8話 4年振りの再会
一瞬、ヤンキーに挑発した奴がボコボコにされるという光景が脳裏によぎった。
今がその状況だと思う。
「やっべ……」
全力で逃げた。
すぐさま追いかけてくる魔物。
「ハァ……ハァ……おっと!!」
逃げるのに夢中で崖から落ちそうになった。
……違った。
崖というのは少し間違っていた。
「え?どこだよここ……この場所、浮いてる?」
天空都市とでも言った方がいいのだろうか?
かなり奥の方に結界が見える。
喰われてからそんなに時間が経っていないと思うが、そんなに早く魔物は移動したのだろうか?
「っと、早く逃げないと」
……どこへ?
もし地上に降りる方法が無かったとしたらどうすればいいのだろうか?
死ぬまで逃げ続けるだけ?
そう思ってしまい、すぐには動けなかった。
……あれ?
ふと違和感に気付き、後ろを振り向いた。
辺り一面、煙。
何も見えなかった。
「君、どうやってここに来たの?」
「え?誰?」
最初は煙で見えなかったが段々と見えてきた。
その人は白髪で長身の男性だった。
「僕はレイド・ベルフェドラ。君は?どうやってここに来た?」
「あ、えと、クラウス・アレリウスです。どうやってここに来たかは、自分でもよく分からないんです。実は―――」
「待って。人がいる」
「え?」
つい身構える。
誰がいるんだ?
「あれ?クラウス?なんか大きくなってねぇか?」
……なんで?
なんで?
その人の顔を、姿を見て、理解が追い付かなかった。
「父……さん……?」
「久しぶりだな。こんな所で合えるとは思わなかったけど」
なんで父さんが?
死んだんじゃなかったの……?
片腕は無くなっているが、確かにそこに父さんがいる。
「え?ルークさん?」
「なんだ、レイドも一緒なのか」
「ちょっと待って、なんで父さんが生きてるの?なんで父さんがこんな所にいるの?」
「ん~腕は1本失ったけど、普通に生きてたよ?あの後魔物が一斉にどこかへに行ったから、魔物を追ったらこんな所に来た」
「生きてたの……?ならなんで4年もいなかったんだよ!!」
「はぁ?4年?あれから1時間くらいしか経ってないと思うけど」
「……え?」
流石に4年を1時間と勘違いする人はいない、と思う。
記憶障害か何かなのか?
「父さん、自分の名前言える?俺とか母さんの名前言える?自分の誕生日言える?」
「言えるわ!別に記憶がどうとかは関係ねえって」
記憶障害でもなんでもない。
そういえば父さんに髭とかは生えていなかった。
やっぱり何かあったのかな?
「ルークさん!気持ちは分かりますけど、さっきからずっと魔物が攻めてきてるんで手伝ってくださいよ」
「ああ分かった分かった。今行く」
『冒険者志願者へ告ぐ。君たちは軍事施設へ移動、死守せよ』
耳に着けていた機械からそんな指令が届いた。
確かサーディアっていうんだっけ?
「ルークさん!アルケニア国内に小型と中型の魔物が入ってきたみたいです!Bランク以上の冒険者は結界外にいる大型の魔物の大量発生の討伐に割かれているみたいです」
レイドさんがそう叫んだ。
レイドさんから何となく強そうな感じがしたし、特別に別の指令が渡されたのかも。
「マジ?ってか大型の魔物の大量発生って、これのことじゃねぇか?」
父さんはそう言って下の方に指を指した。
指を指した所の様子を見ると、確かに大型の魔物が沢山いた。
「レイド!お前確か自由に結界の内外を行き来できたよな!クラウスを結界の中に送ってくれ!」
「分かりました!」
レイドさんは転送装置……いや、転送装置によって作られた時空の歪みみたいな穴を作った。
「クラウス!俺達もあとでそっちに向かうから、先に中に行って住民の避難をしてくれ!」
「分かった!今度こそ帰って来てね!」
「おう!っと、そうだ。クラウス!」
「何!?」
「お前、前世の記憶とかってあったりする?」
………は?
「な……何言ってるの?父さん……そんなこと、あるわけないじゃん」
「……いや、やっぱいいや。お前こそちゃんと生きろよ!お前がなんであれ、お前は俺の息子だ!」
…………バレたのか?
なんで?
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穴に入り、転移した場所はどこかのビルの屋上だった。
「えっ?」
それだけだったらまだ良かったのだが、柵の外に出てしまったためバランスを崩し、ビルから落ちてしまった。
落ちる寸前、ビルの壁に張り付いている魔物が何体か見えた。
「うおおおあああ!!」
空中で体勢を立て直し、剣を強く握り、魔物を倒しながら落ちていった。
その途中カイルが見えた。
「お待たせ!」
「待ってた!」
そう言ったはいいものの、地上から見たのは酷い光景だった。
崩れるビル。
燃え盛る街。
血で赤く染まってしまった地面。
4年前とあまり変わらない。
けど俺は、4年前とは違う。
戦える。
守れる。
「ところで、状況は?どうなってるの?」
「魔物が攻めてきたのに、住民の避難誘導とかじゃなくて軍事施設を守れだって」
「えぇ……そりゃないだろ……」
「だよね。けど僕は命令通り軍事施設に行くよ。行かなかったらもっと大変なことになるからね」
まあ確かにな、と納得してしまった。
けど、目の前で人が死ぬのを見たくない。
そう思って冒険者になるって決めたんだ。
「大丈夫……刑務所にぶち込まれる覚悟は……できてる!」
「……そ。分かった。頑張ってね」
「ありがとう!じゃあ行ってくる!」
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「早く逃げてください!この先に行けば避難所二たどり着くはずです!」
「あ………ありがとうございます!!」
魔物を倒しながら進んではいるけど、数が多すぎる。
しかも、何体か見かけた大型の魔物……大体30~40mくらいか?
一切動かず、ただじっとしている。
何が目的なんだ?
「ごめんなさいっ!ごめんなさいっ!許してっっ!!」
声が聞こえた方を反射的に見た。
この先にいるのか?
「人………?行かなきゃ………!」
どこに人がいるか分からないから、声でおおよその場所を判断し、向かわければならない。
恐怖で声が出せない人もいるだろう。
だが、それだと助けに行きたくとも行けない………
「大丈夫ですか!?」
声がした場所にたどり着くと、既に1人は亡くなっていた。
だがもう1人はまだ生きている。
今にも喰われそうだが。
「間に合え………ッ!!」
素早く魔物に詰め寄り、心臓部分を突き刺した。
魔物は倒れ込み、そのまま動かない。
倒せたようだ。
「まだ1体………!」
「え?」
もう1体の存在に気付かなかった。
魔物は勢いよく突進してきた。
上手く避けて、魔物の下に潜って腹部を斬り上げた。
「ハァ………ハァ………………大丈夫、ですか?」
急いで走って来たから上手く喋れない。
「え、えぇ………助かりました………」
「無事で………良かったです。この先に行けば―――」
「あの………この建物の中にまだ何十人も残ってるんです!助けてあげて下さい!」
何十人もいるのか?
流石にそれはマズイな。
「3階にある程度人が集まっていると思うのですが、2階に魔物がいて逃げられない状態で………」
「分かりました!では行ってきます!あなたも早く逃げてください!」
何人もの人が死んでいる。
この人も人が死ぬ光景を何回も見たのだろう。
少しでも安心させておきたい。




