17話 最終決戦
--カイル視点--
「ハァ………ハァ………」
結構逃げたな。
見つかったら手あたり次第倒し、逃げての繰り返しで何とかまだ生きているが。
「にしても、あの新種あまり見掛けねぇな。分裂するんじゃなかったのか?」
確かにあまり見ていない。
一体何があったのだろうか?
「あ、あの……」
「……!?誰だ!?」
知らない人の声が聞こえた。
「B班の人達ですか?」
「もしかして、シリンダー回収のA班か?」
「はい。他の仲間は全員やられましたが、自分だけ生き残ったという状況です」
そう説明したその人の目には、うっすら涙が溜まっていた。
「そうか……辛かったな……だけど今は我慢してくれ。生き残るのが大切だ」
「ですが、かなり数が―――」
『A班と位置情報が非常に近いようだが、合流したのか?』
「はい。他のメンバーは亡くなったそうです」
『やはりそうか……それとは別に、重要な話がある』
「なんでしょうか?」
『セントラルタワー内部に残った魔物の討伐は一旦後回しにして、外に出て避難するんだ』
「え?セントラルタワーは特殊な素材を使用しているから破損は少ないんじゃ?」
『それが、例の新種はその特殊素材を破壊することが可能らしい。ある程度は耐えられるらしいが……』
「何ですかそれ!?」
『新種が散々破壊した影響でセントラルタワー自体の損傷が激しいため内部にいれば死亡する可能性が出てきた』
「再生力が半端ない、討伐は特殊な条件下のみ、分裂できる。新種強すぎません?」
『……気持ちはわかる。とりあえず1階にある地下室から下水道を通って逃げて来てくれ』
「地下室なんてあったんですね」
色々とマズイ状況になっているな……
けど結界を閉じる前よりはかなりマシになった。
行ける……!
『それと、カイルは魔力の吸収、魔術として放出してくれ。レイドさんから直々に話が来た』
予想通り、か。
確かに魔術に関しては人一倍出来ると思う。
その理由はもちろん―――
「……よし、じゃあ俺達は何とかして下に降りて地下室に行って逃げると」
「とは言っても、階段には魔物が結構いたよね」
「それなんだよなぁ……」
下に降りる手段は階段とエレベーターしかない。
その内階段は使えないから……
「やっぱりエレベーター使います?」
「エレベーターが動いてるわけないでしょ……」
……いや、待て。
危険だけどこの方法なら。
「エレベーターを吊るしてるロープを切って非常レバーを引いて降りるって方法はどうでしょう?」
「あぶねぇなーそれ。それ以外の方法が思い付ければいいんだけど……」
こんな状況なので皆あまり頭が働いていない。
そんなこともあって、これ以上の案が出ることは無かった。
「仕方ない。エレベーターは確か……なんだ。すぐ近くにあるじゃないか」
「私が行く」
セレナさんがエレベーター内に侵入し、非常レバーの場所を確認する。
「これか。じゃあ皆乗っ―――」
「来た来た来た来た!魔物が一気に来た……!」
「早く乗って!」
その時、自分の頭の中にとある行動が浮かんだ。
「先行って下さい!」
「カイルくん!君も重要人物なんだから早く乗って!」
「ここは任せて先に行け!です!」
「……何か思いついたのか?大丈夫なんだろうな!?」
「多分ですけど!」
魔力を大きな音に変え、魔物の注意を引く。
「GAAAAA!!」
「来た来た……!」
大量の魔物を引き連れて、近くの窓ガラスを突き破って外へ飛び出した。
「何やってん―――!」
僕は魔術師。
空を飛べる。
落下死することは無い。
けど魔物は落下死する。
先程までいた魔物は全て僕と一緒に飛び出したのが確認出来た。
落下しながら左手を上に、右手を下に向けて大規模魔法を放つ準備をする。
落下死はしないと言ったが、放つまでは他の魔法は使えない。
可能性はある。
タイミングをよく確認して―――
「ここっ!!」
