあえず、世界各国に連絡だ。内容は、言わなくても分かるとは思うが」
---
『あーあー、聞こえるか?』
「!? ゼウス様!?」
「音量を全員に聞こえる位上げて!」
白色の魔物について連絡して以来あまり音沙汰は無かったが……
連絡が来たのは突然で驚いた。
『君たちの世界に突如出た巨大な敵。それは僕達の不始末によるものだ』
「……え?」
『君達から見ると、顔だけしか見えないと思う。では体はどこだ?答えは、僕達の世界にある、だ』
「何だって!?」
『この間抜けな姿を君達にも見せたい所だが、まあいい。アイツにはまだ隠された力がいくつか残ってる可能性が高い。それでこっちではアイツを研究対象にしようとか言ってるバカがいるんだよ』
「実験対象に……神々の技術はそんなことが出来る程進んでいるのか?」
『敵の詳細についてだが、何といえばいいのか。生物兵器?とも違うな。まあいいや。白い奴や魔力が1か所に集まって出来た最強の敵、と言った方がいいか』
「最強の敵……」
『最強と言っても、通常個体みたいに魔力があっても再生はしない。圧倒的な防御力と攻撃力を備えているという単純な理由で最強なんだ』
攻撃もするのか。
だとしたらマズイ。
世界各国の軍事力を用いて倒そうと思ったが、だとしたら―――
『攻撃方法は魔法だが、アイツは魔力を取り込む生物だからあまりしないな』
「………………」
分からない。
倒せるのかどうか。
『君たちは倒したい。そしてこっちは研究したい。そこで、だ』
「何を……?」
『こちらの世界とそちらの世界、同時攻撃を行う』
--クラウス視点--
「アイツ……何なんだろね?」
「さあ。ただ、俺達がどうこう出来るような相手じゃない。あとは任せよう」
「そう、だね」
せっかく久しぶりに家族が集まってるというのに、全く安心できない。
「それで、やっぱり……母さんは……」
「……うん。4年前に……喰われた」
「……そうか。辛い思いさせちまったよな」
「俺はいいんだよ。確かエリスはその瞬間見てなかっただろうし」
「目の前で喰われたのか?」
「うん。母さんが俺達のことを逃がしてくれて、振り向いたら、もう……」
「……そうか」
しばらく無言の状態が続いた。
「………クラウス」
「何?」
「母さんが繋いだ命、大切にしろよ?」
「……………………」
「今回の戦いで亡くなった人もそうだ。大切な何かを守ろうとして死んだ。そして、守ることが出来た。それについては誰も公開していないはずだ。だから、もう泣くな」
「………分からないや。死をそんな美談なんかにすること自体」
「………人はいつか死ぬ。どう死ぬかはほとんど決められない。その人達がどう行動したか、それを大切に考えてくれ」
正直、そう言うのは分からない。
ただ俺は、人を助けたいって思って行動してるだけ。
生き残りたいから必死に逃げる人もいるだろう。
「…………やっぱり、分からない」
「すぐには分からなくていいさ。とにかく、俺が言いたいのは、貰った命の使い道を考えろってことだ」
「命の、使い道……」
今はまだあまり分からない。
そう考えるのは良いことなのかどうかも分からない。
けど、今は何となく、その考えを分かりたいと思っている。
「とりあえずご飯、食べよっか」
「そう、だね。お腹、空いたね」
しばらくはお通夜ムードが漂っていたが、その後ご飯を食べながら色々と雑談を交え、その場の雰囲気が明るくなった。
エリスも少し明るくなった気がする。
前よりはかなり楽になったのかな。
「……それで、お父さん。この4年間、何してたの?」
エリスは疑問を父さんにぶつけた。
俺も気になってた。
けど、帰ってくる答えは多分-――
「すまん。分からないんだ。あれから体感だと数時間くらいなんだが、4年も経ったなんて、今でも信じられないんだ」
「う~ん?どういうこと?」
「俺も分かんない」
一体何が原因なんだろうか?
分かる日は来るのだろうか?
「クラウスくん。いいかな?」
「はい。どうしました?」
「君にはあの巨大生物を倒してもらう」
結界を覆う程巨大な生物を俺が倒す。
そんなのもちろん―――
「無理無理無理。無理ですって!どう倒すか分からないし………」
「奴の体内にある核を攻撃する。これが撃退方法だ」
--ライン視点--
「……やはり、ベルフェルトにも協力を要請するしか」
「ベルフェルトって、ここと同等かそれ以上の科学力を持つ国でしたっけ?」
「亡命者の話によるとそうらしいな。ベルフェルトには直接出向くしかない」
「ベルフェルトの情報が全くないのに、どうやって?」
「………冒険者の中にベルフェルト出身の者がいる。その者と一緒に行く」
だとしても、心配には変わりはない。
ベルフェルトの情報は全くと言っていい程無い。
それでも、リスクを背負ってでも協力してもらわなければならない。
「ベルフェルト出身って……」
「名は、カイル・ベルフェドラ。レイドくんの実の弟だよ」




