帰らせて下さい
状況整理大事。
しかし、我慢はよくないのです。
半眼になった私の斜め後ろから、慌てた気配と焦った声が聞こえる。
そちらに視線をやれば、思った通りのくたびれ5人組・・・
「お、お待ち下さい、殿下!」
「我等も、召喚に成功致しております!!」
そう声を上げ、5人は私の周りを囲む様に駆け寄ると、1番年上に見える男性が私を掌で指し示す。
「殿下!こちらの方も、異世界から召喚されし、聖女様でございます!」
『殿下』と呼ばれた人物は、差し出した手を下ろすと、ゆっくりとこちらに歩いてくる。
声を上げた5人組は、どこか嬉しそうに胸を張り、しかし恭しい雰囲気でそれを待ち構えている。
― なんて言うか・・・褒めてもらえるのを待ってる犬みたい・・・ ―
そんな事を考えている間に、『殿下』が私の1メートル程手前まで来て足を止める。
そうして、しげしげと上から下まで私をじっくりと観察する様に見てくる。
視線が2往復ほどする間に、『殿下』の眉間の皺が深く刻まれるのを見ながら、私の眉間にも皺がよる。
― あ〜・・・これは、ダメなヤツだな ―
そう思った瞬間、『殿下』がハッと鼻で嘲笑う。
「此れが、聖女だと?こんなくたびれた年増が聖女などと、馬鹿にするにも程がある。」
『殿下』の言葉に、5人組は驚愕の表情になり、おろおろと狼狽える。
「し、しかし!異世界から召喚されたのは間違いなく!!」
5人組の言葉に、再度私を見ながら『殿下』は尚も馬鹿にした表情をして、溜息をつく。
「確かに・・・異世界から来た様ではあるがな。」
「そ、その通りで御座います!ですから、我等も成功してー」
「成功してはいないであろう。此れは間違えだ。」
顎でしゃくる様にして、「此れ」と私を『殿下』が指し示す。
色々と、状況の説明をしてもらいたいなと、思っていた。
先ずは状況整理してから・・・と。
しかし、説明されなくても解る、この馬鹿にされっぷりに、私の切れやすい堪忍袋の緒が切れるのは、瞬間だった。
「そりゃあ、大して生きてもいないお子様からしたら、私なんて年増でしょうねぇ。」
「お子様」発言に、『殿下』の眉間の皺が数を増やす。
「間違えだって言うくらいなんだから、謝罪と賠償でもして、直ちに元の場所へ帰して下さるんでしょうね?」
「は?何を・・・」
胸を張り、鞄を小脇に抱えてふんぞり返ると、私は馬鹿にした視線で『殿下』を見やる。
「私、こんな所に来たいだなんて、言った覚えは無いわよ。それどころか、召喚とやらに賛同も同意もした記憶無いのだけど?
勝手にこんな場所に連れて来て、こういうの何て言うか知ってる?誘拐よ!人攫い!!」
『殿下』に向かって指を突きつけ、「人攫い!」ともう1度声を上げれば、『殿下』の表情が驚きに染まる。
周りからも動揺した雰囲気がして、ざわざわと騒がしくなる。
私の居た場所と、この場所が別の世界・・・異世界だと言うのなら、そんな題材の小説なんかを私も多少読んだ事がある。
たまたま、事故で呼ばれたか、呼ぼうとして呼び出されたかとか、そんな違いは様々あたったけど、物語としてそんな話しを読んだ事はあった。
まさか自分がそんな物に巻き込まれるなんて、これっぽっちも思っていなかったけれど・・・
「さっさとしてくれない?お子様と違って、社会人で仕事してるのよ。忙しいの。」
よりにもよって、「間違え」だなんて・・・
馬鹿にするのも大概にしろよ?
私の態度に、言葉に、『殿下』がヒクリと顔を引き攣らせた。
前書きと後書きの方が、何書いていいか解らないと言う・・・
後で細々と、書き直しているかも知れません(・_・;)