魔法を放ったのは一瞬。
だがそれで上から降って来た魔物、下に溜まっている魔物を沢山倒すことが出来た。
体勢を立て直し、魔法を使って空中に浮いている状態を保つ。
「……よし!一掃!」
--ロイター視点--
「すげぇ……」
「マジか……」
「あー。あの子みたいに空飛べる人いる?……いないよね」
「無理に決まってんじゃん……」
「だよね……さ、切り替えて早くエレベーターに乗って!俺がロープを斬る!」
「え?あなたはどうするの!?」
俺はどうするか。
そんなの決まってる。
「俺は魔物を倒しに行く。結界の操作盤が破壊されたら大変だ。しかも、強力な兵器がここにはあるんだってな!」
「それじゃあ―――!」
「前に言ったよな?俺の夢のこと」
「あ、うん。確か、大勢の人を護る―――」
「そんな英雄に憧れたんだ、俺は!ルークさんの称号授与式を見て以来!ずっと!」
「でも―――」
「全員乗ったな!落ち始めてから2秒後にレバーを引けよ!」
直後、俺はロープを切った。
「GRUUU……」
「結構、いるな。操作盤の場所は22階と23階の非常階段の間にある空間、だったよなぁ!!」
それに、病死した母さんと約束したんだ。
~~
「将来の夢、明日学校に提出でしょ?決めたの?」
「うん!俺、冒険者になる!それで、皆を守る英雄になりたい!」
「そう……じゃあ、頑張ってね……」
「うん!」
「――ろ!―――!お―ろ!起きろ!」
「………父さん、どうしたの?」
「母さんが息をしてないんだ!」
「……え?なんで……?どう、して……?
ああああああああああああああ
~~~~~~~~~~~~~~~~~
ああああああああッッ!!俺はただではっ!死なんぞおおおおおお!!」
--クラウス視点--
「はあああっっ!!」
敵への斬撃が段々と増えている。
少しづつ、少しづつダメージを与えられている。
敵が再生するより俺が攻撃をする方が僅かに早い……!
けどもっと早く!
もっと深く!
「ああああああああ!!」
「アアアアアァァァ!!」
互いに声が荒げる。
強い確信があった。
今なら……殺せる!
「うおおおあああ!!」
俺が叫んだと同時に、とても大きな爆発音が聞こえた。
でも今は振り向いてる場合じゃない……!
「クラウス!セントラルタワーに集まった魔物への攻撃が始まった!」
「ようやくか!」
事前情報通りなら、今はミサイルやら銃弾やらレイドさん達が放つ流星群のようなものが降り注いでいるはずだ。
皆頑張ってるんだ。
俺だって、コイツを倒す……!
「あと少し!あと少し!!」
「クソ……!コレでも……!!」
直後、相手の皮膚の一部が触手に変化した。
「何だそりゃ!?」
「死ねェッ!!」
触手の先端からビームのようなものを放ってきた。
触手が計4本生えているから、避けるのがギリギリになる。
この状態が続けばいずれ死ぬ……
「けどっ!俺自身がお前への唯一の対抗手段なんだ!死んでられっかよ!!」
避けながら少しづつ敵に近づく。
ほんの少し。
それがどれほどこちらが有利になる行動か。
「いっけええええええ!!」
最後の一振り。
今ある力を全てコイツに捧げる……!!
「…………ニッヒッヒ。残念。時間切れダナァ!」
「はぁ!?」
そう言うと、ソイツは消滅した。
それまでいなかったかのように、何も存在しない。
「おい……魔物も消滅して行くぞ?」
「え?……本当だ。一体、何が……」
辺りを見渡しても何も存在しない。
一体、何が……
「………!!え?嘘……なんだ、あれ………」
突然、周りが薄暗くなった。
理由は真上を見たらすぐに分かった。
真上には全身真っ白な、巨大な人間。
世界を覆う程巨大な結界を覆う程、巨大な人間。
あまりに巨大。
ここアルケニアからじゃ、右目部分しか見えない。
「白い、人間のような生物……まさかあれが……アイツ……なのか?」




