プロローグ「普通の生活」
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「――――――!」
「起きて!もう時間だよ!」
あれ?
俺、どんな夢見てたっけ。
……眠い。
「今何分?」
「7時30分」
「ふぁ~……おはよ」
「おはよう。早く着替えてご飯食べちゃって」
「は~い。というか、昨日どうしたの?早く帰って来るって言ってたのに随分と遅かったね」
「あ~ ……ちょっと色々あってね。連絡もできなくてごめんね」
父さんが死んでからは母さんが一人で頑張っていてくれている。
俺も早く学校卒業して働くつもりでいたが、母さんに説得されて大学に行くべきか悩んでいる。
金のことは心配するなとは言っていたが、大丈夫だろうか?
「ってやば。時間無い」
この時間は……終わったかもしれん。
「早く着替えちゃいなさいよ!」
「着替えは……終わった!けど朝ご飯食べる時間はないかな……?」
「じゃあこのパン咥えてでもいいから食べなさい!ほら早く!」
アニメや漫画でよくあることを、自分がやる日がくるとは思わなかった。
「いってらっしゃい!頑張って!」
「行ってきます!」
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「ハァ……ハァ……間に合った……」
ギリギリだったが、何とか時間内に学校に着いた。
東門が壊れてたから遠回りしなきゃいけなくて焦ったけど、遅刻じゃなくてよかった。
教室に入ると、クラス全員が振り返り、俺の方を見た。
「もう大丈夫なの?」
「怪我とかしてない?」
「……ん?え?」
状況が理解できない。
「昨日のあの後何があったの?」
「え?ちょ…」
クラスメイトが一斉に押しかけて来た。
昨日なんかあったっけ…?
昨日は普通に学校に行って授業を受けて…夜中に家に帰って…
……あれ?昨日なんで夜中に帰る事になったんだっけ?
俺は基本的にすぐに家に帰るのに。
ダメだ。思い出せない。
「ごめん。昨日何があったっけ?あんまり覚えてないんだよね…」
「え?昨日は―――」
「ハァ…ハァ… はーい席着いて~!」
駆け足で教室に入ってきた先生によって、この話は中断された。
いい所だったのに…
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『カーンコーンカーンコーン』
「はいじゃあ、今日は終わり」
学校が終わった。
そういえば、あれ以降は誰も昨日についての話題を出さなかった。
一体何だったんだろう……
ま、余計な事は考えなくてもいっか。
そういえば、今日何か買う予定だったような……
「あ、漫画買って帰るんだった」
今日は昔から読んでいる漫画の新刊が出る。
「えっと近くの本屋は―――」
突然、心臓の鼓動が早くなる。
何か、物凄い違和感を感じた。
……嫌な予感がする。
「今の……何?」
「何だ?」
「何が起こったんだ?」
周りの人も同じような現象を感じたらしい。
一体……
「うっ……」
「ぁぁ……」
「きゃああああ!!!」
「おい!大丈夫か!?」
次の瞬間、街中にいた人達が次々と倒れ始めた。
「何が起きているんだ!?」
「あ……ぁぁ……」
どうすればいいんだ?
こんなの……訳分かんない。
俺は、大丈夫、そうだけど。
「うゥッ!!ヴェェェェ……」
大丈夫だと思っていた。
だが突然気持ち悪くなり、吐いた。
「ハァ……ハァ……」
違った。
吐いたのは血だった。
……死ぬのか、俺。
「で、でもまだ―――」
一瞬、目の前が真っ暗になった。
ほんの一瞬、目が見えなかった。
だがその一瞬で、俺が死ぬのが分かってしまった。
「何も……見えな……」
目に見える光景が点滅している。
通常の街中の光景と、真っ暗で何もない光景が交互に見える。
死が近くなっていくのを実感する。
「まだ、動ける……まだ……」
ああ、ダメだ。
眠い。
―――2028年9月17日 17時14分22秒 死亡




