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オラシオン  作者: とりあえず全国の山田に捧げる
2章 アルケニア
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9話 勝利宣言

「もしもーし。誰かいますかー?」



返答はない。

しばらく時間を掛けて探したが、1階にも2階には人がいないようだ。



『緊急連絡。緊急連絡。各員に告ぐ。何者かが地下秘密軍事基地に侵入された模様。至急、地下軍事基地へ向かってください。位置情報を共有します』



何やら大変なことになってるな………

基地の場所が共有されたが、ここからは遠くて行けそうにない。

今回は他の人に任せるか。



「GAAAAA!!」


「現れたなぁ!?ああああっっ!!」



魔物を1体撃破。

他に魔物はいないようだ。



「じゃあ3階か」



人がいる3階へ、階段を利用して登る。




---




「誰かいますかー?」


「………!います!ここにいます!」


「助けが来たんだ……!」



声が聞こえた。

やっぱり人がいるんだ。



「大丈夫ですか?助けに来ました!」


「え………?子供?」


「なんだ………クソッ………」



凄い露骨に落ち込んでるな。

どうしようか………


………そうだ。



「俺はこれでも冒険者(志望者)です!飛び級しまくってさっさと義務教育終わらせて最年少で冒険者になったんですよ!」



平然と嘘をついていることになるが、仕方が無い。



「この戦いで魔物を何体も倒して沢山の人を助けてる実績があります!安心して下さい!」



これでどうだろうか?



「でも………」


「大丈夫なのか………?」



あー信じてないなーこれ。



「………あ、思い出した!クラウスじゃないか!」


「え?………あ、ゾルア!久しぶり!」



そこにいたのは、かつてのクラスメイトであるゾルアだった。

こんな所で会うとは思わなかった。



「クラウスなら大丈夫です!誰よりも頭も良くて優しくて強かった!ほら見てくださいよこの筋肉」


「やめて………それは恥ずかしいからやめて………」



こんな状況なのに面と向かって褒められたら恥ずかしい。

こんな状況なのに。



(にしても、もう冒険者になったの?早くない?)


(本当は志望者止まり。試験中にこんなことになったんだよね)


(なるほど………)


「………なあ、2階にも魔物がいたはずだが?」


「あ、俺が倒しました」


「それ先言えバカ!!」



ごもっとも………

言うのを完全に忘れてた。


言っていれば、嘘もつかずに済んだのに。

バレたら怒られるだろうな……



「俺達はこれから逃げるが、君はこれからどうする?」


「上にも人がいるか確認してきます」


「そうか。頑張れよ」


「はい!」




---




「誰かいますか?助けに来ました!」



早速4階に行き、人がいるか確認した。



「GRUUUU………」


「魔物………!」



魔物の視線の先に、人がいた。

8人以上はいるか?


魔物は、俺の方を一切見ていない。

気付いていないのか分からないが、これはチャンスだ。



「はああああっっ!!」



魔物の足を切断し、身動きが取れないようにした。



「まだ生きてるっ!生きてますっ!」


「分かってます………よっ!!」



魔物の頭を切断し、討伐。



「大丈夫ですか?」


「私は大丈夫………何人かはもう………」



死んでいる人も、生きている人もそれぞれいた。

やはり、全員は助けられない………



「……それで、どうすれば?」


「逃げてください。下にいる魔物は倒しましたから」


「………………………………」



無言ではあったが、頷いてすぐに逃げていった。


確かここ5階建てだよな。

次の階にいる人を探して戻るか。



『魔物と交戦をしている者以外は行動を止め、聞いて欲しい。15分後にわが軍の最終兵器を使用するとの連絡が国王より入って来た。今後行う作戦のため、人員は可能な限り減って欲しくない。どうか、生きて逃げて来て欲しい』



15分後に………?

するとどうなるんだ?


大変なことになるのは間違いないだろう。



「誰かいますか!?いたら返事を!!」


「は………はい!ここに―――」



直後、俺が今いる建物が破壊された。

なぜか?



「大型がなんでここに!?」



今まであまり動きを見せなかった大型の魔物がついに動いた。

個体によっては60mを超えるそうだが、この個体は20~30mほど。

丁度顔の部分が見えていて、なんだかお互い目が合っているような気がした。



「……………!!」



魔物が拳を振り下ろし、攻撃してきた。

建物は破壊され、今いる人達は混乱状態。



「早く逃げて!俺が引き付けますから!!」



残った人を逃がし、俺はどうすればいいかを瞬時に考える。

ただ見た感じ、敵は待ってはくれなさそうだ。



「ちょっと攻撃が早いって!!」



今度はただ避けるだけじゃなく、振りかざした拳に飛びついた。



「どこを攻撃すれば倒せるんだ?」



確かサーディアに大型の核を見つける機能があったような………

そう思い調べようとしたが、そんなこともさせてもらえず、振り落とされてしまった。



「いって………はっ!皆早く逃げて!」



落ちた先に、3階にいる人達がいた。

まだ逃げきれてなかったみたいだ。



「早く逃げ―――」



直後、一帯は影に覆われた。

上を向いてみると、巨大な魔物がそこにいた。


15mほどだろうか?

