16話 仇討ち
「父、さん……」
「それで、大丈夫か?」
「ごめん。ちょっと無理そう」
「分かった」
そう言うと、素早く俺を抱きかかえた。
「しっかり掴まってろよ?」
「わ、分かった」
ここまでの間も魔物も襲ってきた。
それも全て父さんが倒してしまった。
父さんに掴まって見えた景色は、俺が走っているよりも素早く切り替わる。
俺が走っていても、父さんはもっと先にいる。
全てにおいて、俺は負けている。
「凄いな、父さんは。やっぱり」
「………クラウス」
「何?」
「この戦いが終わっても、冒険者をやめるつもりはないか?」
「無いよ。俺なんかが助けられる人の数なんてそんなに多くないと思う。けど、それでも」
「………分かった。お前のことはお前に任せる」
自己責任、か。
………………頑張らないと。
「とは言っても、一番最初に冒険者になろうって思ったきっかけは復讐だったんだ。俺達はこんな思いしてるのに、のうのうと生きてるアイツらが、今でも嫌なんだ」
「……そうか」
俺にとって復讐と人助け、どっちの方が大事なんだろう。
最初は、本当に最初は復讐の方が強かったと思う。
段々と人助けをしたい方が大きくなったけど、仇そのものと出会った今は……
………分からない、なぁ……
「痛いけど我慢しろよ?」
「…………イッッッッ!!」
「これでしばらく経ったら少しづつ楽になるから、そうしたら移動するんだ」
「分かった」
「直りを早くする効果もあるけど、そっちはあんまり期待するな」
「大丈夫。効き始めるのはどれくらい?」
「30分か1時間かそれくらい。魔物が近づいてきたから行ってくる」
「行ってらっしゃい……」
俺も早く移動しないと……
「おいおい、どこに行くンだァ?大して動けネェくせによォ!」
また白色の奴が来た。
「まだ来んのかよ!」
「当たり前ダロウがッ!なあ相棒!?」
「相棒……?」
…………まさか!
近くに仲間が!?
「…………いない」
いや、どこかに隠れてるか?
だとしたら逃げないと。
「逃げるナッて、行ってロウだろウガよォ」
「うわっ!」
巨大な手が振り下ろされる。
振り下ろされた場所にはヒビが入っている。
回避出来なかったら死んでいた。
「動けるジャネェか」
何としてでも逃げないと。
俺が倒されたらこの白い奴を倒せる人がいなくなる。
何故だか、この白色の魔物を倒せるのは俺だけだから。
「やられるくらいなら!やってやるっ!!」
痛みを我慢し、全力で歯向かう。
立ち上がって、右手に持った剣を相手の腹部に突き刺す。
「………あァ?」
相手の目がギロリと俺の方を向く。
クソ……足りない。
深さが足りなかった。
「邪魔クセェッ!!」
「ぐほっ……!」
思いっきり腹を殴り飛ばされた。
たった1撃のパンチが非常に重く、数mまで吹き飛んだ。
受け身を取らなくては死ぬ……
早く……!!
「チィ……くたばンなカッタか……」
「そう簡単に死にたくねぇもんな!」
簡単には、死にたくない。
もう前世に未練を残したまま死にたくはない……!
「行くぞおおおおおお!!」
コイツには右手に持ってる父さんの剣しか攻撃が効かない。
いつもの癖で左手で攻撃しないように気を付けないと。
「ウラァァァ!!」
コイツは殴る蹴るの打撃攻撃しかない。
けど威力と速度が半端ない。
だから回避をし続けて隙を狙って攻撃するしかない。
「ァァアア!!」
今だ……!
