〜 静かな嘘 〜
あれから一体どのくらい時間が経っただろうか。休んでしまったという罪悪感に苛まれていて気付いたら長い眠りに落ちていた。ふと枕元の目覚まし時計を手に取ると短針が『1』を指していた。
「 もう1時か。 」
通りでお腹が減ったはずだ。重い腰を無理矢理上げて空腹を満たす為にリビングに向かった。リビングの扉に手を掛けて開けようとしたら母の話声が聞こえた。最近は、家庭教師の勧誘の電話や得体の知れないセールスからの電話が多い。今回もその電話で母が手を患っているのだろうと思った矢先、こんな声が聞こえた
「 お世話になります。午前はゆっくり眠っていたので午後は病院に連れていこうと思います。明日は良くなれば登校させます〜!」
鈍感な私でもその電話が学校からの電話だということは安易に察する事ができた。電話の切る音がしてから私は空気を読むようにリビングの扉を開けた。
「 あら。起きたのね。おはよう。体調はどう? 」
学校に登校する嫌悪やストレスからの頭痛だったらしくお昼までしっかり寝たら自然と頭痛は良くなっていた。しかしそこで私は咄嗟に嘘をついた。
「 おはよう。うーんまだ頭痛が少しするかも。でも病院は行かなくて大丈夫だと思う 」
ここで体調が良いと本当の事を母に告げていたら間違いなく明日は学校に行きなさいと言われてたに違いない。かと言って反対にとても辛いと言うことによって病院に連れて行かれる羽目になるだろうと思い私は当たり障りのない返事をした。母が何か言葉を発そうとして口を開いた瞬間、私は自分の部屋に逃げるように戻った。空腹だったはずなのに今は微塵も感じずむしろ食べ物も喉を通らない程になっていた。