〜 泪の音 〜
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「 ボクがキミを殺してあげるよ 」
見覚えのない男の子が私の目の前に立ってそう呟いた.儚げな表情を浮かべた彼が1歩2歩と此方に近付いてくる 逃げるように私は彼から目を逸らし後ずさる。
「 またね 」
彼はその瞬間私の視界から姿を消した。
「 ………また変な夢。 」
最近こんな夢をよく見る。不思議と嫌な気分にならないのはきっと彼が私に向ける笑顔のせい。
尾河 瑚珀 . 別名 死にたがり .中学2年生 .
平凡な中学校生活を送るはずだった.しかしそんな想像は弾けるように崩れた。幾ら枕を濡らしても幾ら叫び倒しても変わらない日常に呆れの感情すら抱き始めていた10月.私は今日も周りと違う"日々"をゆっくりと歩んだ
「 ねえお母さん ・・・ 頭痛い 」
普段から口数が少なく自分の意見を表に出さない私がお母さんに向けて弱々しく告げた.
そんな私を見てお母さんは心配そうな表情を浮かべて柔らかに答えた.
「無理は駄目よ。休もうか?」
私はゆっくりと首を縦にふった。リビングに戻る母の背中を目で追いながら私は目をぎゅっと瞑って布団に潜り込んだ。
私が学校へ行きたくないのには頭痛以外にも理由があった。それは " いじめ " 。よく漫画やドラマで取り上げられるいじめの描写ほど生々しいものではないが確かにいじめだった
とても陰湿で彼らと自分自身以外は誰も気付いていない。悪く言えば皆気付いてないフリをしているのかもしれない。周りの友達や担任にSOSを出せば当然の如くそのいじめがエスカレートしていくことは目に見えて理解していた。そんな日々を幼い頃から気弱で泣き虫な私は耐え抜く事が出来なかった。義務教育中とは言え来年に受験を控えた中学2年生の私にとって学校を休むと言う行為は簡単に決断できるものではない。しかし今の私にとってはその行動は最善で自分を守る意味でもしなければならない行動だった。
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