「はああッッ!!」
「ンがッ!!」
しっかりと相手に攻撃が効く右手に持つ剣で攻撃をした。
通常の攻撃と違い、すぐには再生する様子はない。
斬った跡が数秒経った今でも治る様子はない。
けど攻撃が浅かった。
次はもっと深く、もっと強く―――
「AAAAA!!」
「えっ!?」
魔物の接近に気付かなかった。
しゃがんで回避した直後、斬り上げて真っ二つにした。
1体倒したら、もう1体いるのが見えた。
いや、2,3……どんどん増えてる。
「こんなに……あっ」
後ろに跳んだことで、振り下ろされた拳が当たることは無かった。
アイツの存在を忘れてた。
白色の魔物が一番厄介なのに忘れてしまうなんて。
「流石にこの数……!」
いや、魔物がいる奥の方から誰かが来る。
「たあああああっ!!」
「良かった!また会えた!」
「悪い。魔物の討ち漏らしがこっちに来てしまった」
「大丈夫!俺はまだ生きてるよ!」
「でもそんなに動いて足に負担が……あれ?」
父さんの様子がおかしい。
「どうしたの?」
「お前、足治ってないか?」
「え?」
そう言われ、負傷した足を確認した。
魔物に腿の肉を喰われたはず。
しかし、そんな大けがは見当たらない。
元々そんな怪我をしていないと勘違いしてしまう程、しっかりと治っている。
「本当だ。治ってる……」
「何という事だ……体は、何ともないのか?」
「うん。やっぱり父さんがやってくれたあれのおかげ?」
「いや、それはないな。まあ、大丈夫なら、いんだが………本当に―――」
「だーかーら!大丈夫だって!」
体は大丈夫。
だけどこんな意味不明なことが起こって内心ビビッてる。
「じゃあ、俺は魔物を倒しとくから、お前は仇討ってこい!行け!遠慮なく!」
「了解!」
--カイル視点--
「あ、来たみたい」
セレナさんがそう言った数秒後、どこからともなくレイド・ベルフェドラが現れた。
「結界の操作盤は?」
「この部屋の中です。あ、扉は開けないで下さい。事情は聞いてますよね?」
「分かってる」
そう言って、しばらく無言で目を瞑ってじっとしていた。
恐らく操作盤の正確な位置を確認しているのだろう。
「……じゃあ、やるか」
直後、転移魔法を発動した。
目の前にある穴の奥には操作盤らしき装置が見える。
「これかな?」
「恐らく」
「結界の操作は……初見でも分かるように出来てるみたいだね。これなら操作は簡単そう」
「操作自体は簡単ですか。では、お願いします」
遂に結界が閉じられる。
これでかなり動きやすくなるが……
「……出来た」
そう言い、すぐさまサーディアを通じて報告する。
「操作盤での操作は完了しました。結界の様子はどうですか?」
『…………成功、のようだ。徐々に結界が閉じていくのが見える』
「………!なら良かった」
これで何とか上手くいけばいいのだが……
「じゃあ僕はこれで。君たちはタワー内部に残ってる魔物を倒してくれ。カイルは連絡が来たら外へ」
「「ありがとうございました!」」
………行ってしまった。
まあ、忙しいのだろう。
「それじゃあ、皆と合流しますか」
「そうですね」
「じゃあ、これで合流できたね」
「え?あっ!生きてたんですね!」
「当然!」
ロイターさん達がここに来た。
わざわざ探す手間が減って助かる。
「じゃあ、魔物を倒していくか。白色は俺達には倒せないから、見つからないようにな」
「あ、僕は外に行かなきゃいけないみたいで」
「確かに、魔術に関しては凄かったからね」
「えへへ……ありがとうございます」
「とりあえず、俺達は中に残ってる魔物を倒すか。結界が閉じるまであとどれくらいだ?」
「あと5分から10分くらいだと思います」
「思ったより早い……」
「じゃあさっさと魔物を倒しちゃいますか」
セントラルタワー内部にはどれほどの魔物がいるのだろうか。
僕たちでは倒せない、白色の魔物と出くわしたら最悪だ。
「とにかく、慎重に、慎重にだ。絶対に魔物に気付かれるなよ?」
「後ろにいるよ!」
「あぇ?」
「AAAAAA!!」
魔物に気付いてから1秒もしないうちにその魔物を倒した。
今回は通常の魔物だったが、他の魔物を呼ばれてしまった。
その内、新種も来るかもしれない。
「ま、まあ、新種じゃなくてよかった。魔物も大型以外だったらすぐに倒せていいね」
「他の魔物も呼ばれたけど」
「魔物の厄介な所、分かってる?」
「圧倒的なまでの数……だね。う~ん結構来てるね……逃げるか」
どうしてこうなるんだろう……