そんな化け物が、友人であるゾルアを掴んだ。



「うああああああ!!嫌だっ!いやだあああああああ!!」



血一滴もこぼすまいと上を向いて喰った。

溶け始めたアイスを喰うように、血を一滴もこぼさない様、友人を喰った。


高い場所にいるゾルアを、俺は助けられず、見ていただけだった。

数秒経って、俺も遅れて逃げた。

俺の友人を喰うのに夢中になっている間に。




---




「ハァ………ハァ………」



ようやく避難所に着いた。

友達を1人犠牲にして、逃げてきた。



「あれ?クラウス?」



知っている人と会った。



「ガイトさん!無事だったんですね!」


「結構な人数連れてきたな」


「はい!助けられない人もいましたが……」


「そう、か」



「クラウス!」



新たに声を掛けてきたのは、ラインさんもいた。



「エリスを見たか?」


「……え?いないんですか?」


「ああ、見当たらない。まだ避難所に来てないようだ」



エリスが?

たった一人の家族が?

死んでるわけない。



「おい!どこに行く!あと10分しかないんだぞ!?」



ごめんなさい。

俺はそれでも行きます。




---




階段を登る。

その過程で何人か死んでいるのを見た。



「エリス!」


「……! お兄ちゃん……来て、欲しくなかったな……」



生きていた。

生きていた。



「……4年前からずっと、何で私だけ生き残ったんだろうって、思ってたんだ」


「…………………」



妹の話を、黙って聞く。



「お兄ちゃんだけじゃないよ。お父さんもお母さんも、友達も死んじゃったの、なのに何で私だけ生き残ったんだろうって。みんなは頑張ってるのに、私は、何も……」


「……………………」


「生きる意味とかもう……よく分かんない……もう……消えたい……」



………俺もだ。

一度死んで、何でか知らないけど変な場所に生まれ変わって。

ようやく慣れてきたのに、いきなり親や友達が殺されて。


何度も思った。

こんな世界のことなんか知らずにそのまま死んでたらどれだけ良かったんだろうって。


けど妹がいたから頑張れた。

家族がまだ1人いたから生きていられた。

親や友達だけじゃなくて、エリスも喰われてたら、多分俺は自殺してたかもしれない。

さっきも、友達が1人喰われた。

それでも、生きようと思ったのは―――



「気持ちは……凄い分かるよ……」


「だったら来ないでよ!」


「だけど……お願い……死なないでくれ……!お前まで……死んでほしくないんだ!」



その後はしばらく、抱きしめ合った。



「お前まで、死んだら……俺は……俺は……!」


「お兄ちゃん……私、怖いよ……死ぬのも……生きるのも……」


「……分かってる」



俺はこの世で唯一死と生を両方体験している人間だから、よく分かる。

どっちも怖い。

だから、どんな状況下でも俺は無責任に“生きろ”とは言いたくない。



その時、魔物が壁を突き破ってきた。



「……!魔物がここまで!」


「……エリス、行く!?」


「でも、今からじゃ間に合わないよ。あと4分しか無いよ?」


「お兄ちゃんに任せとけ!」



そう言った直後、魔物が部屋に侵入してきた。



「GRUAAAAA!!」


「エリス!目閉じてて!」



襲ってくる前に魔物の頭部を切り落とした。



「飛び降りるよ!掴まって!」


「え?ええ!?」



剣を鞘に入れ、妹を抱きしめる。

魔物が作った穴から飛び降りた。


なんとか高架橋の上に着地し、走り出した。



「来るよ!?」


「大丈夫!このまま逃げ切れば!」



間に合え。

絶対に死なせない。

絶対に死なない。



「ここだ!」



高架橋から飛び降り、避難所付近に着地。



けど、魔物の速度が思ったより早かった。


着地しても魔物は追ってきた。

喰われる。



「伏せろ!」



直後、魔物の動きが止まった。



「ガイトさん!」


「間に合うとは思わなかったよ!早く行け!」


「俺も戦います!」



「大型が動いたぞ!」



所々に配置されるだけで一切動かなかった大型が動き始めた。

20~30mほどの巨体を持つ大型が一斉に動き始めた。



「撃てーッッ!!こっちに近づけさせるな!!」



大型だけじゃない。

小型も中型も一斉に押し寄せてくる。



「エリスは早く!ここは―――」


「ここは俺達に任せて先に行け!」



ガイトさんは俺の話を遮ってそう言った。



「え?でも!ガイトさん!!」


「早く行けっ!!せっかく妹守れたんだろ?」


「でも!」


「行けって!」



「早く来い!結界が閉じるぞ!」



周りの人がそう言った瞬間、ガイトさんは俺を突き飛ばした。



「うっ……ぐっ……」



人が死ぬのが嫌だった。

見てられなかった。

だからこの道を選んだ。


なのに、結局何人も犠牲になってしまった。

ガイトさんまで。


………もう誰も死なせない。

絶対……

絶対に!



「次は勝つからなっ!!絶対!!必ずッ!!」


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